DXプロジェクト成功の肝になる「エンジニア採用」において、社内の意識改革から進めたパラレルワーカー活用事例
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「これからの食卓、これからの畑」を理念に、食に関する社会課題をビジネスの力で解決するオイシックス・ラ・大地株式会社。
昨年2020年には、アマゾンジャパンの成長を支えた星氏がCOOに、大木氏が執行役員兼システム本部長に就任し、「持続可能な事業成長をエンジニアリングで支える」ことを目指して、DX(デジタルトランスフォーメーション)改革プロジェクトを発足しました。
プロジェクトにおいて重要課題となるのはエンジニア採用。そこで2020年10月に、経営が掲げるDXを実現するための採用を成功させるべく、プロ人事であるパラレルワーカーの活用を決意されました。今回はその経緯やこれまでの1年間の取り組み内容について、採用マネージャーの宇野貴嗣さんに、パラレルワーカーも交えてお話を伺います。
■この事例のポイント
・エンジニア採用に対する社内の意識を変革。エンジニア採用の難しさを理解した上での採用の打ち手を実行できるように。
・情報を整理して、エンジニアに対する訴求ポイントを資料化するなど、社外向けのブランディングにも貢献。
<プロフィール>
■宇野 貴嗣(うの たかつぐ)/オイシックス・ラ・大地株式会社 HR本部 人材企画室 人材スカウトセクション
大学を卒業後、エン・ジャパン株式会社での求人広告の営業からスタートして、コンサル、経営企画、人事と経験を積み、新卒・中途合わせて年間で100~200名ほどの採用も実現。
2019年6月より現職にて、エンジニア、デザイナーなどの専門職種、デジタルマーケティング関連人材、バックオフィス、物流や製造など幅広い職種の採用に携わる。
■Aさん/パラレルワーカー
※お名前は非公開としており、文中「Aさん」と表記いたします。
大学を卒業後、エンジニアとして働いたのち、自身で手を挙げて採用部門へ。新卒300人の採用責任者の経験を経て、現在は中途採用、研修などの領域で活躍中。
目次
プロジェクト成功のために進めたパラレルワーカー活用
──約1年前、2020年の10月からAさんがパラレルワーカーとしてジョインされていますね。当時エンジニア採用の課題はどのようなところにあったのでしょうか?
宇野さん:弊社では生産性の大規模な向上のため「DX改革プロジェクト」を進めており、2020年にアマゾンジャパンから弊社へジョインした星と大木が中心となって、2023年末までに大きく11個のプロジェクトを完了することを目指して業務システム周りの刷新を進めています。当時、社内のエンジニアをこのプロジェクトにアサインしていくため、20名ほどのエンジニアを早期に採用することが必要になっていました。
一方で、エンジニア採用はかなり競争が激しい市況です。潮流でいくと、尖った技術だったり、エンジニアドリブンだったり、著名なCTOの方がいる、などの点で魅力付けをする企業が多い中、我々はテック企業ではなく小売業。事業・ビジネスドリブンで考えた上でテクノロジーをどう使っていくか、という思想を持っています。そのためエンジニアの方が転職をする際に、他社との比較検討の土台に上がりづらい、という課題感がありました。
当時はエンジニア以外の採用だけでも毎日5~6件の面接を私一人で担当しているような状況だったので、エンジニア採用における課題解決から実際の採用までを進めていくには他に頼れる方を探すしかないと考えました。そこでAさんをコーナー経由で紹介してもらったところ、ご自身がエンジニアとしての現場経験があり、さらに採用経験も豊富という点で非常にマッチしていると感じ、お願いすることに決めました。
──Aさんがオイシックス・ラ・大地さんの案件をぜひ受けようと思われた背景、ご理由はどのようなものがありましたか?
