【対談インタビュー】ユニコーン企業の成長を加速させるのは、雇用形態の境界線がないチームづくり
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パラレルワーカーを社外から受け入れ、事業推進を行った企業にインタビューをする「対談インタビュー企画」。今回ご紹介するのは、数少ない日本のユニコーン企業として、サステナビリティのビジネス領域でグローバルのトップ・プレイヤーを目指す株式会社TBMの事例です。
炭酸カルシウム(石灰石)などを主原料にプラスチックや紙を代替する新素材「LIMEX(ライメックス)」など環境配慮型の素材開発及び製品販売、資源循環を促進する事業などを国内外で展開する同社。これまでの累計調達額は300億円を超え、日本経済新聞社による「NEXTユニコーン調査(2021年)」で国内4位にランクインするなど急成長を遂げています。
同社では2023年秋よりパラレルワーカーの活用を本格的に始めていますが、さらなる発展を見据える中で、今後も外部人材の積極的な受け入れを検討しています。その経緯や得られた成果、将来の展望などについて、常務執行役員CMO 笹木 隆之さん、ピープル&カルチャー室 室長 藤﨑 育子さん、人事パラレルワーカーの梅﨑 薫さん、株式会社コーナー コンサルタントの松井 淳美にインタビューしました。
■この事例のポイント
・ユニコーン企業としての評価を受け、採用スピードを加速させていく必要がある中で、プロの外部人材によるサポートを求めた
・早期に採用成果が出るなど目の前の問題を解決できるようになったことで、中長期的な組織戦略を考えられるようになっていった
・企業としてより競争力を高めていくために、社員や業務委託といった雇用形態にこだわらず、境界線のない組織づくりを進めていっている
<プロフィール>
■笹木 隆之(ささき たかゆき)/株式会社TBM 常務執行役員CMO、コミュニケーション本部 本部長、広報・マーケティング部 部長、政策渉外部 部長
株式会社電通に入社後、経営/事業変革のクリエイティブユニット「未来創造グループ」に所属。マーケティングを起点にした 新規事業開発、インナー変革プログラムなど、チーフプランナーとして活動。2016年、株式会社TBMに入社。2022年よりブランド戦略やマーケティング・コミュニケーション、渉外、人事(部門人事・人材組織開発、制度企画)、新規事業に関わる業務に従事。2023年、常務執行役員CMO、東京都スタートアップフェロー、一般社団法人資源循環推進協議会 事務局長に就任。グループ会社のバイオワークス株式会社の取締役を兼任。
■藤﨑 育子(ふじさき いくこ)/ピープル&カルチャー室 室長
組織開発や経営計画・人事制度構築などのコンサルティング業務に従事、ネットメディアの広告に関わる戦略立案・分析業務に従事。その後、研究開発部門にてエグゼクティブチームの変革・リーダーシップ、コーチング、組織開発に関わる研究、商品企画等に携わる。2022年、TBM入社、Circular People Managementのコンセプトを作成し、TBM Compassを軸に「未来を思い描き挑戦しつづける」ための人づくり・組織作りに従事。
■梅﨑 薫(うめざき かおる)/パラレルワーカー
新卒でリクルートへ入社。人材紹介の法人営業を経て自社の中途採用担当を経験した後、VCのHR担当として投資先企業の人事支援業務に従事。現在は株式会社weareを起業し、スタートアップ向け採用支援を行いながら、自社事業の開発に取り組んでいる。
目次
事業拡大を推進する社内変革のために、プロのサポートを求めていた
──まずは、外部人材活用を決めた経緯から教えていただけますでしょうか?
藤﨑さん:きっかけは人事制度企画の案件になります。事業成長に伴い人事評価制度の見直しを進めていく中で、プロの力を借りたいと考えたからです。当初は自社のみで進めていたものの、よりスピードを上げるため外部人材の活用を検討し、以前から人事関連のことでよく相談をしていたコーナーさんにお願いすることになりました。
──コーナーの外部人材を活用した感想はいかがでしょうか?
藤﨑さん:外部のプロ人材に業務委託として入っていただく場合、その方と自社とだけで進めていくイメージを持っていました。しかしコーナーの場合、コンサルタントの松井さんもプロジェクトに入り、業務の調整や進捗の管理を一緒に進めてもらえたのがありがたかったです。外部人材はもちろん、松井さんによるプロジェクトのコントロールが素晴らしかったため、他の課題についても引き続き相談していこうとなりました。
──実際に活用してみて、その効果を実感したわけですね。そこから採用業務でも外部人材を活用することになったとのことですが、その際の流れを教えていただけますか?
