【イベントレポート後編】人的資本経営にも大きく影響する「ミドルマネジメント」の人材開発とは/CORNER DAY Vol. 9
各社ともに課題感を持つ「ミドルマネジメント」をテーマに開催された「CORNER DAY vol.9」(2022年5月18日実施)。【後編】の本記事では、チームE・F・Gのディスカッションハイライトや取り組み事例などをご紹介します。
<ディスカッションテーマ>
チームA・B・C・D:これからのミドルマネジメントとは
チームE・F・G:経営・事業から紐解く人材要件のアップデート
※イベントレポート前編はこちら
目次
経営・事業から紐解く人材要件のアップデート
チームE・F・Gでは、「人材要件/コアスキルのアップデートにあたって必要となる観点」について共有し合った後、アップデートするタイミングや報酬との連動方法についてディスカッションが行われました。
人材要件/コアスキルをどう定義しているか
あらゆる業界から参加いただいたこともあり、「経験・スキル」よりも「カルチャーフィット」観点から人材要件の定義方法が共有されていました。大きく「バリュー(もしくはカルチャーやフィロソフィー)から採用要件に落とし込む企業」と「バリューからは落とし込まず暗黙知的な形で運用している企業」の2つに分かれた形です。
「バリューから採用要件に落とし込む」ことでカルチャーにフィットした人材を採用できるだけでなく、その後の育成や振り返りの基準にもできるという意見がありました。部門ごとに定義している企業もあるようですが、会社全体で共有した定義があるとそうした活用もしやすいようです。ただ、あまり厳密に定義しすぎてしまうと柔軟性が失われてしまうため、一定の余白を持たせて現場に考えさせることも必要だという意見には多くの同意が集まりました。
一方、「バリューからは落とし込まず暗黙知的な形で運用している企業」は社員数がまだ比較的少ないことから、「なんとなく当社らしい」といった暗黙知的で社員それぞれが人材要件をイメージしているようです。
しかし、会社規模が大きくなってきたことで言語化の必要性を感じているという企業も。そこではこれまでバリューをあえて言語化しておらず、コンピテンシーからグレードを仮置きしていたようですが、現場のマネージャーからは評価の観点でバリューを言語化して欲しいという要望が上がり始めているとのことでした。またグローバル採用においてはハイコンテクスト文化では機能しないため、バリューや人材要件の言語化は今後より必要になってくるのでは、という声も上がりました。
アップデートするタイミングと方法
先ほどの共有でもあったように、アーリーフェーズでは経験・カルチャーなどを暗黙知で共有できる“似たメンバー”が集まりやすいものです。しかしながら事業フェーズや進捗度合いによっては、そうした暗黙知の内容やコア要件が変化することは十分にありえるため、常に人事は人材要件のアップデートを検討しておく必要があります。
重要なのはそのタイミング。ある企業では社員数が一定のラインを超えた時、またある企業はビジネスが上向きになった時、またある企業は随時細かく、などそのタイミングは企業や状況によっても様々なようです。その際は人材要件に留まらず、時にバリューそのものを見直すなど大掛かりなアップデートも。どれだけの頻度で、どれだけの深さでアップデートを行うかについては各社の色が大きく現れるポイントとなりました。
なお、アップデートする際の注意点として「従来組織とのギャップが出過ぎないように徐々に変化させること」の重要性も話題に上がりました。人間心理として一気に物事が変わると反発心や強制感が出てしまうものです。そのためこれまでのストーリーを引き継ぎながら、ミッション・ビジョン・バリューとも紐づける形で徐々にアレンジを加えていく形がベターになりそうです。また社員の想いや考えを吸い上げてうまく巻き込むことで、スムーズかつアジャイルにアップデートを進められたといった事例も共有されました。
報酬との連動方法について
バリューや人材要件がアップデートされると、評価制度なども同様に変更していく必要性が出てきます。しかしながら、評価や給与に関わる部分を頻繁に変えるわけにはいきません。それらの課題に対して、各社さまざまな取り組みを行っているようです。