Aさん:まず一つ目に、課題感に共感したところが大きいです。先ほど宇野さんがおっしゃっていた、テック企業ではない事業会社のエンジニア採用の難しさについては、私自身過去に同じような課題感を持って採用をしたことがあったので、非常に理解できました。また二つ目に、お話を伺って、エンジニアへの魅力付け、母集団形成、面談の進め方などの各フェーズで改善できる部分が見えたことも大きかったです。やはり参画するなら成果を出して貢献したいので、具体的に力になれそうな部分が想定できたことは決め手の一つでした。
エンジニア採用に対する社内の考え方を変えていく
──具体的にAさんにお願いしているプロジェクト内容はどのようなものでしょうか?
宇野さん:エンジニア採用におけるブランディングから、採用戦略の検討、実際に母集団形成するところまで幅広くお願いしています。
ここで言うブランディングというのは、外向きだけではなく、社内に向けた意識改革も指しています。例えば、開発現場の各責任者との定例ミーティングを通して、エンジニア採用の市況であったりとか、エンジニアから見た時に弊社がどのような対応をするべきか、などを外部の目線から伝えてくれていたり。Aさんにジョインいただいてから、現場の意識もかなり変わってきていて、これまではスカウトに返信をいただいても情報が少ない方はお会いしない、ということがあったのですが、いまは基本的には興味を持ってくださった方には全員カジュアル面談を実施しています。
それ以外にも、エンジニア向けの採用ピッチ資料の作成や、スカウト媒体の活用、新たな採用手法の提案などもしていただいています。採用手法に関しては、もともと使っていた媒体の活用をまずAさんにお任せしたのですが、ある程度アプローチしきった感じもあったので、Aさんの中でうちの状況に合っているものを調べてもらいました。例えば分かりやすく言うと、機能的にはすごく簡単でアプローチしやすいけど返信率が高く見込めなさそう、逆にアプローチには時間が掛かるけどコミットすると高い確率で採用ができそう、などを細かく分析して、オイシックス・ラ・大地だったらどれを使うべきかを判断してもらいました。
実は、当初はスカウト送信業務をお任せするという想定だったのですが、Aさんは率先して色々やってくれていて、いまは本当に土台をつくるところから頼らせてもらっています。ちょっと甘えすぎているところもありますが(笑)
Aさん:スカウトを打って終わりの関わりではなくて、成果を出したいという気持ちが大きいので、そのために必要なことを見つけては対応していくような形で動いています。
まずスタートして最初の2〜3週間くらいで、「書類選考の時にここはあまり見ていないんだな」とか、「カジュアル面談でエンジニアとの接点をつくっていくという考えがあまり浸透していないんだな」などが分かっていったんですよね。
このままだと上手くいかない、現場の方にもエンジニア採用の難しさをご理解いただかないといけないと感じたので、宇野さんにお願いして現場の方とのミーティングをセッティングしてもらいました。現在も毎週、各現場の責任者と定例ミーティングを実施しています。接点を重ねる中で変えていけている部分が大きいので、宇野さんに接点を調整していただけたのは本当に有り難かったです。
また、そこで現場の責任者から会社・組織としてのミッションを直接聞かせていただく中で、こういったことが刺さりやすいんじゃないか、もっとこういう風にしたら他社との差別化になって伝わるんじゃないか、というのも徐々に見えてきたので、採用ピッチ資料の作成を提案しました。現場やデザイナーの方も巻き込んで完成させていただき、現在はスカウト時や面談時に活用しています。
どれも最初から取り組む内容を決めていたというよりも、常に課題を見つけては「こんなことをやってみたらどうですかね?」と宇野さんと壁打ちをして、良さそうであれば情報収集をして提案をする形で進めています。
意識改革を成功させ、社内に根付かせていくには
──これまでの1年間の取り組みを振り返って、どのような部分に特に成果を感じていらっしゃいますか?
