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急成長する事業・サービスを支え、「組織を勝たせる」人事とは

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今回はリレーインタビュー企画の第2弾として、前回記事の小山浩平さんよりご紹介ただいた吉成 大祐(よしなり だいすけ)さんにお話を伺います。

現在ChatworkHRBP部マネージャーとして活躍する吉成さんは、これまでヤフー、PayPay、ファーストリテイングで人事・採用を経験し、多くの実績を残してこられました。

「組織を勝たせる。それが僕なりの人事の在り方です」

その考えに至った背景にはどのような経験があったのか。過去から現在に至るまで、そしてこれからの展望についても、お話をお聞きしました。

<プロフィール>
吉成 大祐(よしなり だいすけ)/Chatwork株式会社 ピープル&ブランド本部 HRBP部マネージャー
早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社入社。地域系サービスの新規事業、広告企画を経て人事へ異動。新卒採用、中途採用、両領域のマネージャーを経て、PayPay株式会社の立ち上げに参画。サービスリリース前のセールスの採用から同社の採用部門の立ち上げ、グローバルなプロダクト採用まで採用責任者として携わる。その後株式会社ファーストリテイリングにてIT領域の採用を担当後、2021年2月よりChatworkに人事組織のマネージャー兼ビジネス本部HRBPとして入社。

「採用できなきゃ、事業が負ける」

──「組織を勝たせる人事」この考えにたどり着いた背景には、どんなものがあったのでしょうか?

PayPay時代の経験が、今の自分の在り方に大きな影響を与えてくれました。

当時はQRコード決済サービスの黎明期であり、LINE PAYや楽天ペイなどの競合サービスがそれぞれマーケットシェアを取り合うまさに戦国時代。「総額100億円のキャッシュバック」をPayPayが実施し、開始わずか10日間でキャンペーン終了したことも記憶に新しいかもしれません。

各社共に「いかに使える店舗を増やすか」が事業成長・拡大のキーになっており、PayPayも全国で1,000名規模の営業採用を行うことを決定。最初はヤフーの採用マネージャーとして隣で見ていた私もその一大プロジェクトに徐々に巻き込まれて、気づけばPayPayの採用責任者になっていました。「採用できなきゃ、事業が負ける」そんなプレッシャーの中、何としてもこの大規模採用を短期間で成功させる必要に迫られたのです。

そこからは怒涛の日々でした。エリアごとに採用目標を設定し、その達成に向けた戦略を1つひとつ検討。特に採用が難しい地方エリアについては、就業人口などのあらゆるマーケットデータを見た上で現実的な応募数や採用数の見立てを作り、目標に届かない分は別の雇用形態(業務委託等)での採用も検討するなど、現場の事業責任者とも常に目線を合わせながら採用を進めていきました。

ヤフーで新卒・中途採用の両方を経験していたこともあって、採用マーケットの構造を理解した上で採用手法を検討できたこと、経営に近い視座で事業を俯瞰できたことが、PayPayの採用を成功に導いてくれました。今振り返るとこの成功体験が「組織を勝たせることが人事の役目」という考え方をより強くさせたのだと思います。

自分が最も価値発揮できる領域はどこか

──PayPayでの採用プロジェクトを成功させた後、ファーストリテイリングへ移籍されたのはどんな狙いが?

ありがたいことにPayPayで1つ大きな成功体験を積ませてもらったので、その経験を他のところでも試してみたいと思ったのがその理由です。ちょうどそのタイミングでお声を掛けてもらったこともあって、ファーストリテイリングへの転職を決意しました。

ここでのミッションは「グローバルIT部門の採用」。ユニクロにおいてもITは事業成長の大きなポイントになっており、そこの採用をより強化しようとしているタイミングでした。ここでも前職で培った採用マーケット構造への理解はかなり役立ちましたね。その情報を踏まえて「どんな人なら採用できそうか」という見立てをすることができましたから。

ただ難しかったのは、「アパレルの会社におけるIT」の捉え方。IT企業でIT人材を募集するのとは異なり、まず「ユニクロ=IT」のイメージを世に浸透させていく必要がありました。またその実現には小手先の表現だけを変えてもダメ。社内の体制や認識から変え、ITエンジニアにとって面白い環境を用意することが必要不可欠です。ファーストリテイリングは歴史ある大企業ですから、その実現には長い年月がかかることは容易に想像できました。

実際に僕が在籍した1年間だけでは、そこに向けた土台・道筋を建てるだけで精一杯。十分に採用を花開かせられたかといえば「NO」です。腰を据えてこのプロジェクトに取り組み続けるか、それとも以前のように急成長フェーズの企業における人事として活動するか。改めてこの問いについて考えた結果、「事業・組織を勝たせる人事」としてグロースフェーズの企業や事業に貢献することが自分の力を最大限発揮できることなんじゃないかと再認識するに至りました。

そんな時にChatworkからお誘いを受け、「もう1度自分なりの価値発揮ができる機会だ」と感じて、2021年2月に入社することにしたのです。

Chatworkを勝たせるために

──Chatworkではどんなミッションを持って活動されているのですか?

