【イベントレポート】MVVをベースとした自律的な組織の作り方/corner day vol.2
VUCAの時代の中で、企業が勝ち残っていくには変化に強い組織づくりを人事がけん引をしていく必要があります。
「1人が複数の会社で本気で働ける社会をつくる」をビジョンに掲げている株式会社コーナーでは、“経営と人事のレジリエンス”を探究するコミュニティイベントとして、「corner day」を開催。
各社の取り組みや知見をシェアしあうことで柔軟に適応していくことを目的に実施しています。2020年7月に行った第一回では、レジリエンスを高める組織・制度についてディスカッションを行いました。
(【イベントレポート】レジリエンスを高める組織・制度とは?/corner day vol.1)
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、テレワーク導入が加速している現在。はたらく価値観が多様化する中で、組織と個人との関係性は変化しています。
しかし、個人や組織の自律した行動なくして組織成長は実現しません。
そこで、2020年10月14日に第二回「corner day」を開催。株式会社コーナーのお付き合いのある人事の方々やご登録いただいてるパラレルワーカーの方々からの要望の多かった「ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)をベースとした自律的な組織の作り方」をテーマに議論を深めていきます。
<参加者プロフィール(50音順)>
・浦川 雄志 氏 (Fringe81株式会社 人事部長)
・大内 礼子 氏 (フリーランス)
・佐藤 恵一 氏 (シャインフォース株式会社 代表取締役)
・張ヶ谷 拓実 氏 (株式会社div 執行役員)
・平岩 力 氏 (株式会社セプテーニ HRビジネスパートナー部 部長)
・増井 隆文 氏 (株式会社Holmes 採用責任者)
・松浦 孝介 氏 (株式会社Funleash 代表取締役CEO)
・松岡 広樹 氏 (Supership Holdings 人財開発本部 本部長)
・松並 憲生 氏 (大手広告会社 人事本部 組織開発部長)
・吉本 猛 氏 (ベルフェイス株式会社 People&Value室 室長)
目次
なぜ今、MVVについて考えるのか?
本イベントでは、MVVの定義を以下のように捉えて議論を進めていきます。
■ミッション(Mission) =組織の社会における使命・目的(=なんのために存在するのか) ■ビジョン(Vision) =組織が実現を目指す未来の姿 ■バリュー(Values) =組織メンバーの行動・判断の基準となる価値観 |
まずイベント冒頭では、ファシリテーターの株式会社コーナーの南部・小林からの挨拶、及び今回のテーマに至った背景の説明がありました。
現在、人事は変化に対応できる組織づくりをリードしていくことが求められています。その中で今回のテーマについて非常に多くの人事の方から要望をいただきました。
VUCAの時代において、1社に依存しない働き方を志向する価値観の変化、テレワークが普及して働く場所の変化……など。個を取り巻く労働環境は日々変わっており、企業はMVVをもとに個人の自律的・能動的な行動を促進し、自律的組織を目指していく必要性がますます高まってきました。
本イベントでは、『自律的組織』を「自ら顧客やマーケットの変化を読み取り、仮説をたて、素早く検証・実行・導入できている状態の組織」とし、”個人の内なる動機が高まって、無性に・熱狂的に行動したいと思えている状態”として捉え、その状態にするために、MVVを掲げるだけではなく、どのようにして、その理想の状態に近づけていくかを議論しています。
MVVがどのような状態であれば理想的なのか、そして現状と理想とのギャップを埋めるために人事がすべきことは何か――。
2チームに分かれてディスカッションがスタートしました。
Q1:社員が自律的に動く理想のMVVのあり方とは?