藤﨑さん:当社では従来、複数部門を掛け持つHRBPの担当者を置いていました。各担当者がそれぞれの手法で採用活動を進めていましたが、成長スピードに合わせてより多くの人材を採用しなければならない中で、採用ペースがやや追いつかなくなっていたんですね。そんなときHRBPに退職者が出たこともあって松井さんに相談しました。結果、各担当者の手法を横串で見て、採用企画を牽引してもらえる外部人材に入っていただけることが分かり、採用ペースを上げていくためにも新たに外部人材の力を借りることにしました。
松井さん:TBMさんは、会社の想いを大事にされている企業です。外部人材と面談される際には、経験やスキルはもちろんのこと、同じ想いを持って取り組んでくれそうかを重視されていました。事前に会社のことを深く調べてから面談に臨んでいるかなども見ていらっしゃいましたが、その中で決まった外部人材の一人が梅﨑さんだったんです。
梅﨑さん:私はコーナーの創業当初から外部人材として働いていますが、自身の関わり方として、機能的な役割を担うだけでなく、同じチームのメンバーとしてプロジェクトに取り組むことを意識しています。その点で、TBMさんはスタートアップの中でも当事者目線でワクワクできそうな会社だと感じました。
また、以前からディープテック領域に興味があり、TBMはその領域でユニコーン企業としての評価も得ており、資金調達額ランキングにも名を連ねている企業です。こうした会社の成長性にも魅力を感じました。面談で話した人事の方の熱量もすごく、ピッチ資料に沿って説明するだけでなく、自分の言葉で想いを込めて語ってくださったのが印象に残っています。
目の前の課題解決だけでなく、長期的な視点での組織づくりにも着手できるように
──続いて、梅﨑さんをはじめ外部人材の方が入ってからのお話を伺っていきます。梅﨑さんは、具体的にどういったミッションを担うことになったのでしょうか?
梅﨑さん:私が関わり始めた当時、TBMさんでは常時50~60ポジションの採用が動いていました。専門職種の募集も多く、かなり難易度は高いと感じました。その中で私は、管理部門をメインに10~15ポジションのリクルーターとして動いていくことになりました。
──採用活動を進めるうえで工夫されたのはどういったところでしたか?
梅﨑さん:TBMさんは会社として興味を持ってもらえるポイントがたくさんある会社です。部門長のみなさんの面接にも同席したのですが、候補者の方を「知る」という点でもしっかりできていると感じました。ただ、さまざまな魅力の中から、募集職種のターゲットにどのポイントを伝えていくべきかが定まっていない印象を受けました。だからこそ、私が担当する管理部門の各職種について、TBMで働く魅力をどう伝えていくかにより力を入れていきました。
──外部人材に入ってもらうことでどういった成果が出たのでしょうか?
藤﨑さん:これまで何年も採用が決まっていなかったポジションがあったのですが、梅﨑さんに入っていただいてからわずか1ヶ月半で2名も決まったんです。通常は早くても成果が出るまでに3か月ほどかかると聞いていたこともあり、かなり驚きましたね。
松井さん:私も驚いたのを覚えています。TBMさんのHRBPの方々とやり取りしていても、「もう採用決まりました!最終フェーズもあと○名います!」「すごいスピードで前に進めてもらってとにかく感謝です!」など喜びの声をもらうことが多かったです。このように早い段階から成果が出始めたことで、藤﨑さんと私で「今後の採用体制をどうしていくべきか?」という議論も始めることができました。
──外部人材のおかげで現在の課題が少しずつ解決されていったことで、未来の体制づくりにも目を向けられるようになっていったわけですね。どんな議論をし、どういった結論が出たのでしょうか。
藤﨑さん:これまではHRBPを担当者として置き、各担当者が最適だと考える採用手法を取ってきましたが、全社視点で見たときに最適ではないのでは?という話が出ていました。HRBPは世の中の潮流ではあるものの、当社では担当者の採用手法が充分に統一されておらず、効率的な採用活動ができていないんじゃないかと。そこで採用活動全体を企画するポジションを置き、横断的に情報共有などを行っていくことで、採用活動のスピードや品質を上げていけるようにしようと考えたのです。
松井さん:具体的には、採用企画、採用リクルーター、採用オペレーションという役割を設け、それぞれが責任をもって行動することで、精度を上げていくことになりました。しかし、採用企画のポジションはすぐに採用できるわけではありません。そこで経験と能力もあり、信頼を築いてきた梅﨑さんの役割を変更し、リクルーターから採用企画全体を統括する役割をお願いすることになりました。
梅﨑さん:オファーをいただいた当初は、業務委託の外部人材としてどこまでできるかという不安はありました。しかし、TBMさんというポテンシャルある企業が、そのポテンシャルに見合うだけの採用力をつけていくプロセスに関われることは大きな魅力でしたね。チャレンジングですが面白いテーマだからこそ、オファーをいただいた以上やってみたいと思ったんです。
──そこから採用体制を見直すプロジェクトが始まったわけですが、プロジェクトはどのように進んでいったのでしょうか?
