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企業インタビュー

人事不在の急成長スタートアップにおける採用を成功に導いたパラレルワーカーの取り組みとは

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スタートアップの拡大期(シリーズA~B)における採用活動は、一般的に困難を極めることが多いものです。専任人事を置くほどの人的余裕がないこと認知度や待遇が上がり切らない状態で採用を進める必要があることなどがその要因としてあります。

今回取材に協力いただいた株式会社ディーアンドエムも、2015年の設立後から急拡大してきた企業です。専任の人事がおらず、担当の杉村さんがさまざまな責務を兼任しながらの活動に限界を感じていたところに、プロ人事である森暁子さんが加入したことで状況は一変。週10件近く面接が設定できるようになり、そこから採用成功まで大きな成果が出ています。なぜここまでの変化が生まれたのでしょうか。そのプロセスについてお聞きしました。

<プロフィール>

■杉村/株式会社ディーアンドエム
ネット事業などの企画、システム開発を経て、インターネット広告代理店へ。2015年の創業期からディーアンドエムに参画し、ネット広告、アドテク領域での急速な事業成長を牽引する傍ら、採用をはじめとする人事業務を兼任。

■森暁子/パラレルワーカー
新卒でWEB系ベンチャーへ入社し、新規事業立ち上げ・営業・後輩育成などを経験。その後、株式会社リクルートHRマーケティング(現リクルートジョブズ)に移り、店舗運営されている企業・IT系企業を中心に営業として実績を上げ、人事代行・採用コンサルティングを行うフリーランスとして独立。人事不在の組織の中で採用を推進する“1人(ひとり)人事”を得意とし、ベンチャー企業を中心にIT・WEBマーケティング・EC・SaaS・人材・不動産などの業界で、上流工程である採用戦略からGreenやビズリーチ、Wantedly等の運用、エージェントコントロール、リクルーターなどの実務まで幅広く支援。

プロ人事(パラレルワーカー)活用に至った背景

──元々は杉村さんがお1人で採用活動をされていたと聞きました。

杉村さん:そうなんです。2015年にディーアンドエムに参画して以来、採用は私が中心となって進めてきました。当初は未経験・第二新卒層がターゲットだったこともあり、なんとかやってこれたのですが……。いよいよ社員数が50名を超えてマネジメント層の採用も必要になってくると、採用難易度がグッと上がり、うまくいかなくなってきたのです。

問題は大きく2つありました。1つ目は「工数問題」。私が採用にかけられる工数には限界があります。とはいえ、社内で専任の人事担当者を立てるほどの余裕はありません。そもそも通年で採用活動をしているわけではないので繁閑の波も大きく、貴重なリソースをそこにベタで張ることはどうしてもできませんでした。

そして2つ目は「ノウハウ問題」。仮に社内でリソースを割けたとしても、その方が採用に長けているとは限りません。しかも採用ターゲットはマネジメント層。一筋縄ではいかない採用を成功させるには、それ相応のノウハウや知見が必要だと感じていました。

ちょうどそんな悩みを抱えているタイミングでコーナーのサービスを知り、「これなら2つの問題を同時に解決できるかも!」と、パラレルワーカーの方に協力してもらうことを決意。本業のWebマーケティング領域では知り合いのツテで業務委託契約をすることもありましたが、管理部門では今回が初めて。当社の状況・課題を認識した上で、それに適した経験やスキルを持っているプロ人事の方と引き合わせてもらえるのはとてもありがたいことでした。

──森さんはこれまでもフリーランスとして活躍されてきましたが、今回ディーアンドエムのプロジェクトに参画しようと思ったのはどんな理由からですか?

森さん:かれこれ10年以上フリーランス人事としてやらせてもらっていますが、お仕事をお受けする上で大事にしていることが3つありまして、そのすべてに合致していたことが決め手になりました。

① 成果を出せそうか

業務委託として関与する以上、成果を出すことは最低条件です。そのため、クライアントから求められている成果が何かを見極めた上で、自分がそれに応えられるだけの経験や知識を持っているかは必ず確認するようにしています。私自身、人事不在の組織の中で採用を推進する“1人(ひとり)人事”を得意としていることもあり、ディーアンドエムさんのお役に立てることは多いだろうなと当初から感じていました。

