「全員が瞬間最大風速を記録し続けられる組織」をつくるために、経営や事業と向き合い続けるパラレルワーカー
「“社員みんなが瞬間最大風速を出し続けられる組織”に向け、ハンズオンにこだわった活動を続けています」
そう話をしてくれたのは、自身で起業したCHEMI株式会社を含め4社の経営に関わる内藤 貴皓さん。ベンチャー企業で人事として修行を積み、採用から各種制度設計まで幅広くお任せできるプロのパラレルワーカーとして、「corner」へご登録いただいています。
内藤さんはどのように人事としてのスキルを磨いてきたのでしょうか。パラレルワーカーとして、複数の会社を経営しながら外部人事として活躍されている現在についても伺いました。
<プロフィール>
内藤 貴皓(ないとう たかひろ)/CHEMI株式会社 代表取締役
1988年生まれ、静岡県出身。大学在学中の20歳から、大手教育企業で個人向けの営業職としてキャリアをスタート。2012年4月に新卒入社した出版社では、有料誌やWebメディアを扱う広告営業として社内の売上高ギネス記録を更新。管理事業推進部へ異動し、新卒採用や研修育成制度設計業務を担当後、2016年2月に株式会社FiNC Technologiesへ入社。人事戦略部にて中途採用(エンジニア/デザイナー)、評価制度設計業務、代表取締役室にて3名の代表取締役秘書、資本業務提携等に4年間従事し、組織拡大に貢献。その後、ベンチャー支援・ファンド運営を行うWEINグループに創業メンバーとして参画し、管理部門とコワーキング事業の立ち上げを行う。2020年10月に創業、2021年1月にCHEMI株式会社を設立し、代表取締役に就任。▶このパラレルワーカーへのご相談はこちら
目次
人事としての土台を築いたベンチャー時代
人生の転機となった、営業から人事へのキャリアチェンジ
元々のキャリアスタートは営業でした。大学2年生で大手教育企業の営業インターン、その後新卒で出版社の営業として働き、一定の成果を残すことができました。
そうやって結果を残していくと、会社への愛着心も強くなるんですかね。「もっとこの会社を良くしたい」という気持ちが徐々に大きくなり、より経営に近しいポジションへの異動を希望しました。
営業から人事へのキャリアチェンジを果たしてからは、新卒採用や研修・育成の制度設計に関わるようになりました。個人プレーの営業と違い、巻き込まなければならない人数の多さと、自分だけではどうにもならないことの多さに衝撃を受けたことを今でも覚えています。
そこから人事としてのスキルをさらに高めたいと思い、株式会社FiNC Technologiesへ転職。労務含めてわずか3名しかいない人事部門で、エンジニアやデザイナーなどの専門職採用、裁量労働制やフレックス制度の導入、IPOに向けた制度設計など、ベンチャーらしく幅広い領域を経験させてもらいました。「自分の強みはカルチャーづくりで発揮される」ということに気づいたのもこの頃です。
「人事」のイメージを変えた、尊敬できる上司との出会い
株式会社FiNC Technologiesで過ごした濃密な4年間が、自身の人事としての「土台」になっていると感じているんです。中でも社長直下で秘書業務や資本業務提携を経験した後に再度人事戦略部へ異動になった際の上司から学んだことが、今の人事・仕事観を大きく形成してくれたと感じています。その方は人事のトップでありながら、数十億規模の営業組織の構築やファンドレイズなどもできる方でした。メディアに出ないから知られていないだけで、露出していたらきっと注目されていたでしょうね。
その上司と関わるまで、人事職に対するイメージは「ニコニコしていて人当たりの良い人」くらいの印象でした。それが「本質をつかみ、人の側面から事業を前に進める人」こそが人事であると、捉え方が180度変わったんです。元々、採用だけを手段的にやっていてはダメだ、もっと本質から考えて、事業を文脈にしなくては、と感じていた自分にとって、この気づきは大きなターニングポイントでしたね。
そこから労働法なども学び始め、力学的な部分を考えるようになってからは、より高度な人事領域にも挑戦できるようになりましたね。
子どもの頃から夢だった起業。さらに人事の本質へ
ハイレベルな環境で再発見した自分の価値
株式会社FiNC Technologieでの濃密な4年間を経た後は、ベンチャー支援・ファンド運営を行うWEINグループに創業メンバーとして参画しました。その後は組織体制の大幅変更をきっかけに、幼い頃から漠然となりたいと思っていた経営者を改めて目指そうと決意し、独立に至った次第です。
