パラレルワーカー活用で潜在的課題を可視化。採用戦略からの設計事例。

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パラレルワーカーを社外から受け入れ、事業推進を行った企業にインタビューをする「対談インタビュー企画」。これまでもスタートアップの1人目人事として活躍した事例や、エンジニア採用を成功させて組織規模を倍に拡大した事例など、数々のエピソードをご紹介してきました。
今回ご紹介するのは、広告事業やデジタルマーケティング事業を通じ、持続的な成長を志す企業に伴走し、ビジネスを革新させられる新しい価値創造を目指すオプトが、パラレルワーカーを社外から受け入れて事業推進を行った事例です。その経緯やプロセスについて、オプト 執行役員の黒沢 槙平さん、そしてパラレルワーカーの萩原 聖矢さんにお話を伺いました。
■この事例のポイント
・東証プライム上場企業のグループ子会社が社外から人事パラレルワーカーを受け入れ。人事戦略設計から現場教育まで、採用活動の見えなかった課題が明らかになった。
・実績だけでなくカルチャーマッチを含めた人材起用で、チーム一丸となって事業目標に向けて自走できる組織へ成長。
<プロフィール>
■黒沢 槙平(くろさわ しんぺい)/株式会社オプト コーポレート(経営企画・人事)領域執行役員
2010年オプト(現デジタルホールディングス)入社。人材・教育業界を中心とした運用型広告オペレーション、コンサルタントに従事し、2016年に運用型広告コンサルティング部部長に就任。その後、デジタルマーケターの人材開発に特化した専門部署を立ち上げ、人事部部長の兼任を経て、2021年1月より執行役員就任。コーポレート(経営企画・人事)領域管掌。
■萩原 聖矢(はぎわら せいや)/株式会社DAWN-5 代表取締役 兼 人事パラレルワーカー
大学中退後、ベトナム・ホーチミンにある日系人材紹介会社に就職。現地に進出している100社以上の日系企業・欧米外資企業の採用をサポート。入社2年目に法人営業のマネージャーに就任。日本人だけではなく、現地ベトナム人社員の育成・マネジメント業務に携わり、ベトナムに進出している日系IT企業・外資IT企業の市場開拓及び採用活動の支援に注力。2018年2月に退職し、執行役員としてアンカー株式会社にジョイン。
目次
KPI・KGIの設定からPDCAサイクルの立ち上げへ
──パラレルワーカーを活用しようと考えたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。
黒沢さん:「経営戦略上の背景から中途採用に注力する」と新たに採用方針を決め、採用チームの体制の再構築から着手しました。私がオーナーとなって担当メンバーをアサインしたのですが、敢えて事業経験者を優先したため、人事経験が豊富な体制とは言えませんでした。かくいう私自身も、当時は2年程度の人事経験しかなく、メンバー育成に掛けられる時間も限られていたため、最新の採用ノウハウにも通じていませんでした。
どこから進めようか判断が難しい状況だけが目の前にあるなかで、採用活動は急ぐ必要がある──そんな切羽詰まった状態で、ひとつの可能性として検討したのが「社外からのパラレルワーカー人材の受け入れ」でした。
当初は「何を委託するか決まってない状況なのに大丈夫なのか」「パラレルワーカーの方も具体的な指示がなければ動けないのでは?」と心配していましたが、実際に萩原さんとお会いしたことですべて払拭されました。なぜなら、面談の中で当社の状況を即座に理解してもらえた上に、「ここってどうなっていますか?」「こんな課題があると思います」と様々な提案をしていただきました。デジタルマーケティングに明るい点や、この業界における採用のリアルな事例やノウハウをお持ちだったことも、萩原さんにならお任せできると確信できた理由の1つです。
萩原さん:デジタルマーケティング領域の経験もありましたから、お話をいただいた当初から力になれることは沢山あるのではないかと感じていました。ですから、まずは私自身が手を動かすところから始めようと。
「右も左もわからない状態」でアドバイスだけしても、期待した効果を出すことはできません。単に口を出すだけではなく私自身も一緒に動くことで、現場メンバーと伴走して考えようと思ったんです。そういった意味では、現場である程度自由にやらせていただけることもあり、貢献しやすい環境だったと思います。
採用に関する取り組みは、どうしても定性面や手段の話に偏りがちなもの。だからこそ、組織運営に再現性を持たせるため、できる限りデータや数値を基にネクストアクションを選べるようにしていくことが重要です。そういった面でも、これまでのマーケティング分野の知見を活かしてオプトさんの採用体制構築に貢献できるだろうと考えていました。

