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【イベントレポート】コロナ禍におけるミドルマネジメントの新たな課題と可能性を探る/corner day Vol. 7

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ミドルマネジメント(中間管理職)とは、部下を持ちながら経営層や上司がいる中間に位置する管理職のことです。経営層や事業の方向性について部下に伝えるとともに、育成やマネジメントを行うため組織においても重要な役割を担っています。

コロナ禍で多くの企業が「ウィズコロナ時代における新たな働き方」を模索する中、最近の管理職の人材マネジメントに関する調査(※1)では、コロナ禍で方針が定まり切らないテレワーク・在宅勤務の環境の中で、ミドルマネジメント層への負担が過重になっている状況が指摘されています。
(※1:ZDNet Japan「コロナ禍で露呈–ミドルマネジメントに依存する日本型マネジメントの限界」2021年8月3日 参考)

また、当社が実施している「経営と人事のレジリエンス」を探究するコミュニティイベント「corner day」に参加中の人事責任者・担当者・スタートアップ企業経営者に対して実施したアンケートからも、ミドルマネジメントを機能させるための人事支援のあり方に対する課題意識が高まっている様子が伺われました。

そこで、「corner day vol.7」(2021年10月20日実施)では、「ミドルマネジメント」を大テーマとし、参加者はチーム毎に以下の4つのディスカッションテーマを議論しました。

<ディスカッションテーマ>
チームA&B:ミドルマネジメントのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の自分事化と浸透
チームC:ミドルマネジメントの昇格基準・降格基準
チームD:ミドルマネジメントへの権限委譲
チームE:多様化する価値観の中でのマネージャーの育成

今回は、本イベントに参加した人事責任者・担当者・スタートアップ経営者(計17名)のディスカッションのハイライトや、各社の取組事例などをご紹介します。

ミドルマネジメントのMVVの自分事化と浸透

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは、使命、未来の姿、行動・判断の基準となる価値観のことです。組織には、独自のミッションの達成のために、ビジョンを実現する必要性があり、また、ビジョン実現のための、より具体的な価値基準としてバリューが定められています。

チームA&Bでは、このMVVの浸透におけるミドルマネジメントの役割や浸透課題についてディスカッションを行いました。MVV設定後の継続的な浸透活動の課題や自社事例を共有しながら意見交換をしました。

浸透のカギは、経営層と新卒

MVVの浸透における鍵はミドルマネジメントであると思われがちですが、キーパーソンは、経営層と新卒にあるようです。

ミドルマネジメントを行う中間層は、MVVを一歩引いて俯瞰する傾向がある一方、新卒は真っ白の状態から始めるため、経営層の語るMVVが浸透しやすい。そのため「経営層と新卒がサンドイッチして、ミドルマネジメントや中途採用の方々に浸透させていく」やり方も有効のようです。

また、新卒への浸透という観点から、採用のプロセスにおいて、MVVをわかりやすく、できれば可視化して伝えることの重要性も指摘されました。

仕組みとコミュニケーションの両輪が必要

MVVを伝えるだけでなく、人事評価制度やOKR(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)などの制度を通じて浸透させる両輪の取組みも重要です。多数の企業が、自社の人事評価制度にMVVの浸透を評価指標として組み込んでいました。

また、MVVを伝える上で、絵やイラストなどを通じて視覚的に伝えたり、ゲーム感覚で楽しく伝える取組を行ったり、世代に合わせた表現に配慮することも大切との声も多く聞かれました。

WHYを共有し、「問いかける」組織風土

人は、「WHY(理由)が理解できるときに行動を起こすものである」という視点から、MVVの浸透においても、経営者が設定した背景(WHY)を丁寧に共有していくことの重要性が指摘されました。

また、マネージャーが、担当部署のビジョンを考える上で、目先の数字ではなく、半歩先のありたい状態や、やりたいことを見出すことができるよう、マネージャーに「問いかけ」を行う組織風土づくりの大切さも語られました。

参加者の声
「(MVVを浸透させ、企業文化を高く維持する上で)コアとなるのは、経営陣と新卒。サンドイッチして中途に浸透させていくことが重要。」
「(MVVを話し合う上で)多すぎるということはないと思う。自分たちがつくりたい未来を話すのに多すぎるということはないと思う」