松井さん:プロジェクト開始後は、藤﨑さんと議論しながら体制を決めていきました。特に私の考えとして、梅﨑さんの経歴と実績から、彼が企画のトップになればよりスムーズにプロジェクトが回るだろうというイメージがあったんですね。そこでまずは梅﨑さんを中心に据え、一緒に走れるチームフォーメーションを組んでいきました。
梅﨑さん:2024年春にスタートしたプロジェクトなので成果はこれからですが、まずは横断的に情報共有を行い、採用計画全体の進捗を見える状態にしました。これまではHRBPの各担当者が個々で施策を実行していたため、無駄なやりとりが増えたりと効率的な動きができていませんでした。しかし定例でミーティングを実施し、各リクルーターが自身の進捗やうまくいった取り組みを報告するようになったことで、採用予算の適正な配分ができるようになったりと、汎用性や再現性を意識した動きが取れるようになってきていると感じます。今は土台を整えている段階ですが、今後より採用スピードを加速させられる準備が進んでいっています。
藤﨑さん:採用担当を統括するポジションを設けたことで、例えば改善案や新規の採用チャネルの提案が出やすくなったりと、より良い採用活動をしていこうという機運が高まってきました。さらに自社採用において、短期的な目線での改善のみならず、常務執行役員CMOの笹木と梅﨑さんとで議論を行い、複業人材の積極的な登用などについても話し合いが始まっています。
雇用形態に関係なく、境界線のない組織づくりを進めていきたい
──ここからは、常務執行役員CMOの笹木さんに今後の組織戦略についてお伺いしていきます。梅﨑さんをはじめ外部人材を受け入れたことで、貴社の組織戦略に何か影響はありましたでしょうか?
笹木さん:2019年に日本で6社目のユニコーン企業としての評価をいただき、日本経済新聞社による「NEXTユニコーン調査(2021年)」をはじめさまざまなメディアでもご紹介いただいたことで、当社への注目度はかなり高まりました。当時、私は人事部門の責任者を務めていましたが、自社採用にも多くのエントリーがあったのを覚えています。しかし同時に感じたのが、ユニコーン企業に選ばれたのであれば、また、スタートアップで働く仕事のやりがいを考えると、実際の応募数より数倍以上多くてもよかったんじゃないかということです。
日本でもスタートアップ政策のさまざまな施策が始まり、スタートアップ領域は今後さらに盛り上がっていくでしょう。その中でユニコーン企業としての評価をいただいた私たちとしては、社会からの期待値を大きく上回っていくような組織づくりや人づくりに取り組んでいくことが責任だと考えるようになりました。
その中で今回、梅﨑さんのような外部人材と一緒に働く機会があり、ディープテック領域に興味を持ち、モチベーション高く取り組んでくれる方がいらっしゃることを知りました。こうした人材はまだまだ多くないかもしれません。しかし、私たちがより高みを目指し、非常識な挑戦を進めていく上では、雇用形態についても多様性を持って組織づくりを進めていくべきではないかと考えるようになりました。
世界のユニコーン企業も集まるダボス会議に参加した際も、採用に対するスピード感や注力度は、海外の企業が圧倒的に勝っています。アメリカでは新規採用の半数をスタートアップが占めるなど人気になっていますし、インドでも医師やエンジニアを抜いてスタートアップが人気職種となっています。こうした世界の競争力に負けずに成長していくためにも、私たちは変わる必要があると感じました。これまでは正社員中心の組織づくりをしてきましたが、今後はフルコミットで働く正社員へのインセンティブをさらに設計し、正社員雇用に偏らない雇用形態での採用も進めていくことにしたのです。
──そういった背景から、業務委託の外部人材や複業人材の受け入れを積極的に行っていくことになったわけですね。