宇野さん:Aさんがおっしゃっていたように、現場との接点を直接持って、その中でAさんが具体的に提案・実行してくれることを通して、徐々に現場の理解が深まっています。個人的には、これが一番大きい成果だと思っています。
客観的に外部の方から話してもらう方が伝わりやすいこともあると思っていて、Aさんはそれを理解したうえで、非常に丁寧に現場とコミュニケーションを取ってくれています。
ちょうど2020年末に大木がアマゾンジャパンからジョインして、彼自身も「マネジメントレイヤーはプロジェクトを進めるのも大事だけど、自分たちと一緒に働く人をどうやって見つけるかも大事だから、そこのミッションをちゃんと認識してくださいね」という考えを持っています。さらにAさんのように外部からそういうことを提言してくれる人がいたので、このタイミングが重なったことで、特にマネジメントレイヤーの意識が変わりましたね。これまではどちらかというと「良いメンバーを集めるのは人事の仕事」と捉えられていた部分もあったのですが、いまは忙しい中でも各責任者が採用のための時間を毎週確保していて、人や組織、採用に対する意識が大きく変わったと感じます。
Aさんに関わっていただいて、こういった目に見える数字では表せないところに大きな価値を感じています。
Aさん:現場の「自分たちでエンジニアの仲間をつくっていく」という風土をつくり上げることが一番重要だと考えています。「自分たちのエンジニア組織ってここが課題だよね。ここを変えないといけないから、こういう人に来てほしいよね。」というものを現場が出し合って、主体的に採用に関わっている状態。そうやって、人事がいなくても自走して自分たちの仲間づくりに取り組んでいけると、採用をきっかけに組織を良い方向に変えられるのではと思います。
私自身、過去にエンジニアとして働いていた時に、「開発だけしていれば良い」というスタンスになってしまうと組織は良くならない、と強く感じていました。現場の全員が「組織をより良くしていこう」というスタンスになると本当にいいエンジニア組織になると考えていて、いま私がオイシックス・ラ・大地さんに関わっていることが、現場の意識が変わっていくきっかけになるといいなと思います。そして最終的には、私が要らなくなる状態に持っていくことがゴールだと思っています。
外部人材活用が持つ可能性とは
──パラレルワーカーをはじめ、外部人材を活用することを宇野さんはどのようにお考えですか?
宇野さん:私個人としてもオイシックス・ラ・大地の風土としても、あまり「外部の人」という扱いをしないんですよね。もちろん権限をすべて委譲することはできませんが、きちんと情報共有をしたり、どちらが発注者で、みたいな見方をせずにパートナーとして付き合っていく関係性を大切にしています。
Aさんは作業的にやっているわけではなくオイシックス・ラ・大地の採用にコミットしていて、お願いしている以上のことを提案してくれたり、本当に本気で私たちに関わってくれています。そういう方が一緒にやってくれるのであれば、こちらも応えないと失礼だと思っていて。「お願いしたから、全部Aさんの責任か?」というとそうではなくて、少しでもAさんがやってくれたことが結果に結びつくように、弊社も動いていくべきだと思っています。
そういう風にきちんと向き合って関係性を築けていれば、雇用形態に関わらず、パフォーマンスを最大限に出していただけると思います。
パラレルワーカー、特にAさんのように本業がある中でわざわざ業務時間外にコミットしてくれる方って、目的意識や思いがすごくあると感じています。そういった方に入っていただくことで、自分たちが持っていないナレッジを知ることができたり新しい視点でのアドバイスをもらえるので、個人的には、外部のプロフェッショナルにお願いするという選択肢は非常に有効だと思っています。
編集後期
1年間のお取り組み内容をお伺いすると、お話にあった社内の意識改革だけでなく、社外のエンジニアに向けた情報発信、採用手法の選定、採用フローの改善、日々のスカウト業務の改善・・・と多岐に渡るものでした。これらはすべてエンジニア採用を成功させるため、ひいては社内で掲げているプロジェクトを成功させるために、宇野さんとAさんが試行錯誤しながら進めてきたことです。
ただ業務を委託するのではなく、ゴールを共有することで共通の目的にコミットし、課題整理からお任せできることが、プロフェッショナルなパラレルワーカーの強みであることを感じることができました。