今持っているミッションは大きく2つです。

1つ目は、社員数を2022年度末までに約300名まで増やすこと。2021年に社員数が200名を突破したので、1年で100名近くの採用を進める形です。ただ人数はあくまで目安。事業戦略を実行できるだけの人員を確保することが目的です。

実は今Chatworkが置かれている事業環境は、PayPayの時と似ているなと感じています。というのも、コロナの影響で2020年4月頃から働き方改革が急速に進んだことを受け、ビジネスチャットの競合と熾烈な争いが続いています。

世界的な競合サービスもある中で、社員わずか200名ちょっとのChatworkがどう勝ち抜いていくか。そのポイントは「日本の中小企業」にあります。

日本市場の97%を占める中小企業ではまだまだビジネスチャットが浸透しておらず、利用率はわずか14%ほど(*)。そのサービス利用率を増やすためには、中小企業の特性を理解し、それに合わせた事業戦略を立てて実行することが必要です。
* Chatwork依頼による第三者機関調べ、n=30,000

いくら競合サービスが優れていても、そこまで小回りを利かせることはグローバル企業には難しいでしょう。そこに我々の勝機があると考えており、その戦略を実行するためのキーマンの採用が今のChatworkの事業課題です。採用を通じて「勝てるストーリーを作る。」この戦国時代のような環境こそ、自身が一番価値発揮できるフィールドでもあります。

2つ目は、人材・組織開発です。数年前には社員数100名程度だった会社が300名規模になるわけですから、人事制度なども大きく変えていく必要があります。

採用でどうこうできるのは全体の半分くらいなもので、残り半分は採用後のアクションで、入社者が活躍・定着するかどうかが決まります。特にChatworkくらいの組織規模だと「採用後が勝負」だと言っても過言ではないほど。これまで在籍した企業ではこの分野に深く関わったことはありませんでしたが、Chatworkではより手触り感を持ちながらここに向き合えている実感があります。

今のフェーズでは、どちらかと言うと「採用」に重きを置いていますが、ゆくゆくは「採用後」の部分により比重を置くことになるはずです。個人的な感覚としては、「採用できる」ということはもはや前提として、事業・組織課題に応じて採用後の支援もできるようになることが、これからの自分にとっても必要なことだと考えています。

より「人事らしくない人事」へ

──大企業から中小企業、採用から人事制度と幅広く経験された中で、今改めて感じることはありますか?

やはり「採用」は間違いなく今後も重要な要素・能力だと再認識しているところです。なぜならすべての起点は「採用」だから。ここがうまくいかなければ事業成長はあり得ないし、そもそも採用後の課題なども発生しませんからね。特にグロースフェーズの企業においてはそれが顕著です。

なので、Chatworkの事業課題が「入社後」に移っていったとしても、片足はずっと「採用」に置き続けないといけないなと。少しでも離れてしまうと採用マーケットのトレンド変化に気づくことができず、これまでに培った“感覚”が失われる可能性が高いからです。自身の一番の強みを失うわけにはいきませんからね。

一方で、採用がうまくいくといろんな変化が組織に起こるのは事実です。その時には「何が課題で、どうすれば解決するか」といった問題解決能力が求められます。これらは「採用」とはまだ別の能力であり、あらゆる課題に対応できるためのケースを自分の中にため込んで対処できるようにしておく必要があります。ここは自身としても今後さらに伸ばしていかなくてはいけない領域ですね。

あくまで採用という武器を軸にしつつも、そこから派生して出てくる組織課題にどう取り組めるか。これがこれからの自分のテーマになっています。

──最後に、これからの人事はどう在るべきだと思いますか?

人事は「事業成長に対して、人に関する組織課題がどこにあるかを紐解く」役割だと思っていて。まさにHRBP(戦略人事)の考え方ですね。会社にはそれぞれ違う課題があり、まったく同じケースや事象は存在しません。その組織で何が起きているのかを正しく把握する「課題発見力」、起きている課題をどうつぶすのかの「解決力」が求められるポジションであり、その解決方法をより複数提示・実行できるほど市場価値が高い人事だと言えます。

そういう意味でも、「自分はこれができる」という専門領域を1つ持ちながら、そこに付随する領域のスキルを身につけていくことは、これからの人事には必須なのではないでしょうか。

僕がヤフー時代に人事に移った時、当時の代表取締役だった宮坂さん(現東京都副知事)は「人事から会社を変える」と発信し、事業部側のエース級の人材を人事のポジションへ異動させました。今思えば、これはかなり時代を先取りした動きだったなと。

会社によっては閉ざされた世界で仕事をしていることも多い人事ですが、より優秀なビジネスパーソンが人事に着任し、人事の枠を飛び出して事業成長・成功に貢献する方法を考える──そんな「人事らしくない人事」が活躍する世界が、もうそこまで来ているような気がします。

編集後記

「PayPayの採用が失敗していたら、キャッシュレス戦争に負けていたかもしれませんね」と穏やかな表情で話してくれた吉成さん。いかに事業成長と採用が一蓮托生の関係であったかを垣間見ることができた瞬間でした。

今の時代、人事に求められることは年々増え続けています。つい目の前のことで手一杯になってしまいがちですが、「組織を勝たせる」ことを念頭に置くことができれば、これまでとは違う人事のあり方に気づくことができるかもしれません。

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