笹木さん:仰る通りです。会社としてより競争力を高めていくためにも、正社員に限らず、さまざまな形態で働く方を受け入れていきたいと考えています。人事領域に限らずですが、豊富なビジネス経験があり、企業のサポート役として当事者意識を持って働いてくださる方はたくさんいらっしゃいます。私たちとしても受け皿は広く用意していますので、これまでの経験を新しい領域で活かしたい、課題解決にしっかりコミットできる業務を推進したいという自信のある方はぜひチャレンジしてほしいです。
TBMとしても、ユニコーン企業のスタートアップとして、日本だけでなくグローバルと同時並行で事業を成長させようと取り組んでいます。そんな中で、例えば1か月で1万人、2万人の方に応募していただくにはどんな仕掛けが必要だろう、何ができるだろうと考えて実行するなど、日本のスタートアップとして新しいロールモデルをつくっていくこともできるでしょう。そんな前例のないことにも取り組みやすいフェーズにあると思います。そんな環境で腕試しをしたいと考える方こそ、私たちも積極的に受け入れていく考えです。
──TBMさんのような成長企業に伴走し、長期的に関わっていくやりがいについてもご紹介できればと思います。梅﨑さん、松井さんはどういったことを感じられているでしょうか?
梅﨑さん:例えば3か月、半年と期間が決まっているプロジェクトの場合、施策の実行や改善をしていくことがメインになります。どうしてもスキルの切り売り的なものになりやすいというか、限られた期間でいかにできることをやるかが大事になってきます。
しかし中長期に関わる場合、社員の方々とも同じ目線で考え、目標設定も含めてプロジェクトに関わっていけることが魅力だと感じます。実際、笹木さんとやりとりする際も答えがない問いが多いので、自分の中にあるこれまでの正解を持ち込めないこともすごく面白いと感じています。短期的な成果を追うだけでなく、自分が答えを持っていないことに対して一緒に模索し、新しいチャレンジをしていけることがやりがいです。自身の考えも遠慮なく発信できるというか、外部の第三者ではなく、同じチームの一員という意識で取り組めます。
松井さん:コーナーが大事にしている考え方のひとつに「境界線をなくす」というものがあるのですが、今回のプロジェクトはまさにそういった状況になっていると感じます。社員や業務委託といった立場に関係なく、目指したい姿、目指したいゴールに向かって、各自が最善を尽くしながらチームをつくっていく。それこそが長期的に関わるやりがいだと思いますし、コーナーを活用してぜひその境界線のないチームづくりを味わっていただきたいです。
──最後に、笹木さんからメッセージがあればお願いいたします。
笹木さん:TBMは今期、「全員がレギュラー」というスローガンを掲げています。雇用形態に関係なく、一人ひとりが会社のレギュラーという意識を持ち、組織づくりや人づくり、TBMづくり、さらには時代づくりをやっていこうと。そういった意識で取り組む中で、私たちが大事にすべきだと感じたことがあります。
それが経験やスキルを一方的に見るだけでなく、ミッションやその背景にある戦略的な意志をいかに伝えるかということです。特に業務委託として一緒に働く方には、本人がモチベートされるようなメッセージを伝えられるかが重要だと感じています。会社側が価値を感じていることでも、外部人材の方が同じところに価値を感じているとは限りませんから。だからこそ、相手の関心領域がどこにあるのかを知り、そこに響くような伝え方をしていくことが大事でしょう。いわば、一人ひとりを本気で口説きにいくようなイメージです。そうすることで、梅﨑さんのような優秀な方と一人でも多くご一緒できることを期待しています。
編集後記
評価制度の構築や採用活動の改善においてプロの外部人材が活躍し、企業の成長スピードが加速していく。それだけでなく、プロの外部人材の活躍によって企業の組織戦略が変わり、社員や業務委託にこだわらない組織づくりが進んでいく。そんな「境界線をなくした組織づくり」を進めているTBM様。企業側に良い影響があるだけでなく、梅﨑さんをはじめ外部人材の方々も日々やりがいを感じながら働いており、こうしたケースが増えていくことで、企業も外部人材もより良いあり方を目指していけるのではないかと感じました。