「パラレルワーカーになるとは想像してなかった」必要に迫られ見つけた理想のスタイル

起業と同時に複数社の人事・採用に関わる杉本さん。ザ・パラレルワーカーのような印象を受けるが、「そうなりたいと思ってなったわけではない」という。優秀な方ほど計画的にキャリアを選択しているイメージがあるが、杉本さんはけっしてそうではなかったと言うから驚きだ。
では、どのような形で今の働き方に行きついたのだろうか。その率直なところを杉本さんにお聞きすることができた。
<プロフィール>
杉本裕樹(38歳)
大学卒業後、新卒1期生として当時20名強の人材ベンチャーに入社。マーケティング、新規事業、新規ユニットマネジャー、キャリアコンサルタント統括マネジャー(部下50名)等を担い、業界トップクラスへの成長をけん引。
2017年にIT・グローバル人材・外国人留学生の就職・転職支援に特化した会社を創業し代表取締役に就任。同時に中小~大手など複数企業の人事・採用に携わっている。
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目次
働き方への考えをガラッと変えた、妻の一言
「このまま子どもが生まれたら、私だけじゃ面倒見きれないよ」
僕はもともと夜遅くまでバリバリ働くタイプで、22時頃に帰ろうとする部下を捕まえて「もう帰るの?」とか言っちゃう人間でした。今なら完全にパワハラ案件ですね(笑)
妻も同じく働きたいタイプなのですが、ある時こう言われました。
「このまま子どもが生まれたら、私だけじゃ面倒見きれないよ」
会社を大きくすることばかり考えてきましたが、この言葉で考えが一変。自分の働き方を見直すようになりました。
それからは役職をいったんすべて外し、定時に帰宅するようにしました。
仕事は社内から自分で見つける形。年収もある程度下がることを了承した上での決断でした。
外の世界に触れ、初めて気づいた可能性
定時上がりを1年程度やってみたのですが、それまで働く時間が長かった自分にはどうしても、もっとやりたいというか、中途半端に感じてしまっておりました。そこで当時はまだ子どもがいなくて余裕があったので、大学院に通うことにしました。
そこは社会人向けの大学院で、実に様々な人が通っていました。起業をした人、新規ビジネスに関わる人……そういう人たちと関わる中で、「働き方っていろいろあるんだな」ってことに気づいたことが、独立のきっかけです。
もともと自分の得意領域である人材と、海外の留学経験を活かして、グローバル領域における採用・受入れ支援や外国籍の転職・就職サポートみたいなことを始めました。創業メンバーはこの大学院で出会った方々でした。
「自分の会社なら、自分の思うように働ける」
この時に感じていたことは、今思えばまさにその通りだったなと思います。
思いもよらぬところからパラレルワーカーへ
人事の業務委託からはじまり、広がった輪
前職時代の同期がとあるメガベンチャー企業の人事部長をやっていて、ちょうどこれからグローバル展開を検討していると聞いていたので、「なんか仕事ない?」と聞きに行ったのが事の発端です。
すると、「グローバルは確かにやっていくけど、目の前の採用に困っているので手伝ってくれないか」と言われました。
自分の事業が立ち上がるまでならありかなと思い、週3日からスタートすることにしました。
お手伝いした業務は多岐に渡り、新卒・中途採用面接、母集団形成の戦略立案やダイレクトリクルーティングの実施、入退社者の面談、ブログの執筆……とにかくマンパワーの足りていない所に助っ人として行っていました。昔からの信頼があってこその関係性だとは思いますが。
これがきっかけとなって「うちの会社も手伝ってくれないか」と依頼を受けるようになりました。
こんなにも手伝ってほしいと考えている会社があるのかと驚きましたね。自分の事業を立ち上げたいという思いも片側でありましたが、複数の企業で人事として携わる事の面白さも感じるようになり、両軸でやっていこうと決め、気がついたらパラレルワーカーとしてのキャリアをスタートしていました。
偶発的なスタートでしたが、今でも意図的にパラレルワークをしようと思っているわけではありません。
ただ、18時くらいには家にいて、子どもが寝る22時くらいまでは一緒にいるといった形で子どもとの時間は大切にしたいなとは考えていています。もちろん会食などでそうできない日もありますが、そこは妻と交代でやれればいいかなと思っています。
自分1人では、仕事を広げていくのにも限界がある
知人や支援先経由で新たな仕事を紹介してもらっているうちはいいのですが、それだけでは限界があります。かといって自分で営業していくのも大変。そこで何か方法は無いか考えていた時にコーナーと出会いました。当時のコーナーのHPは「ちょっと怪しいな」と思ってましたけどね。(笑)
パラレルワークってまだまだ一般的ではないし、だれかが確立しているわけではないので、手探りで方法を見つけていくしかなかったんです。
もともとIT分野が得意だったのですが、コーナー経由では別分野の企業とも多くつながることができました。
またパラレルワークって、いろんな仕事を受けすぎると大変だったり、逆に断りすぎても次に依頼がもらえなくなったりすることがあります。自分1人で営業しているとそのあたりのバランスがとても取りづらいんですが、必要なときにやりたい仕事を紹介してもらえるコーナーのような会社があることはとても心強いと思っています。