基本的には、マネジメントのしやすさからできるだけ全社一律の人事制度を導入し、運用の中で必要に応じてカスタマイズしていく形をとっている企業が多いようです。中にはエンジニアや専門系職種などで別のテーブルを用意している企業もあるようですが、あまりに複雑化してしまうとマネジメントラインの理解・浸透にも時間がかかってしまい、結果としてメンバーの納得度が下がってしまうリスクがあるとのこと。このバランスをどうとるかが、人事の腕の見せ所となりそうです。
一方で「多少のコンフリクトはあってもいい」という意見も。デジタルに評価を決めきってしまうと“評価ゲーム”的な形にもなってしまいかねないことから、あえて評価比率を開示せず、曖昧な部分をつくって現場に考えさせる余地を残していると話す企業もありました。「コンフリクトしている方が正常かも」といった反応もあり、新しい視点として捉えた企業もあったようです。
<参加者の声>
「社内でミドルマネジメント層がどれだけ育っていて、実際にワークできているのかどうかはとても重要だと改めて感じた。評価制度を教えるところからスタートし、それを理解してうまく運用できるまでには長い年月がかかる。人事も中長期的な視点で覚悟を持って取り組む必要がある。」
「今後50人・100人の壁に向けて、何を残して何を変えるかを考える上でいいインプットになった。また報酬制度を考える上では、どこに求心力を置くかが重要なポイントだと感じた。組織が拡大するとこれまでのように全社単位だけで考えるのではダメ。事業部単位で物事を考えていく必要がよりフィットしやすいのではないか。」
「定義し切らずにメンバーが考える余地を意図的に残すことが大切だと思った。一定人事がコントロールする必要はあるが、それだけでは思考停止になってしまう。コントロールする前提での設定はベストではない。自社らしさを探す上でも、自発的に考えるプロセスが重要。」
まとめ
今回のCORNER DAY Vol.9は24名が参加し、2つのテーマに分かれて実施されました。「すぐに自社にも活かしたい」という視点やアイデアが次々と飛び出し、刺激の多い場になったと感じます。コーナーは今後もCORNER DAYを通じて、先駆的な人事課題を解決するきっかけづくりと、事業と組織の連動性向上に貢献していきます。
<CORNER DAYとは>
“経営と人事のレジリエンス”を探究するコミュニティイベントとして、株式会社コーナーが定期開催しているイベントです。第一線で駆け抜けている経営者や人事の方に多く参加いただき、毎回白熱した議論が交わされています。
<CORNER DAY Vol.9:参加者一覧)※50音順
安食 健太郎 氏(株式会社ビザスク)
伊藤 允晴 氏(株式会社マイクロアド)
石原 健一朗 氏(ダイドードリンコ株式会社)
上林 遼 氏(株式会社カウシェ)
浦川 雄志 氏(ポジウィル株式会社)
小笠原 修裕 氏(株式会社ハウテレビジョン)
唐澤 一紀 氏(株式会社Nint)
金 明正 氏(Creww株式会社)
木元 豪 氏(株式会社NALU)
久保田 慶 氏 (株式会社CAMPFIRE)
小柴 礼生 氏(株式会社TERASS)
小林 剛士 氏(株式会社インタースペース)
小山 浩平 氏(ウェルスナビ株式会社)
杉元 将二 氏(株式会社I-ne)
高橋 真寿美 氏 (ヘイ株式会社)
田口 加奈子 氏(株式会社カラダノート)
永井 慎也 氏(株式会社ユーグレナ)
中澤 真知子 氏 (株式会社I-ne)
成田 赳夫 氏(株式会社サーキュレーション)
平山 鋼之介 氏(Sansan株式会社)
藤田 大洋 氏 (株式会社ツクルバ)
舟木 祐介 氏(株式会社TBM)
吉川 彩加 氏(READYFOR株式会社)
他3名
<過去イベントレポート>
corner day vol.1 :レジリエンスを高める組織・制度とは?
corner day vol.2 :MVVをベースとした自律的な組織の作り方
corner day vol.3 :人的関係資産が薄れる中でのミドルマネジメントの人材開発
corner day vol.4 :採用後の早期戦力化
corner day vol.5 :経営・事業に貢献する最適なエンゲージント施策の効果測定
corner day vol.7 :コロナ禍におけるミドルマネジメントの新たな課題と可能性を探る
corner day vol.8:リモートワーク環境下のメンタルヘルス不調を未然に防ぐために