CXO採用にはコツがある?CXO人材への正しいアプローチ方法

CXO(Chief X Officer)は「Chief=組織の責任者」+「X=業務・機能」+「Officer=執行役」で構成される経営用語です。
「取締役=会社経営に関わる意思決定を行う/執行役=業務の観点から経営課題を解決する」と役割分担の明確化を目的にCXOを採用する企業が増えてきています。一方でCXOの採用は通常の人材の採用とは異なる部分も多く、苦戦している企業も目立ちます。
今回は、ラクスル株式会社、株式会社BuySellTechnologiesなど成長企業の拡大期を支えてきた森泰一郎さんに、CXOの採用に関してお話しいただきました。
<プロフィール>
森泰一郎
新卒で戦略コンサルティングファームに入社。CEOや役員直下での新規事業開発・マーケティング戦略・M&Aにおける経験を積み、現在国内650億円の売上を挙げている著名サービスの開発などの実績を残したのちに、当時10名規模のラクスル株式会社に参画。
経営企画部のマネージャーとして経営戦略の策定及びPL管理、M&A戦略の策定・実行、プライシング/マーケティング戦略の策定、アライアンス開発、戦略人事といったプロジェクトを牽引。その後、株式会社BuySell Technologiesに入社。取締役COO兼CSOとして、経営戦略/営業管理、新規事業開発と戦略人事の3部門を管掌。
現在はフリーランスとして独立し、成長戦略実現のための経営戦略およびM&A、戦略人事に関するコンサルティングを大手上場企業中心に展開。▶このパラレルワーカーへのご相談はこちら
目次
CXO人材の重要度が高くなるフェーズ・採用のタイミング
───CXOを採用するというタイミングはどのように判断すれば良いのでしょうか?創業メンバーとは別に新たに登用する際の最適なタイミングの考え方を教えて下さい。
CXOを採用するタイミングについては、役職ごとに最適なフェーズがあります。
COO(Chief Operating Officer/最高執行責任者)
社長1人では組織のマネジメントが難しくなってきた段階、具体的には20〜30人程度の社員がいるタイミングで採用が必要になると思います。多くの組織では30人の壁というものにぶつかります。30名以下までは社長1名で全体を見通せ、社長以下がフラットな状態でも組織がマネジメントできます。
しかし、30名を超えると、営業やマーケティング、管理部門など専門機能ごとに部署ができ、それぞれ責任者を置いてマネジメントする必要が出てきます。
その30名の壁のタイミングでマネジメントを社長一人でやり続けることは、マネジメントが崩壊する原因になります。そのため、30名のタイミングまでにCOOは必要です。
CTO(Chief Technology Office/最高技術責任者)
これは事業内容にもよりますが、早期に必要です。VCなどはスタートアップの段階からCTOが参画しているかをチェックするケースも多数あります。
ただしCTOの役割は創業期・成長期・成熟期で異なりますから、フェーズごとに入れ替わるケースも多くなっています。創業期では早期にプロダクトを作り上げられるような手が動せる人材が必要で、成長期では採用や育成といった役割が多くなり、成熟期ではチームマネジメント、業務管理といった役割が得意なCTOが選任されるケースが一般的です。
CFO(Chief Financial Officer/最高財務責任者)
CFOはシリーズAの資金調達が完了したあたりから参画するケースが多いと思われます。シリーズAまでは社長が合間を縫って資金調達業務やDD(デューディリジェンス)対応などを行うことができますが、それ以降ですと資金調達額も大きくなり、専任のCFOが必要です。
CMO(Chief Marketing Officer/最高マーケティング責任者)
CMOは大型のマーケティング投資のタイミングで選任されるケースが多くなっており、CFOの参画と前後するタイミングで行うのが良いと考えられています。
CXO人材を採用・配置するための手法