事業目標達成のための採用戦略立案から、メンバーへのナレッジ共有まで
──萩原さんのジョイン後は、どのような形でプロジェクトが進んでいったのですか?
黒沢さん:数年ぶりの中途採用活動への注力で、組織立ち上げはゼロイチに近い状態でしたが、萩原さんのおかげでスムーズに事業目標に向けてスタートすることができました。自社の事業フェーズにあった採用活動を行い、その成果を定量的に判断するための評価基準や、事業目標を達成するための戦略立案だけに留まらず、スカウトメール文面の作成やエージェントの新規開拓など、具体的なアクションまで一緒に伴走してもらえました。
また、萩原さんのナレッジをメンバーにも共有いただいたことには正直驚きましたね。同じ目線で仕事に取り組めたので、現場メンバーからの萩原さんへの信頼も厚かったです。プロジェクト開始から3カ月が経過する頃には、中途採用活動もスムーズに進むようになり、チームの雰囲気や事業目標に対する成果もでてきました。
萩原さん:最初に、「定量的なゴール」を設定しました。「何から始めれば良いか」の迷いも、このゴール設定がないことによるもの。そこさえ設定できれば、採用メンバーもどう行動すれば良いか自発的に考えることができますし、今やっていることが十分なのか足りないのかも判断できるようになります。
ゴール設定後は、それを達成するためのKPIを設定していきました。大事なのはここから。KPIに落とし込んだ後、具体的なアクションをメンバーと“一緒に”行っていくことです。その中で、採用活動上の課題を見つけたり、各メンバーの理解度を知ってサポートの仕方を変えたり──こうした採用戦略設計から実行に移すまでのプロセスは、私の得意な部分かもしれません。
──ただ目の前の採用活動を行うだけではなく、今後採用チームが自走していくことも見据えて支援されていたのですね。
黒沢さん:途中、社内の環境変化があって採用活動にもかなり方向転換が強いられる場面があったんです。萩原さんにも無理を言って、対応領域を変更してもらうことになりました。当初の依頼内容とは変わる形になりましたが、そこにも柔軟に対応してもらえて助かりました。
現在は定例会(週次)と1on1(隔週)を萩原さんにお願いしていて、そこで定量目標に対するサマリや、現状の採用活動の課題などをレポーティングしてもらっています。加えて、現場メンバーとの定例会も週1~2回ほど開催。Slackを使って日常的にコミュニケーションもさせてもらっているので、もはや同じ会社の仲間のような存在です。
萩原さん:ここまでで一定の土台は築けましたので、これからはもっと自走してもらえる状態に向けて取り組みを進めていきます。現場メンバーのみなさんが手をあまり動かさなくても母集団形成できるスカウト・エージェントだけに頼らないスキームを作っていきたいなと。そうすれば空いた時間でどんどん新しい施策にチャレンジできるようになりますし、ノウハウ蓄積のスピードもより加速していけると思っています。
パラレルワーカー人材活用にもカルチャーマッチは重要

──ここまでの取り組みを通じて、どのような成果があったと感じますか?
黒沢さん:先ほどご紹介した業務面ではもちろん、ノウハウ面でのサポートも非常にありがたいものばかりでした。自社内だけで仕事をしていたら知りえないようなリアルな採用事例などを萩原さんから学ばせてもらったことも貴重だったなと実感しています。もし萩原さんがいなかったら、採用活動が軌道に乗るまでにもっと時間がかかっていたかもしれません。
あと、萩原さんは執行役員として経営の立場でもご活躍されていた経験があるので「ビジネス起点で考えてもらえる」ところがとてもありがたかったです。採用戦略設計についても、「どんな施策を使うか」など手段の選定から入りがちなケースが多いところを、まず事業目標に基づいて採用目標を考え、KPIを引き、そこに向かうための手段をアサインする──といった流れで進めてもらえて。萩原さんはまず“ビジネスの成功ありき”で提案してくれるので、各取り組みの目的と手段が常に合致した上で進めることができました。
しかも「黒沢さんとしても、こういう情報があると判断しやすいですよね」と意思決定者である私の立場も踏まえたコミュニケーションまでしてくれて。そんなところまで伴走してくれるのかと驚きの連続でした。なんだか褒めてばっかりになっちゃいましたね(笑)。
萩原さん:“経営目線”は個人的にも大切にしているところだったので、褒めてもらえて嬉しいです(笑)。ちなみに現場メンバーの方とコミュニケーションを取りながら進める仕事が8割以上あるので、自分が関わってない間の進捗状況などは自分からヒアリングするようにしています。メンバーの方もどこまで私に共有したらよいか迷うはずなので、必要なことは自分から拾いに行った方がいいなと。あとは定番ですが、返事はすぐに返すことですかね。これは人と連携する上では必須だなと思います。
──初めて社外のパラレルワーカーを受け入れて感じたことを教えてください。
黒沢さん:スキルマッチだけでパラレルワーカーを受け入れていたら、今回のような結果は出せなかったと思います。中途採用を強化したいからその領域に知見がある方を、というのはその通りなんですが、それ以上に会社がやろうとしていることに共感してくれたり、メンバー一人ひとりの人柄まで理解しようとしてくれたり。「カルチャーマッチ」があったからこそ、長期的な視点に立った組織づくりを萩原さんと進めることができました。
パラレルワーカーの受け入れはとても可能性のある取り組みですが、それを活かすも殺すもマッチング次第。そういう意味でもコーナーさんに間に入っていただき、当社のことをよく理解してくれている担当の奈良橋さんからの的確なアサインがあったからこそ萩原さんにも出会え、今回の成果が出せたんだと思います。
萩原さん:オプトさんが私自身のスタンスを受け入れてくれたことも、今回の成果につながっていると思います。今はちょうど中途採用の活動が軌道に乗り、現場メンバーも自ら考え、自走できるようになりました。今後は引き続きPDCAを回しつつ、片側では採用広報や来期に向けた仕込みなどもしていきたいと考えているところ。一緒に新たな取り組みができることにとてもワクワクしています。
編集後記
「パラレルワーカー活用」というと、目の前の課題解決のために専門家の力を借りる的なイメージを持つ方も少なくないでしょう。もちろんその要素もありますが、それはあくまで可能性の一部。スキルマッチだけに留まらずカルチャーマッチの視点も含めて外部人材とのマッチングを実現すること、短期的な成果だけでなく中・長期的な視点で取り組み内容を考えること──こうした点がパラレルワーカー活用により成果を最大化するポイントなのではないでしょうか。