【対談インタビュー】高難度のエンジニア採用を「外国人採用」と「外部人材活用」で打破した事例
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複業/パラレルワーカーを社外から受け入れ、事業推進を行った企業にインタビューをする「対談インタビュー企画」。今回ご紹介するのは、静岡県浜松市を拠点としてスポーツ×教育分野のアプリケーション開発を行い、すごいベンチャー100にも選出された株式会社SPLYZA(スプライザ)が、「外国人採用」「外部人材活用」を同時に進めて採用力を大幅に向上させた事例です。
その経緯やプロセスについて、代表取締役社長の土井 寛之さん、そして人事パラレルワーカーの小野木 剛大さんにお話を伺いました。
■この事例のポイント
・静岡県浜松市に拠点を構え、創業当初は採用に苦戦。そこから「外国人採用」「外部人材活用」に舵を切ったことで、母集団形成を成功させ採用力を大幅に向上。
・「外国人採用に知見がある」「英語ができる」などニッチなニーズにもマッチした外部人材を迎え入れられたことにより、スタートアップならではの変則的な業務要望を柔軟に実現
<プロフィール>
■土井 寛之(どい ひろゆき)/株式会社SPLYZA 代表取締役社長
大学卒業後、浜松市浜名湖でウインドサーフィンに出会い、スポーツの「正解の無い問題」を解いていく面白さにはまる。その後、オーストラリア西海岸でウインドサーフィンに明け暮れる。 帰国後、アマチュア向けの簡易で安価な映像分析のアプリケーションが存在しないことに気づき、”アマチュアスポーツマンの「もっと上手くなりたい」を叶える”をスローガンに2011年株式会社SPLYZA設立。 経済産業省「始動 Next Innovator 2016 (グローバル起業家等育成プログラム)」シリコンバレー派遣メンバー、TEDxHamamatsu2017スピーカー
■小野木 剛大 (おのぎ たけひろ)/株式会社ディシェアー 代表取締役 ・ 人事パラレルワーカー
アメリカの大学を中退後、ソフトバンクグループにて総合人材サービスを提供するSBヒューマンキャピタル株式会社に入社。中途採用向け求人サービスの営業として東海支社の立ち上げに貢献。入社から1年で西日本事業本部の事業部長に昇格し、数多くの企業の採用支援に関わる。その後、マーケティング部門に異動し、運営する複数の求人メディア、人材紹介部門等におけるToC求職者獲得、ToB企業リード獲得の各種施策をリード。2021年8月末に独立し、現在は得意の英語を活かし外国人採用を含めた採用支援を幅広く行っている。
目次
浜松に拠点を構える「良さ」と「難しさ」
──「アマチュアスポーツマンの『もっと上手くなりたい』を叶える」をスローガンに掲げる御社ですが、本社を浜松に構えたのは何かゆかりがあったからでしょうか。
土井さん:SPLYZAの創業メンバーは私を含め3名いるのですが、実は誰も浜松にゆかりはなくて。たまたまこの3名が出会った場所が浜松にある会社だったこと、起業する上で最も重要なランニングコストを下げられることなどが浜松を選んだ理由です。
それに、浜松ってウインドサーフィンをするのにとても良い場所なんですよね。社会人3年目からウインドサーフィンにのめり込んだ自分にとって、職場から海まで30分程度で行ける環境はまさに天国。他の2人も「満員電車に乗りたくない」と言っていたので、すべての希望に合致した形です。
スポーツを事業テーマにしたのは、3名で100以上のアイデアを出し合った末に「アマチュアスポーツの領域にITが全然使われていない状況を改善しよう」という考えにまとまったから。3名ともスポーツが好きで本気でやってきたからこそ盛り上がれるテーマだったし、自分自身もウインドサーフィン中の映像を撮影・編集してSNSに投稿して仲間とコミュニケーションを取る中で「ITを活用すればもっとできることがありそうだ」と感じていたことも決め手になったように思います。
創業から10年以上が経った今は、選手自ら課題発見・解決までできる映像分析ツール「SPLYZA Teams」、手軽にできるAIマーカーレス動作分析アプリ「SPLYZA Motion」などを通じて、アマチュアスポーツマン(部活動や体育の授業なども含む)の成長と考える力の育成に取り組んでいます。
──反対に、浜松で活動する中で難しいと感じたことはありますか?