ミドルマネジメントの昇格基準と降格基準

マネージャーの定義づけや、昇格基準・降格基準をテーマにディスカッションしたチームCでは、各社のマネージャーの定義に基づく育成課題について意見交換がされました。

マネージャーの定義づけ:役職か、役割か、スキルか

マネージャーの役割定義においては、「人ありき」ではなく、組織の事業戦略にもとづいた機能・役割を設定した上で、役割を定義していく重要性が指摘されました。マネージャーの定義は各社さまざまで、課長・部長・本部長などの詳細な役職定義づけはせずに、マネージャーは「部下を持つ」というシンプルな役割定義にチャレンジした企業もありました。

また、「マネジメントもスキル」という視点から、新任マネージャーに対し、「人と事業への向き合い方」を定義した評価軸を共有しているという事例も共有されました。どの企業も、職務と職能、役職と役割定義の狭間の中で、自社なりの視点を基にマネージャーの定義づけを行っていました。

昇格試験による期待値の可視化

マネージャーの昇格においては、昇格の基準軸を設定した上で、部長推薦で新卒から40代まで幅広い層が手をあげて昇格試験に挑戦できる制度を導入した事例が共有されました。事前課題でマネージャーとして考えるべきことなどを明確化したことで、自身の特性を理解し辞退者も出るなど、実際に昇格した人とマネージャーに求める人物像とのすり合わせができつつあります。社員個人が自分のキャリアに責任をもち、マネージャーかスペシャリストか、など、自分の特性を踏まえたキャリアを検討する機会に繋がったようです。

サブマネージャー制度による育成と役割分担

マネージャーがメンバーから理解を得られず孤立しがちでありという課題意識から、「次席」という制度を導入した企業の例も共有されました。マネージャーの右腕として、サブ(次席)の社員が実務部分を担うことで、マネージャー候補の育成にもつながり、マネジメントの役割分担にもつながっているようです。

参加者の声
「マネージャーやポジションの前に、組織の機能定義をすべき。どのような事業戦略でどんな成長をさせたいから、どのような機能を持つべきかという『箱の話』をしたうえで、それを満たすための役割を定義する」
「全員がマネージャーになるのも変。マネージャーにならないと偉くなれない、をいかになくすかが大事」

ミドルマネジメントへの権限委譲

経営者からマネージャーへの権限委譲をテーマを議論したチームDでは、さまざまな規模や成長段階にある企業の人事責任者や経営者が、自社の権限委譲の取り組み事例を基にディスカッションを深めました。

組織規模や業務過多をきっかけに権限譲渡

権限委譲は、代表が見切れない組織規模(50~100名程度)に成長したタイミングや、管理職の業務過多をきっかけに取り組むケースがあるようです。

権限委譲の範囲は、案件・採用・評価の視点で分けてルールを策定しつつも、業務・現場周りでの権限委譲のプライオリティが高い様子が伺われました。

権限委譲の成功の秘訣:「渡す側」と「受け取る側」の関係性

権限委譲を円滑に行う上で、経営層(渡す側)と、マネージャー(受け取る側)の関係性が何よりも重要です。権限委譲が進まなかった際に、1か月程度の「テスト期間」を設け、段階的に委譲していく進め方を行った企業の事例も共有されました。

また、現状の運用をすべて可視化することで、代表がいつでも権限を取り戻せる状況を担保し、渡す側・受け取る側の信頼を段階的に醸成しながら進めたという事例も共有されました。

権限委譲と人の成長はセット

権限委譲は、人材マネジメントの文脈で進めるべきとの指摘する声も聞かれました。事業成長を重視すると、マネージャーは短期的な視点になりがちで、長期と短期の双方の視点を持つ経営者と、意識のズレが生じます。権限委譲されたマネージャーは、(事業成長だけでなく)カルチャーや組織基盤をつくるという長期的な視点をもち、事業だけでなく人の成長も促すという意識を育てる重要性が語られました。

参加者の声
「運用を全て可視化し、代表がいつでも見れる状況をキープしながら、権限を委譲してきた。何かあればすぐに代表が入れるような進め方をし、問題点を全員で共有しながらディスカッションしてその場その場で改善してきた」

多様化する価値観の中でのマネージャーの育成

外国人、女性、LGBT、新卒など多様化する人材をマネジメントする上でのミドルマネジメントの課題についてディスカッションしたチームEでは、各社の具体的な取り組み事例を共有しつつ、新たなアイデアを発散しながら議論を深めました。