②お互いのスタンスがマッチするか

成果を出すためには、クライアントとパラレルワーカーの間でいかに良い協力関係を作れるかがとても重要です。例えば、互いに変にお客様扱いしてしまうとどうしてもスピード感に欠けてしまいますし、言うべきことも言えなくなってしまいます。その点杉村さんは、最初のミーティングから「さん付けで呼んでくださいね」「御社とか貴社とかじゃないよね」と話をしてくれて、社員と変わらない接し方をしてくれたことを覚えています。

③自分のスキルをアップデートできるか

成果を出すのは大前提として、その上で自分にとって新しいチャレンジができるかどうかも大事なポイントです。ただスキルを切り売りするのではなく、このプロジェクトを通じて経験値を高めることができれば、結果的にクライアントにもより大きな価値を提供することができます。今回のケースで言うと、ミッションはスタートアップのマネジメント層採用、かつ競争環境が激しいデジタルマーケティング人材。ここで成果を残すことができれば、私の中でも大きな自信になるだろうと考えていました。

「短期的な成果の可視化」が良い関係性をつくる

──森さんがジョインして、すぐに良い変化が出始めたようですね。

杉村さん:本当にすぐ目に見える変化がありまして。最初の1週間で、これまでは会えなかったようなタイプや経歴の方ともお会いできるようになったんです。「こんな短い間で森さんどうやったの!?」とこちらが驚くほど。何かスーパーテクニックでもあったんですか?(笑)

森さん:内緒です……というのはウソなのですが(笑)。実は「できるだけ早く成果を出す」ことにこだわっていまして、具体的には「ジョインしてから2週間以内に何らかの良い報告をする」ことを目指して、自分の中でスタートダッシュを切っています。というのも、外部から加わったパラレルワーカーを受け入れてなかなか成果が出ない状況が続いてしまうと、クライアント側はもちろん不安になりますし、パラレルワーカー側も追い詰められてしまうからです。

今回のケースでは、お任せいただいた採用ポジションをざっと見た上で、より決定を出しやすいものにまずは注力して、なるべく早い段階で成果をお見せできるように動きました。普通ならまんべんなく集客できるようにして、企業認知を高めて……と地道にやるところですが、早く成果を出すことで互いに進めやすい状況を作ることを優先した形です。

ちなみに「成果」と言っても、さすがに1週間で内定承諾まで持っていくことはできません。でも、面接設定数を増やしたり、マッチする経歴の方から応募意思を獲得したりなどは比較的早い段階でも可能です。小さな成果でもいいので、ちゃんと実感してもらえるようなものをいくつか用意できれば、クライアントとしても「動き出してくれてるな」「ちゃんと成果出してくれそうだな」と思ってくれるはず。それを繰り返していくと、「もう任せても大丈夫」という空気感になる瞬間が来るので、そこからはさらにやりやすくなりますね。

杉村さん:なるほど。確かに最初はそんな不安があったかもしれませんが、森さんがすぐに見える成果を出して報告してくれたので、一気に安心したことを覚えています。お任せするミッションが中長期的なものだったとしても、そこに向かう過程での小さな成果を積み上げてくれているのが見えれば、安心してお任せできますからね。

「任せても大丈夫という空気感になる瞬間が来る」と森さんが言ってくれましたが、実際に当社からも森さんに相談することが徐々に増えていきました。最初は「このポジションを採用してください」とオーダーを出していましたが、最近は「このポジションで採用が難しいようなら社内異動を検討して、他ポジションで採用を進める方が良いだろうか」とこちらから相談するようになってきています。

パラレルワーカーならではの客観的な視点

──着実に成果を上げる中でも、マネジメント層の採用はやはり苦労されたようですね。そこはどのように対処されてきたのでしょうか?