───CXOの採用とはどのような方法があるのでしょうか?リファラルや社内登用など手法やメリット・デメリットなどを教えて下さい。
CXO採用の方法としては、大きく分けて人材紹介、ダイレクト・リクルーティング、リファラル採用の3つがお薦めです。
それぞれのメリット、デメリットについて説明しましょう。
人材紹介
人材紹介は優秀な人材をエージェント側が集客し、企業に紹介してもらうサービスです。紹介してもらった人材を採用した場合のみ、その方の想定年収の35%前後のエージェントフィーをエージェントへ支払います。
したがって、採用にリソースを割けないベンチャー企業には手数が少なく、かつ固定費がかからないため、利用しやすい採用手法だと言えます。一方で、人材が紹介されるかどうかはエージェント次第という点、エージェントフィーが高額になるため費用が高騰するというデメリットがあります。
ダイレクト・リクルーティング
ダイレクト・リクルーティングはビズリーチやGreen、Wantedly、Forkwellなどのスカウトサービスのことを指します。初期掲載費用や固定費(数万円〜/月)を支払いますが、採用決定時のフィーは発生しない、もしくは15%前後となります。
ダイレクト・リクルーティングのメリットは自社からアプローチができるため、候補者プールを作りやすい点と、報酬もエージェントほどは高額でない点が挙げられます。一方で、記事を作り、スカウトをするという手間がかかるため、その分の人事工数がかかる点がデメリットになります。したがって、多くのベンチャー企業はダイレクト・リクルーティングを使いこなせていないですね。利用企業は増えましたが、本気でやる企業にはまだまだ勝ち目があります。
リファラル採用
社員を介在しての採用ですので、費用を抑えながらマッチング精度の高い採用が可能です。一方で、リファラル採用は目標管理とプロジェクト推進をきちんと行わないと、掛け声だけで終わってしまうため、役員を中心に自分たちで採用するという強いコミットメントが必要です。
通常のポジションを採用する場合との相違点

───CXO採用というのは通常の社員採用とはどのような点が違うのでしょうか?前項で挙げていただいた手法以外に、難易度の説明やなぜ違いが出るのかなど背景も含め教えてください。
CXO採用は、対象となる人材の母数がそもそも少ない上に、事業成長に与えるインパクトや会社メンバー・カルチャーに対しての影響力が強いポジションのため、非常に慎重に採用しなければならないという点が難しいポイントです。
その中で、特に通常の社員採用と異なり失敗しやすい点は2つ挙げられます。
1.非常に高度な専門性を要求される役職
それぞれの専門分野について社長よりも詳しいことが多く、面接でもその専門性について相手のスキルなどを見抜くことが難しいケースがほとんどです。
職務経歴書に大手企業の名前や、輝かしい経歴、数々の大きなプロジェクトなどが記載してあると、それに突っ込んだ質問ができず、結果的に自社が欲している専門性を持たない人を採用してしまうという失敗が起きやすくなります。
2.代わりがきかないため焦りやすい
基本的にはベンチャー企業に超優秀な人材が入社するというケースはまだまだ少数です。このポジションがなかなか埋まらないというタイミングで、優秀な人材が現れたら、自社のビジョンやカルチャーとのフィット、社員とのバランスなどを考えずに、飛びついて採用してしまうケースがまま見受けられます。普通の社員採用であれば焦らずに採用ができる会社でも、CXO採用については焦って失敗するケースが多いのです。

CXO採用事例
───これまでご自身で実践されたことがあるCXO採用を事例に、企業規模や成長フェーズごとの採用目的や手法の違い、結果に関して教えていただきたいです。
CASE 1:CTO採用