土井さん:正直、採用にはすごく苦労しましたね。2015年頃に初めて社員を採用しようと考えて、Wantedlyに登録してみたのですが応募はゼロ。会社の知名度もなかったので今考えれば納得の結果ですが、エリア採用の難しさに直面した瞬間でした。
そこで発想を転換し、外国人エンジニアの方も視野に入れて募集をすることにしたんです。というのも、創業メンバーの1人がアメリカ人なので、仮に日本語が話せなくてもそことコミュニケーションが取れれば問題ありませんから。日本の採用サービスをあきらめてLinkedInやStack Overflowなどのサービスを使ったことで、世界中の優秀なエンジニアから短期間で何十人も応募してもらうことができました。応募条件に「日本語ができること」を入れていたら、こんな結果にはなっていなかったでしょうね。
余談なのですが、外国人採用をしていると情報詐欺みたいなことが一定発生します。例えば、他人の履歴書をコピペして自分のものとして提出するなどはよくあること。日本人採用ではあまりないことも、外国人採用では頻発するため注意が必要です。
「外国人採用」と「外部人材活用」の合わせ技
──外国人採用も成功してアプリ開発・リリースも進む中で、「外部人材活用」をしようと考えたのはどんなタイミングだったのでしょうか。
土井さん:ある程度開発チームが整ってアプリをリリースできた後は、営業やマーケティングの強化が急務でした。顧客は日本人なので、これらのポジションも外国人でというわけにはいきません。改めて日本の採用サービスを使うようになったものの、相変わらずうまく活用できず成果が出なくて……。
また、2018年頃には事業が軌道に乗ってきたこともあり、より計画的に採用を進める必要性を感じていました。ただ、年中採用するわけでもないので専任の人事担当者を置くわけにもいかず。役員2人が採用業務を担当するしかないわけですが、エンジニア採用の知見も採用に割く時間もない。そんな窮地に立たされた結果、「スポットで専門家に協力してもらうことはできないのか」と考えてCORNERに行きつきました。
外国人エンジニア採用も継続して進めていたので、ジョインいただく人事パラレルワーカーの方も英語を使える必要があります。加えて、LinkedIn運用・一次面接対応、応募者コミュニケーションなどお任せしたいことも幅広く、そんな条件に合致する方が本当にいるのかと最初は不安でしたが、CORNERは見事適任者である小野木さんと引き合わせてくれました。
小野木さん:昔からオレゴン州で複数のレストランを運営している現地の企業で人事を手広く手伝っている経験がSPLYZAの求める要件とぴったりハマっていて、お役に立てることが多そうだと感じたことを覚えています。
外国人採用をする上では理解しておかなければならない前提が多いので、専門性は必然と高まります。特に、「日本人と外国人は違う」ということは大前提として理解しておかなくてはいけません。英語力はもちろんですが、それ以上に異文化を理解することの方が大切で。日本人の考えや文化を押し付けてしまい、採用がうまく進まなかったなんてことはよくあります。
SPLYZAは創業メンバー・開発役員がアメリカ人の方で、英語だけでコミュニケーションが取れる環境と異文化理解ができている土壌がすでにありました。日本ではあまり見ない組織環境であり、事業内容も浜松に拠点があることも面白いと感じて参画を決意した形です。
すべてに共通するのは「多様性を受け入れられる組織環境」
──小野木さんから見て、SPLYZAさんはどんな印象でしたか?