評価に対する価値観の違い

国・文化の多様性においては、外国籍の社員は定めた業務で時間内に仕事をこなすことが良しとされる一方、日本人は残業などの頑張りやプロセスに対する評価を求めるなど、評価に対する意識の差があるようです。

今後、フレックスや在宅勤務が進むことで、成果などの端的な結果が優先され、長期的な視野で組織を育てていく視点や、関係各所との信頼関係を構築するための努力を評価する視点が薄れていくのではといった懸念もあげられました。

若手のモチベーションの多様化

新卒・若手における価値観の多様性については、給与や昇進がモチベーションとなる場合と、「企画に携わる・新規事業を創る」などスキルベースでの成長が動機づけとなる場合などに、傾向が分かれるとの意見がありました。

また、リモート環境が進んだ影響もあり、自由な働き方を望む若手社員が増えているとの意見もありました。

「体験」から変化を促すための現場施策

現場レベルでの施策では、従来の「研修」だけでなく「体験」を重視した施策のアイデアが共有されました。

例えば、他社のマネージャーとの合同研修の実施や、マネージャー同士の対外試合などのアウトプットの場の創出、産休から復職した女性社員による「復職セミナー」の実施、社員同士の助け合い・子育て体験など、体験を重視した越境的な施策が有効なのではとの意見が聞かれました。

また、フルリモートの定着も視野に入れ、地方で社員寮をつくり、共同生活を通じて部署を越えた交流やつながりをつくり相互理解へとつなげるという、コロナ禍ならではのアイデアも出されました。

参加者の声
「変化に対応するには、役員から変わっていくようなサイクルが創れるとよい。多様性に対応するには、トップマネジメントから変わっていくことが必要」
「体で覚えてもらうのは大事。会社としては、そういう環境を用意していくのがいいのでは」

まとめ

今回のcorner day Vol.7では、大テーマに紐づく小テーマを複数設け、その小テーマ毎に、興味・関心の高い方同士で議論をするスタイルで実施しました。その結果、これまでよりも自社の事例に基づいた具体的な議論や、アイデアが活発に出てきたようです。
参加者も、各社の具体的な事例や視点を受け、次の具体的なアクションをイメージできた様子で、ラーニングコミュニティとしてのcorner dayの意義を感じることができたイベントでした。

当社コーナーは今後も、corner dayを通じて、先駆的な人事課題を解決するきっかけを作り、事業と組織の連動性の向上に貢献していきます。

<corner dayとは>
 “経営と人事のレジリエンス”を探究するコミュニティイベントとして、株式会社コーナーが定期開催しているイベントです。第一線で駆け抜けている経営者や人事の方々に多く参加いただき、毎回熱い議論が交わされています。

<corner day Vol. 7:参加者一覧>※50音順

  • 伊藤允晴氏 (株式会社マイクロアド)
  • 井元 敦也氏 (株式会社エクサウィザーズ)
  • 小山浩平氏 (ウェルスナビ株式会社)
  • 唐澤一紀氏 (OLTA株式会社)
  • 木元豪氏 (株式会社NALU)
  • 久保田慶氏 (株式会社CAMPFIRE)
  • 隈元瞳子氏 (Story Design house株式会社)
  • 黒沢槙平氏 (株式会社オプト)
  • 佐藤恵一氏 (シャインフォース株式会社)
  • 田口加奈子氏 (株式会社カラダノート)
  • 高橋達也氏 (株式会社Z-Works)
  • 高橋真寿美氏 (ヘイ株式会社)
  • 永井慎也氏 (株式会社ユーグレナ)
  • 中澤真知子氏 (株式会社I-ne)
  • 中山康平氏 (株式会社アドグローブ)
  • 舟木祐介氏 (株式会社TBM)
  • 藤田大洋氏 (株式会社ツクルバ)

<過去イベントレポート>
corner day vol.1 :レジリエンスを高める組織・制度とは?
corner day vol.2 :MVVをベースとした自律的な組織の作り方
corner day vol.3 :人的関係資産が薄れる中でのミドルマネジメントの人材開発
corner day vol.4 :採用後の早期戦力化
corner day vol.5 :経営・事業に貢献する最適なエンゲージント施策の効果測定

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