プロフェッショナル人事を経営の味方に

hiring-how-to人事のノウハウ
人事のノウハウ

難しいエンジニア採用、結局どうすればいい?エンジニア採用成功のための方法

人事のノウハウ

「ITエンジニアの採用は難しい」

実際に求人倍率が高まり続ける中、あらゆる採用ツールを使っても狙った層からの応募がほとんどないこともしばしばです。

しかし、「なぜ、採用できないのか」と改めて聞かれると答えに窮する方も多いでしょう。「エンジニアがそもそもいない」「採用ライバル企業が多い」など、外部要因を挙げるかもしれませんが、それではずっと採用成功には至りません。

そこで今回は、エンジニア採用において知見を持つ佐々木浩祐さんに、エンジニアの採用マーケットや採用において考えるべきポイントなどをお伺いしました。

<プロフィール>
佐々木 浩祐
大学卒業後、コンサルティングファームに入社。主に金融系のシステム開発のコンサルを経て人事にジョブチェンジし、新卒/中途でコンサルタントやエンジニア採用に従事。その後フィンテック系の自社サービス企業に転職し、採用から評価制度の構築、社内制度や規程、福利厚生の整備、情シスや総務労務まで行う。直近はAIベンチャーにて人事として活躍中。IT業界の中で多岐にわたり人事の知見を持つ。

▶このパラレルワーカーへのご相談はこちら

最近のエンジニア採用動向は?

──近年は働き方が大きく変わってきています。エンジニア採用の状況や動向はどのように変わったと感じますか。

エンジニアの採用単価は他職種と比べて年々高騰しており、一人当たりの採用にかかる費用の平均は求人広告で80万円前後、人材紹介ではエンジニア職のみ紹介手数料を50%以上に設定するケースも発生しています。

近年の変化としては、元々IT業界はリモートワークが推奨されやすい中で、フルリモートに舵を切る企業が急増するなど、その浸透スピードがより加速したように感じます。

リモートワークが浸透したことで、エンジニアの採用マーケットにも大きな変化が出てきています。例えば以下のような変化です。

(1)選考期間の短縮

最近はどの企業でもオンライン面談/面接がスタンダードになりました(※注1)。それによって現職中の転職希望者との日程調整も以前よりも容易になり、結果的に選考期間が大きく短縮されている印象があります。

※注1:リクルートキャリアが行ったアンケート調査によると、緊急事態宣言下で66%がオンライン面接を採用活動にて実施。うち28%は、全ての選考をオンライン面接で完結していると回答。さらに、このうち約90%の企業は緊急事態宣言解除後もオンライン面接を継続。

(2)ポテンシャル採用の鈍化

教育・研修などの体制がリモートワーク環境への変化に追いついておらず、やや後回しになっている企業が多い傾向があります。そのため、育成が必要な未経験もしくは経験の浅いエンジニアの採用を避ける形となり、一時期増加していた新卒を長期インターン等で囲い込む青田買い的な採用も、今年度については慎重になっている企業が多いようです。

(3)全体的な採用ニーズが引き続き上昇

SIer/SESの採用ボリュームはコロナで一時的に減ったものの、採用ニーズは再度上昇に転じ、求人倍率も合わせて上がっています。IT・通信業界における2021年7月の求人増加率は6.41倍と非常に高く、前年同月比171%増加しているとのデータも出ています(※注2)。最近では生活スタイルも大きく変わり、オンラインでの新サービスも増え、SaaSなどもより多くなり、エンジニアが足りないという企業は多く見受けられます。

※2:doda転職求人倍率レポート(2021年7月)より引用

エンジニア採用はなぜ難しい?

──採用難の時代の中でも特に難しいと言われるエンジニア採用ですが、なぜそのように言われることが多いのでしょうか。

難しいと言われる理由は企業によっても異なりますが、その大半は以下4つのうちのどれかに分類できると考えます。

(1)そもそもエンジニアの絶対数が少ない

ITエンジニアの人口は、2008年の79万人から2018年には109万人にまで増加しました。しかし、この人口増加数以上にエンジニア採用ニーズが高まりを見せていることが、採用難易度を押し上げています。実際に技術系(IT・通信)の求人倍率は2021年には9.17倍(※2021年7月doda調べ)にもなっており、2030年には約79万人のエンジニアが不足していると言われています。

また、テクノロジーがどんどん進歩していることから、DXやSaaSなどに対応できるエンジニアはさらに少なくなります。加えてエンジニアは大都市に集中する傾向があり、地方都市での絶対数はさらに少なくなっていることも要因として挙げられます。

(2)スキルレベルを定量的に表せるものが他職種と比較して少ない

営業職であれば売上実績や達成率、マーケターであれば広告のCPA・ROAS・PV数などが、その方のスキルレベルを定量的に表す指標となります。しかし、エンジニアの実績を定量的に表すことのできる指標は多くありません。使用言語や開発領域などの経験は職務経歴書から知ることができますが、それだけではレベル感を計ることができません。