とある上場IT企業では、未上場時にCTOが抜けたままプロジェクトマネージャーしかいない状態だったため、CTO採用に取り組みました。エンジニアは人材紹介の利用者が少なく、また仮に利用者がいたとしても、知名度がないベンチャー企業は紹介を待つだけでは採用できない可能性が高いです。そこで、ビズリーチとwantedlyでのダイレクト・リクルーティングチャネルの活用を開始しました。その際、会社のビジョン・ミッションやCTOに求められる役割、今後の事業の成長性などを網羅する資料と採用向けの会社概要を整備。スカウトメッセージにおいて、自社の成長性・事業の幅の広がり・新規事業の計画などを伝えていきました。最終的には、ビズリーチ100通、wantedly100通ほどのスカウトを通して、著名企業のCTOを3ヶ月間で採用することができました。
CASE 2:CFO採用
別の中堅企業では、上場準備に向けたCFO採用が求められていましたが、エージェントなどから紹介される人材がフィットせずに採用ができない状況でした。そこでエージェント採用を活発化させ、複数の有力なエージェントを選択し、エージェント別に企業概要を細かく説明。更に候補者向けのカウンセラーにも説明をすることで、より候補者に魅力が伝わる努力をしました。他にも、エージェントから紹介が来た候補者については、必ず1営業日以内に書類選考を実施し、早く面接設定ができるように面接用のスケジュールを組むことを実施。面接後にもその場でフィードバックを行い、内定が出るまで定期的にエージェントと連絡を取るなど密な連携を行いました。結果として、上場準備経験と資金調達経験を持ち、上場準備の成功と失敗の両方を経験している優秀なCFO採用を実現することができました。
※エージェント経由の採用力強化に関する記事は>>こちら
■合わせて読みたい「採用手法・ノウハウ」関連記事
>>>求人広告や人材紹介だけに頼らない。自社採用力を高める「採用マーケティング」の始め方
>>>「採用要件」を正しく設定し、事業成長を加速する人材獲得を実現するには?
>>>SNSを活用したタレントプール形成・採用力強化の方法
>>>“課題解決に直結する” あるべき採用KPIの設計・運用方法とは
>>>CXO採用にはコツがある?CXO人材への正しいアプローチ方法
>>>難しいエンジニア採用、動向と手法を解説。エンジニア採用に強い媒体12サービスも紹介。
>>>「アルムナイ制度」の導入・運用ポイント。自社理解も外部知見もある即戦力人材の採用
>>>スタートアップでの採用を限られた経営資源の中で進めるための採用戦略・手法
>>>グローバルで戦える企業へ。「高度外国人材」採用のメリットと活躍・定着へのポイントとは
>>>Z世代の採用手法は違う?Z世代人事に聞く、採用やオンボーディングに活かす方法
>>>オンライン化するだけではダメ。ニューノーマル時代の「オンラインインターンシップ」とは
>>>「エクスターンシップ」を理解し、効果を高める上で必要な考え方とは
>>>「ジョブディスクリプション」の導入・運用実態と事例について
>>>「外部登用」をうまく活用して組織力を高めるためには
>>>「通年採用」がこれからのスタンダードに?行政の動きからメリット・デメリットまで解説
>>>「面接官トレーニング」により面接の質を向上させる方法
>>>「エントリーマネジメント」で人が長く活躍する組織を作るには
>>>「採用直結型インターンシップ」が25年卒より解禁。自社の採用に組み込むためには
>>>「AI採用」の世界的なトレンドと日本の展望を解説
>>>「三省合意」の改正内容と中小企業におけるインターンシップの意義・導入方法について解説
>>>「学校訪問」から効果的に採用につなげる方法とは
編集後記
CXOの採用は経営責任と執行責任を分化し、経営課題を迅速に解決することが目的です。
「とりあえずCTOを採用してみよう」「応募効果が良さそうだから、マーケティング担当募集をCMOにしてみよう」といった日本の役職の呼び方を言い換えるような場当たり的な手法は、CXO採用とは言えません。
CXOに求められる専門性は非常に高度であり、候補となる人材は大変貴重です。数多くのライバル企業の中から自社が選ばれるには、今回ご紹介した採用手法の使い分けはもちろん、自社の魅力化や事業戦略の見える化など真の採用力を強化する必要があります。
自社と必要な人材を定め適切なアプローチをするためにも、自社の状況や事業計画を整理することがCXO採用成功の近道と言えるのではないでしょうか。