杉村さん:これは今に始まったことではありませんが、急成長しているとはいえやはり業界内ではまだまだ無名な会社ですし、財務的にも大手が提示する給与水準には届きません。そういった面でも採用力の差は正直あります。そこは冷静に見ているつもりではあるのですが、それでも自分たちのレベル感や基準を読み違えることは多々あるし、ここは妥協するけどここは譲れないみたいな点をどこでバランスとるかも自分たちだけで考えるのは難しいものです。

でも、森さんが入ってくれたことで「客観的な視点」が社内に持ち込まれたのは大きかった。私たちが提示できる条件の中で、どれくらいの層に振り向いてもらえそうか。また自分たちでは気づけない魅力や足りない点についても気づかせてもらえる機会が多くあって、その情報を元に、よりベターな選択肢を選ぶことができるようになっていると思います。

森さん:これは企業がパラレルワーカーを活用するメリットの1つだと思っています。そもそもパラレルワーカーは外部人材としてクライアント企業を客観的に見ながらも、競合企業や応募者側の視点も持った上で採用を進められる特殊な立ち位置にいます。だからこそ気づくことやできることがあると思っていて。

例えば、ディーアンドエムさんでは1次面接から社長が出てきてくれるんですが、これは一般的にはあまりないことです。でもディーアンドエムさんでは当然のこととして運用していたので、社内だけだと気づけないんですよね。しかも、今採用ターゲットにしているマネジメントクラスの人材は、社長自らが時間を取ってくれる希少性を理解してもらいやすい層なので、そこをスカウトメール等で全面的に訴求するようにしたところ、狙い通り一気に応募者層が変わりました。

杉村さん:あと森さんは、応募書類の見立てもうまいですね。やっぱり経歴が素晴らしい方はどの会社も欲しがるので、結果的に採用にまでつながらないケースも多くて。そこで森さんは、そういう分かりやすい優秀人材だけでなく、一見書類上では気づきにくい方であっても魅力を見つけて、「この方もぜひ見てください!」と打診してきてくれるんですよね。

それが実にいいところをついていて、実際にお会いしてみると選考がうまく進むケースがいくつもありました。やはり採用競争が激しい業界ですから、そうして可能性を広げることが成果に繋がっているのだと思います。

外部人材活用が持つ可能性

──今回の事例を通じて、外部人材活用にどのような可能性を感じていますか?

杉村さん:世の中的にもこれから外部人材活用が必須になると感じています。「最適なリソースの調達」と言ってしまうと少しドライに聞こえるかもしれませんが、経済合理性を考えたらスタートアップが使わない理由はないんじゃないかな。ただ関わってくれるのは人なので、そこは実際に動いてくれる人の感情に寄り添って進めるのが大事だと思います。

また、特に我々のようなスタートアップでは1名採用しただけでも会社が大きく変わります。「1年後くらいになるかな」と思っていたプロジェクトが、ある方の入社ですぐに実現したり、反対に人が採用できなくていつまでもやりたいことが実現できなかったり。まさに採用は事業展開に直結する大切な取り組み。そこにプロの知見をスポットでも借りられることは、スタートアップ経営において大きな力になることを今回実感しました。

森さん:ディーアンドエムさんは社員60名ほどの会社なので、1名の入社者の影響が非常に大きくなると思います。私自身も「1/60になる方の採用を手伝っているんだ」という認識を常に持って採用に取り組んでいます。せっかく入社いただいても、その後うまくマッチしなければ組織に与える悪いインパクトが大きいですからね。反対に「すごく活躍している」と聞くととてもホッとします。

今回、一定の成果を出せたとはいえ、まだ採用枠を埋めきれていないポジションがいくつかあります。中には前任者が担当していた頃から数年間採用できていないポジションも。そこをどうやって突破していくかが、これからの課題ですね。正直、エージェントもお手上げに近いほど難易度の高いポジションではありますが、そこにチャレンジし続けることがクライアントへの貢献になりますし、自身のスキルアップにもつながると思うので。

また、少し大きな話にはなりますが、私が頑張って成果を残すことで、1社でも多くの企業が「外部人材活用っていいな」と感じてもらえるようにしたいです。そうすればもっと業界が盛り上がって、パラレルワーカーとして働きたい人が今以上に増えるかもしれません。そんな良い循環が広がっていくように、これからも尽力していきたいと思います。

編集後記

「スタートアップ企業のマネジメント採用」という難しいミッションに対して、わずか半年で複数名の採用成功を実現した今回の事例。その結果だけに注目しがちですが、「いかに早く見える成果を上げるか」にこだわって信頼関係を構築したその過程に、大きなポイントがあるように感じました。

クライアント企業とパラレルワーカー。双方が互いに工夫して協力関係を築くことは、外部人材活用においては必要不可欠です。社外人材を巻き込む前提で組織開発を進めていくことが、これからの企業や人事にはより求められるのではないでしょうか。

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