やってみて分かったパラレルワークの良さと難しさ
一社だけでは得られない経験と視点がある
企業のフェーズによって、取るべき採用戦略はそれぞれ違いますし、業種・職種によっても採用ノウハウはまったく異なります。
一社に属しているだけでは限定的な知識や経験しかできません。人事交流会などで他企業の人事とつながったり情報交換したりすることはできますが、それはあくまで表面的なもの。実際に組織の中に入ってやってみることに勝る経験はないですから。
パラレルワーカーであれば、複数社に横断してあらゆる経験を積むことができます。さらにはある企業でうまく行った方法を別の企業でも横展開するなど、パラレルワーカーだからこそ提供できる価値もあります。(守秘義務は守る前提で)
こうした俯瞰的な視点を持つことができる点は、パラレルワークの最大のメリット。自分がいまのところ継続してお仕事をいただけているのも、そのメリットを活かせているからというのも一部あると考えています。
一方、マルチタスク能力が求められる側面も
分かりやすいところでいうスケジュール管理。それぞれの企業でアカウントを取ると、グーグルカレンダーが5個くらいになりますよね。それを1つにまとめるともうぐちゃぐちゃに……それらを整理してマルチに仕事を進めていくことが求められます。
個人的には常に各社の状況をキャッチアップしてフィードバックしたいと考えているので、「今日は〇〇会社の日」みたいな形では考えていません。一日の中で複数社の仕事を切り替えながらやっています。当然、頭の切り替えには苦労します。
でも、それは会社員でも同じこと。同時に複数のプロジェクトやトラブルを抱えていますよね。ただ「誰に」というところが変わるだけなので、ある程度ポンポンとスピーディに仕事をこなしている方であれば、パラレルワークの適性はあるんじゃないかなと思います。
パフォーマンスを出すためには、企業との関わり方が大事
パラレルワークがまだ浸透しきってないこともあって、企業側でもどう業務委託を活用するかが成熟していない感があります。パフォーマンスを最大化するためには、仕事を受ける側だけが頑張ってもダメ。仕事を発注する側も受け手が最大限力を発揮できる環境を用意する必要があるなと思うのです。
その中でも特に大事だと思うのが「ゴール設定」と「役割の明確化」。
まず1つが「ゴール設定」。目指すべきゴールが曖昧だと互いにやりづらいです。どの方向に頑張ったらよいかが分からないので、都度進め方を確認する必要が出てきてしまいます。事前に面談ですり合わせたりして、共通認識を持っておくことが重要です。
そしてもう1つが「役割の明確化」。個人的には役割をはっきりしてもらうか、もしくは信頼して全部任せてもらうかのどちらかがベスト。曖昧なのが一番やりづらいためです。
また、慣れてくると任される仕事がドンドン増えていきます。さすがにそのすべてを受けられるわけではないので、できないことはできないとか、期限を延ばしてもらうよう交渉したりすることも重要です。社内に相談しやすい人を作っておくとやりやすいかもしれません。
ただ、意外と「できません」っていうことは少なかったりします。例えば、制度構築の依頼は受けていなかったのですが、突然「リファラルの仕組みを作りたい」と相談され、その会社にフィットするようなリファラル制度の企画を作って提案するということもあります。
また、自分主導で業務を進めていくことも大切です。
たとえば人事がいない会社だと自分からどんどん提案し、決めていかなければすっと待ちの状態になり、成果を出せません。
ただ、基本的には人事部が存在する企業でも変わらずです。
できるだけ自分から提案して上流から主導権を握りに行くようにしています。
付き合って楽しい企業、そうでない企業
(1)レスポンスが遅い
やっぱり仕事がなかなか進まないのでストレスが溜まりますね。
(2)決断力がない
「どうしたらいいですかね?」と相談をもらったから提案したのに、その後何も進まずふわっとしたままなんてことも。任せたいのか任せたくないのかが分からないので進めにくいです。
(3)「顔合わせてなんぼ」という会社
以前キーマン含めて全体にメールをしたところ、「なんやあいつは(メールだけで)」みたいに一部の方からお叱りを受けたことがありました。これは別に好きとか嫌いとかいうわけではないのですが、そういう会社であるということは最初に理解しておきたいですね。
(4)業務委託を単純なマンパワーリソースとしてしか捉えていない会社
お互いにニーズがマッチしていれば良いのですが、僕の場合は一緒に会社を作るメンバーの一員としてコミットするので、同じ温度感だと嬉しいし、やっぱり楽しいですね。

未来をあえて決めない、という選択。大切なのは「家族との時間」と「自身の市場価値」
ずっと今の働き方が続くとは思っていませんし、50歳になっても同じことをしているイメージはありません。かといって組織に属するかと言えばそのつもりもないです。
これからもいろんなところに出入りしている人間であり続けるのかな、とは考えていますが、特に「これを目指す!」みたいなものはないですね。
でも、常に第一で考えていきたいのは「家族」と「自身の市場価値」。
一つの組織のみに属しつつフルタイム雇用ではない選択をすると、現状では昇進の可能性が減ってしまいますよね。僕は偉くなりたいという気持ちはないのでいいのですが、裁量権が減ったり、提案が通らなかったり、また給与が上がらなくなったりするのは由々しき問題。
でもパラレルワークなら自由に時間を使いながら報酬も上げられる。また、実力を認めてもらってこそですが提案や裁量も渡されますし、実績を上げて自身の市場価値も上げられる。パラレルワーク一番のメリットはここにあります。
また、未来をあえてガチガチに決めない良さみたいなものもあるでしょう。
これからも目まぐるしくいろんな変化が起こるはずなので、長期的な目標を決めておくよりも、あえて決めない方が世の中の変化にうまく合わせていけるかもしれません。
ただ、パラレルワークは自分が倒れたら終わりなので、そういう意味では組織に属していたりするほうがいいのかなとも思っています。
もしくは定期的に積み重なるサービスを作っておくとか。こうやってちょっとずつ答えを作りながらキャリアを積み上げていこうと今は考えています。
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