社員が自律的に動く理想のMVVのあり方について、参加者の方々が感じていることや自社で取り組んでいることについて意見交換が行われました。
■■ルーム1の議論
① 企業の判断基準として機能
ルーム1では、「MVV=意思決定の判断基準」という意見が多く出ました。企業フェーズや状況によってメッセージは変わっていくが、常にバリューに沿った行動を取れていることが理想的な状態だと言えます。
そのために、人によってMVVの解釈が割れないようにすることが重要で、言葉1つの解釈がずれてしまうと、推進するアクションも変わってしまうという意見がました。誰にでも刺さるように抽象的なワードでまとめるのが適なのか、ターゲットに絞った尖ったワードにするかはどの企業も悩ましい部分ではあります。共通イメージを持ち、それを自身の業務に落とせるかが重要であることがわかりました。
参加者の声:
「MVVを顧客に向けたものにすると、顧客と直接接しないバックオフィスメンバーへの浸透が難しい。顧客に向けた直接的なものではない抽象的なメッセージは社内向けによく刺さり、使い分けが大切ではないかと考えつつ、どう設定するかは今後の課題。」
② MVVを踏まえての行動設計が重要
注意しないといけないのは、一般的にMVVは大事と言われているから作ろうとする姿勢。そうではなく、企業としてこれから目指すべき方向や創業者の想いなどをMVVに定め、それをどのように従業員に理解や浸透をすすめていくかが何よりも大事です。
例えば、MVVを策定する過程において、従業員参加型にして、アンテナが立つようにすることや、目標・評価に組み込み、定期的に行動を促進する仕組みを作っていくこと、また、前述した「共通イメージ」を持つために、皆で集まってコミュニケーション機会をもてているかなどが挙げられました。
このようにMVVが従業員に理解・浸透し、行動できる状態になるようにコミュニケーション施策を行うべきで、MVVを制定する過程のアクションやその後の仕組み設計について共感が集まりました。
仕組みを作った際に、それを従業員は前向きに捉えられているのかをチェックする必要があることも重要だという意見も挙がりました。
参加者の声:
学術的観点によると、「Well being(ウェルビーイング)で有名な医学博士 石川善樹氏によると、人が人たらしめる要因2つはテストステロン(攻撃ホルモン=敵から身を守る)と、オキシトシン(村意識=繁栄)というホルモン。繁栄させるオキシトシンを分泌させるために、メンバーで集まって、歌って踊って酒を飲むという行為をみんなでやることが一つの方法言われている。それに習えば、例えばMVVを唱和する行為も正しいHOWとなる。村意識をどうやって持たせるかが肝」
■■ルーム2の議論
① MVVを身近に接することができるように
MVVは作って終わりでは意味がない。従業員が覚えているだけでは意味がない。浸透させる上でMVVを覚えてもらうことは必須だが、普段の会話や評価、に紐づくような形にすることが本来理想である、と皆の意見が一致していました。
そのためには、常に従業員が触れるようにするのが大事とのことです。例えば、ディスカッションの際に見える位置に書いておく、Slackのスタンプに設定して押し合う、クレドオフィサーという伝達者を設定するなど。
強制的にやっても浸透はしないため、具体的に動けるかどうかを想像した上で、自分ごと化できるように視界に入れられるところに置いておくことは重要だという意見がありました。
参加者の声:
「1on1の項目に入れる、ユニポスで送りあう。また、Slackでバリュー項目を登録しているので体現したら送るなど、できる限り自然に溶け込んでいる状態が理想。トップダウン、上司部下、ボトムアップなど、さまざまな角度からMVV浸透するようなコミュニケーション施策を行っていく必要がある」
② MVVは企業が目的に向かうための羅針盤
MVVが機能しているとは、「企業の目的に向かうための羅針盤」となっていること。
理想像に対して、今やっている日常のアクション、スタンスがゴールに向かっているのかという指針であるという意見に注目が集まりました。
企業のカラーや事業フェーズを明確にした上で、MVVを進化させていく。そして、その都度MVVを見直して、誰でも理解できる共通項にしたり、数を絞ったりと自分たちの置かれている状況や目指すべき方向性に合わせて適宜変更を加えているという意見が出ました。
重要なのは、企業の成長に合わせて、設定したMVVを従業員が自分ごとに捉えられるかどうかという点で、必要なスキルや価値観も変わっていくので、従業員も変化していく必要があるという意見も印象的でした。
参加者の声:
「同じ価値観を大事にしている。朝会で2ヶ月に一回クレドに対する発表会を実施し、それぞれが体現したことを話す。このような価値観の共有は良く機会を持っている。また採用の際にも価値観の共有として記事や動画のシェアを面接の前に行うなどしている」
Q2:理想のMVVに導くための人事の手段とは?