小野木さん:ITエンジニアの採用市場環境は非常に厳しく、それは外国人エンジニアといえども変わりません。ただ、「日本語はできなくてOK」と明言していたことは他社にはない強烈な強みで、これだけでも「採用市場で競争に勝てる」と思ったほどです。外国人採用を進めている会社は大手も含めてたくさんありますが、日本語ができなければ採用されない会社も多いので、その点でSPLYZAは採用市場の強者でした。
また、私がジョインした当時はSPLYZAの知名度もかなり上がっており、スポーツというテーマの強さも手伝って応募数自体はかなり多い状態でした。しかしながら、前述した通りSPLYZAの組織環境は独特であり、日系企業でありながら働き方やマインドは完全にアメリカ寄り。本質的にマッチする人材はそこまで多くないことから、採用手法をあえて2つくらいに絞り込んでより定性面のマッチ度を高められるようにしました。
土井さん:社員が10人に満たないときから積極的に外国人採用を進めてきたことで、多様性を受け入れられる土壌がつくれられたのかなと。また、リモートワークなど働き方の柔軟性が高かったことも大きく影響していると思います。実際に大分県や和歌山県、中にはインドに住みながらフルリモートで働いてくれている外国人エンジニアが在籍していますから。
普段はバーチャルオフィス「TeamFlow(チームフロー)」を使ってコミュニケーションを取っています。それでも部門間のコミュニケーションは薄くなりがちなので、別途コミュニケーション促進チームを作って活動をしていたりもしますね。先日は全社員を集めた1泊2日のフットサル大会を開催しました。言葉が通じなければオンライン上ではほとんど交流できません。オフラインで一緒にスポーツをすると言語を超えて仲良くなれるので、こうした取り組みも積極的に行っています。
──採用を進める上で、他に課題はありましたか?
小野木さん:選考スピードが当初かなり遅かった記憶があります。役員のみなさんが他に優先順位の高い業務を抱えていたことが要因なのですが、採用をスムーズに進める上では選考期間は短いに越したことはありません。採用したい候補者の他社選考状況を逐次Slackや電話で共有したり、良い方であればできるだけ早期にトスアップしたりすることで、選考スピードを上げられるように努めていました。
土井さん:ここは小野木さんにも遠慮させてしまったかなと感じている部分でして。「これくらいのスパンで選考を進めないと逃げちゃいますよ」とズバッと言ってもらえた方が、こちらももっと行動変容できたと思っています。とはいえ役員陣も忙しく働いているので、その中で時間を抑えてしまうことを気遣ってくれたが故の配慮だとは理解していますし、徐々に運用も良い感じに進められるようになったので、結果的にはすごく助かりました。
また、人事の素人が暗中模索で採用を進めていた時とは違い、豊富な人事経験を持つ小野木さんと一緒に採用を進めることで“生きたノウハウ”を学べたことも大きな収穫でした。
今後の外部人材活用の在り方について
──これから事業も組織もさらに拡大させていこうと考える中で、どのように外部人材を活用していこうと考えていますか?
土井さん:現状エンジニアサイドはかなり充実してきているので、次はビジネスサイドの採用を強化したいと考えています。あと、組織も50名規模にまで拡大してきたので、そろそろ専任の人事担当者を社員で配置したいなと。将来的には海外展開も視野に入れているので人事担当者にも英語力を求めたいところではありますが、英語も人事もできるスペシャリストは簡単に見つかるわけではありません。
なので、小野木さんにサポートいただきながらバイリンガルを人事担当者として育成するのがベストなのではないかと考えていて、その方向で今検討を進めています。こうした「スペシャリストとしての外部人材が社員を育成する」みたいな動きは、今後日本でも増えていくような気がしています。
編集後記
外国人採用と外部人材活用。2つの要素が掛け合わされることで、採用難易度の高いエリアのエンジニア採用を乗り越えた今回の事例。これまでにない新しい組織や採用のカタチを目の当たりにできた取材でした。
これらを実現できたのは、多様性を受け入れられる組織土壌があったから。組織の多様性はすでに各所で語られている注目テーマですが、改めてその必要性を考える上でも今回の事例は良いきっかけとなるかもしれません。