(3)各社で求められるエンジニア像が大きく違う

IT業界を大きくセグメントすると、以下3つのカテゴリに分かれます。

・SIer/SES
・受託開発
・自社プロダクト/サービス

同じカテゴリの中で転職するケースであれば、そこまで求められる人材が大きく変わることはありません。しかし、違うカテゴリへ転職する場合は、異なるスキルや経験が求められることも多く、採用企業側もどうマッチングの判断をすれば良いか迷うことも少なくないです。

(4)正社員以外の選択肢が多い(フリーランスや起業等)

一定スキルや経験のあるエンジニアであれば、フリーランスとして活動したり、起業・独立したりすることも比較的選択しやすい領域です。最近ではエンジニア自身で案件を獲得するためのプラットフォームやwebサービスも増えており、一般雇用ではない働き方も増えていることが採用難易度を高めている要因でもあります。

エンジニアを採用するためにやるべきこと

──エンジニア採用を成功させるためには、どんな準備が必要でしょうか。

大前提として、どの職種の採用においても、企業や人事がやるべきフローやステップは概ね同じだと考えています。その一方で、各職種特性や業務内容、採用の緊急度やボリューム、企業の知名度やフェーズになど応じて、具体的な採用手法は異なります。特にエンジニア採用においては、前述した通りエンジニアのスキルレベル判定が難しいこと、それに伴い人事の理解度が足りないなどのつまづきポイントが多くあります。

それを回避するためにも、まずは自社採用における「フレームワーク」を作って、そこから職種ごとにアレンジしてアジャストしていくのが効果的です。「エンジニア採用は難しい」という先入観から特別扱いするのではなく、マーケティング的な視点で採用フローを全体設計し、徐々にエンジニア向けにアレンジしていけば良いのです。

基本的な採用フローは以下になります。

●リード(見込み顧客)の獲得

・ダイレクトリクルーティングなど採用手法の選択
・採用コンテンツの展開
・求人票の作成 など

●ナーチャリング(見込み顧客を採用候補者へ)

面談や面接を通じて、会社/事業/業務内容/一緒に働く人やチーム/入社後の役割などの理解度を深めてもらい入社意向を醸成する

●クロージング

・アトラクト(企業のファンになってもらうための取り組み)
・オファー面談 など

上記のように全体フローを設計したら、それぞれ「誰が・どこまでやるのか」について役割分担していきます。(以下一例)

●経営層と一緒にやること

・採用計画策定
・予算決め など

●人事がやること

・採用媒体の選定…予算はもちろん、競合他社やベンチマークしている企業がどの媒体に掲載しているか、登録しているエンジニアのスキルレベルやバックグラウンドがわかりやすい媒体がどうか(Github等で志向性やどんなことをやっているのかざっくりとでも把握できるか)などから総合的に判断する
自社プロダクトのスキルスタックやサービスの優位性などを説明できるレベルまで理解する
・入社後のイメージが湧くような、エンジニアに訴求できるコンテンツを用意する(開発ビジョン・環境、組織図、チーム構成、働き方、評価制度)

●現場エンジニアにお願いすること

・求人票のレビュー
・スカウトターゲットの目線合わせ
・面談/面接同席
・リファラル採用

※特にアーリーステージにある企業はリファラル採用の割合が多いため、そこに対する設計や支援を手厚くするのも有効です。

※CTOや現場エンジニアなど人の魅力で訴求することもエンジニア採用においては大切です。特に以下のようなサービス上に実績がある方がいる場合は、大きな魅力となります。

・OSS(ソースコードの改変や再配布が自由に認められている無償のソフトウェア)
・Kaggle(世界中の機械学習・データサイエンスに携わっている約40万人の方が集まるコミュニティー)
・Atcoder(競技プログラミングコンテスト)
・Qiita(プログラミング情報のナレッジコミュニティ) など

具体的に人事として取り組んだことについて、事例を一つご紹介します。

●企業

自社WEBサービス企業・社員数40名・シリーズA調達直後

●状況

スカウト前の段階で分かることは非常に限定的なので、技術レベルだけでも魅力的な方にはどんどんアプローチをしてみることに。少ない情報では分からなかったが、実際にお会いしてみると志向性やカルチャーもマッチしているというポジティブなケースが多数あった。結果としてペルソナイメージ(パターン)が増え、採用のバリエーションが広がった。また、それにより社員の心理的ハードルも下がり、リファラルの紹介数向上にも繋がった。

●施策内容

GithubやKaggle実績と連携しているスカウト媒体を選択。魅力的なリポジトリを作っている方、しっかり草を生やし定期的にキャッチアップしている方に対しては、スカウトサイトへの情報の記載が少なくても、志向性を探りながら声かけをする
・資金調達時に使っていた事業内容や計画(オープンにできる範囲のみ)、会社の沿革や今後の展望、組織構成などの会社紹介資料を面談前に送付。面談時に志向性のすり合わせができるよう、事前情報を手厚くした。