次に、Q1で議論した内容を踏まえて、人事は何をやるべきか、どういうことを通じてMVVを自社に浸透させていくのか。その手段や手法について議論を重ねました。
■■ルーム1の議論
ルーム1では以下の議論が出ています。
●具体化が重要。役職や立場に合わせて浸透方法を考える
ミッション・ビジョン・バリューそれぞれで浸透策は異なります。ミッションは固定で変わらないもの。マーケットの変化に応じてビジョンやバリューは変化していく。バリューは抽象化すればするほど評価しづらいので、できるだけ具体化して評価に落とし込むようにしているといった意見がでました。
また、経営者が先陣を切り強い思いを持って発信し続けることが重要で、本部長、部長、マネージャー、メンバーへと人事が率先してインターナルコミュニケーションを行っていくことが有効になります。
MVVを評価に組み込むだけではなく、業務プロセスや仕事の仕方をどんどん体現していく。それを回していくことで離職率が下がったり採用成功したりと成果が出ているいう話がありました。
また、印象的だったのが、「全従業員がMVVを決定するプロセスに関わる」という意見でした。創業社長やカリスマ社長がトップダウンで発信することも大事ですが、企業規模やフェーズによっては全員で作り上げることも有効との話も出ました。
アンケートを取ってみる、制作過程を見せる……などメンバーも一緒になって作り上げていくことで、よりMVVの浸透度合いも変わってくるのではないか、という意見もありました。
参加者の声:
「カリスマ経営者のもとで、ミッションが深く浸透している中で、自分たちのバリューは何かを従業員にアンケートを取るプロセスを経て決定した。大企業だと全員で決定することは不可能のため、過程を知っている、参加している状態を作った。自分も一緒にバリューを作ったのだと認識してもらうことが重要」
■■ルーム2の議論
ルーム2では以下の議論がありました。
●個人が自分ごと化できるように評価に落としこむ
MVVは作って満足してしまいがちですが、それでは意味がありません。まずコミットしないといけないのは経営陣です。経営陣が意思を持ってMVVに向き合うことが大前提。その上で、評価と紐付けること(バリュー評価)が重要であるという意見が共通していました。
いかに自然に溶け込んだ状態にするかを考える上では、上司部下間の1on1も浸透にはとても有効です。
「あなたが成長するために課題はどこにあってどんなことをしていくのか」と向き合い、頻繁にフィードバックを行うことで、徐々にMVVを体現できる状態になっていくのではないか。
その際、どうしても個人に発生してしまうハレーションをどこまで人事が力強く向き合っていけるのかが大切だと、強い意見も挙がっていたのが印象的です。運用しながら従業員の声を引き出し、それを反映させて、また改善して……を繰り返す。テスト運用ではスピード感がなくなるので本番下でも柔軟に対応させることが大事だという話がありました。
参加者の声:
「一回では成功しない。やり方を改善しながらブラッシュアップしていく。良くしようとしていっているということをしっかり伝える。事象に対して改善する姿を見せる」
「コミットするのは経営陣のwill。どこまでいっても経営がコミットしないMVVほど迷惑なものはない。最初はコーチングから入る。本当にやりたいかどうか腹落ちをさせる」
まとめ
要望が多かったMVVについてということもあり、議論は活発に行われどちらもチームも非常に白熱していたのが印象的でした。
ディスカッション内容も学術的観点からの議論になったり、今までの事例を参考にしたりと、新たな発見と再認識ができた場であったように感じます。自分たちの取り組みに終わりはなく、日々アップデートしながら企業や従業員に向き合っている皆さんは、人事のプロフェッショナルとしての意志を感じ、非常に刺激的な時間でした。
「corner day」を通じて何か一つでも、明日につながる行動になればと運営スタッフ一同は考えております。今後も人事の皆さんの興味あるテーマを取り上げていきたいと思います。
次回の「corner day(vol.3)」も開催予定です。ご期待いただけましたら幸いです。