採用手段の検討方法

──エンジニア採用にはいろんな方法がありますが、どのように選択していくのが良いでしょうか。

まず選択肢としては、「正社員採用」「SES」「フリーランス(副業含む)」の3つがあります。その中から、各採用企業の状況によってどの手段を取るかは変わってきます。

●採用の緊急度

採用緊急度が高い場合には正社員採用はマッチしません。なぜなら正社員での転職希望者は、基本的に在職中に転職活動をして、内定後に退職交渉をする場合が一般的だからです。求人募集から入社まで最短でも2カ月程度かかるケースが大半のため、緊急度が高い場合は比較的すぐにアサインが可能なSESやフリーランスから探す必要があります。

●業務の重要度

任せたい開発内容がサービスのコアになるアルゴリズムやロジック、品質に関わる部分などである場合、プロダクトやサービスに伴走することが求められるため、正社員がマッチします。内容によっては信頼できるSESにお任せすることもできるでしょう。

●業務の継続性

担当してもらうプロジェクトが単発的なものであれば、フリーランスの方にスポットでお任せするのが効果的です。中期的なものであればSES、長期的であることが分かっているものであれば正社員など、それぞれの期間に応じた形態を選択する必要があります。一定期間以上参画してもらうことが事前に想定される場合は、成長・コミットメント・カルチャーフィットなどの観点からも正社員採用が有効になるケースが多いです。

●マネジメントの必要度

フリーランスやSESの方は業務にコミットしてもらえる反面、プロダクトスケールやチームマネジメントに関与するケースは少ないです。そのためマネジメントポジションが必要な場合は、正社員採用を検討することが多いです。
一方で、スタートアップやまだエンジニアが少ないベンチャーなどは、まずは業務委託で参画してもらい、会社やプロダクト/サービスのことを知ってもらってから正社員として入社いただくケースも増えてきました。双方のトライアル期間を業務委託で行う形です。
また、顧問/アドバイザー/フェローといった上流部分を担ってもらうハイレイヤー採用の場合は、その領域を得意とする人材紹介や顧問サービスなどを利用することも有効だと思います。

エンジニアに強いと言われている採用サービスも合わせてご紹介しておきます。(あくまで参考、かつ、全てではなくほんの一部だけの紹介となります)
■正社員採用向けサービス(人材紹介)
・リクルートキャリア
・doda
・レバテックキャリア
など

■正社員採用向けサービス(ダイレクトリクルーティング)
・ビズリーチ
・doda Recruiters
・ミイダス
・paiza
など

■正社員採用向けサービス(求人媒体)
・WANTEDLY
・Green
など

■SESサービス(システムエンジニアリングサービス)
・レバテック
など

■副業・複業サービス
・Offers
・シューマツワーカー
など

参考に、過去に私がエンジニア採用に携わった際の例をご紹介します。

●企業

AI関連事業・従業員数30名・シリーズB調達前

●状況

・各部署の採用ニーズを深堀りしていくと、そもそもマーケットにかなり少ないスキルスタックの人材が必要ということが分かった→正社員にこだわらずフリーランスも含めることで母数を広げた。
・またその他の部署では、一定期間の作業を任せられる人が欲しい、かつその作業が今後継続的に発生するかは確定していなかった→SESを活用し人材をアサインした。

●効果

・稼働時間が少ないフリーランスでも、優秀な方は圧倒的なパフォーマンスを出した。
・フリーランスをトライアルとして考えている方もいて、最終的に正社員としての採用にも繋がった
・SESは、すぐに人が欲しい、作業ベースでのヘッドカウントがどうしても足りない場合には効果があった。

このケースにおいては、「どんな人材が欲しいのか」「直近だけなのか、継続的に必要なのか」「定性面ではどんな人材と一緒に働きたいか」を、エンジニアとして一括りに考えるのではなく、チームや部署などのセクション単位で考えた点がポイントです。

オススメ本(2冊)

──最後に、エンジニア採用について参考になるオススメの書籍があれば教えてください。

ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える/ラズロ・ボック(著)

世界一の企業とも言えるGoogleの採用の変遷が記載してあり、アーリーステージから上場以降も企業のステージやフェーズに関わらず参考にできる本。
採用のフレームワークとしての部分を参考にして自社にアジャストしていくと非常に効果的です。

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」/安宅和人 (著)

採用の目的を「サステナブルな会社経営」や「事業成長」と設定した時に、そもそも何が課題なのか、そして課題とどのように向き合い解決していくかを考える必要があります。本著はその点について考える際のベースとなる一冊です。

編集後記

「ITエンジニアの絶対数は確かに少ない。しかし、それを言い訳にして“エンジニア採用は難しい”と言っていては、いつまでも採用成功することはできません。少ないながらも確実に存在するエンジニアに対し、適切にリーチしてアプローチできれば、必ず採用できます」

エンジニア採用は難しいという漠然としたイメージから、具体的なアクションをとる前から諦めてしまっている人事もいるかもしれません。しかし、佐々木さんがこうおっしゃるように、難しいだからこそどうアクションするかを考え抜き、行動することがエンジニア採用の秘訣なのだと感じました。

Category : 人事のノウハウ
                  トップへ戻る