実のところ、株式会社FiNC Technologieにも独立前の修行という気持ちで挑んでいたところがあります。ですが、いざ入ってみると、自分が起業や人事を語るのがおこがましいくらい優秀な方が大勢いて、圧倒されました。自分はどんな価値発揮ができるのかを考えた際、「自分の強みを活かしつつ、そうした優秀な能力を持つ方たちと一緒に働く」形がベストだと思ったんです。能力溢れる人たちと一緒に働いたからこそ「まずは起業してみないと経験できないこともある」と独立への想いを新たにできたのではないかと感じています。
クライアントの勝ち筋をリードするために、まず自分が行動する
そもそも自分は天才型ではないと思っているんです。でも、誰かの力を借りればできることも増えるし、それこそが組織でやる意味だよね、と。そこで、半ば個人事業主の延長のような形で設立したのが今のCHEMI株式会社です。現在は仲間の力も借りながら、クライアント組織の課題解決を人事の側面から行っています。
自分の強みは大きく2つあると考えているんです。1つは「経営視点を持ち、相手以上に成果に本気になれる」こと。もう1つは「関わった組織の勝ち筋をいくつもイメージできる」こと。
前者はベンチャー在籍時代に培った後天的なもので、後者は生まれつき持った才能かなと思っています。ただ、どれだけ勝ち筋を見つけて専門的なことをクライアント企業へ提言しても、エグゼキューション(実行)が伴わなければ何も前に進みません。だからこそ口だけ出すのではなく、自身がちゃんと行動にもコミットしてイメージした勝ち筋の先頭を切り開くことを大切にしています。
株式会社コーナーと出会ったのも、ちょうどこの独立のタイミングでしたね。当時はフリーランス人事向けの業務委託案件はほとんどなくて、しかもまだリモートワークも浸透していない時期。数少ない業務委託求人に片っ端から応募していた時にコーナーの存在を知り、登録したらすぐに案件を紹介してもらえて驚きました。さすが人事一本でやっている会社だな、と。あのときのコーナーとの出会いが、今の立場確立や取引先との出会いにもつながっていると感じています。
1社にフルコミットした経験が、パラレルワークの礎に
企業もカルチャーも、常にアップデートが必要
自分の強みは「カルチャーづくり」ですが、これは人事としても重要な本質にあたるものではないかと思っています。というのも、会社は人と同じようにどんどん成長していく「生き物」であり、そこに合わせてカルチャーも随時変わっていくべきものだと思うからです。
「全員が瞬間最大風速を記録し続けられる組織」をつくるために、ビジョン・ミッション、事業戦略という上位概念から解像度を高めていき、その達成のためには何が必要なのかを常にその組織体制や環境と照らし合わせながらアップデートしていく──これは採用などの手段だけに終始していては関与することができない“根っこ(本質)”の部分です。
現在、私はCHEMI株式会社を含めて4社の経営に関与しています。それぞれ取り組みこそ違いますが、根っこにはカルチャーづくりが共通のテーマとしてあると感じています。ここには引き続き関わり続けながら、今後は経営者として関係する会社を伸ばしていくことで、より価値を発揮できる領域を広げたいと考えています。
パラレルワーカーとして、真の意味で実力をつけるためには
たまに「外部人事として、よく複数の企業に並行してコミットできますね」と言われることもあるのですが、むしろ複数の会社に所属することで見えることや気づけることがたくさんあるんですよね。1社しか関わっていない場合。ケースや取り組みもそこだけのものに限定されますが、複数の企業と同時に関わることで視野がぐっと広がり、取り組みの幅も桁違いとなります。4社関与すれば、喜びも学びも4倍って感じでしょうか。
ただし「ただパラレルワークすれば経験値が4倍になる」というものでもありません。少なくとも、まずは1社でフルコミットして一連の人事業務を経験しておかないと、浅く広く経験値が積み上がるだけ。本当の意味で実力がつかないんですよね。これはあくまで例えですが、「カレーを作る」といっても、あらかじめ切られている材料と市販のルーを用いて作るのと、ニンジンを育てて掘ってくるところからやるのとでは雲泥の差がある。物事の一連を起点から経験してこそ、全行程に対する満足度も上がるんです。
私もベンチャー時代の上司から人事の本質を学び、あらゆる領域にコミットできた土台があるからこそ、今の働き方でもレバレッジが効かせられるようになったわけで。それがなければ自身の強みにも気づかず独立すらできてなかったかもしれません。できればフォロワー数が多いだけではなく、事業会社など幅広い領域を経験した人のもとで、人事というキャリアを深堀りしつつ磨くといいのではないでしょうか。
まずは今の会社などで目の前のことに全力で取り組むこと。これがその後のキャリアにも大きく活きると思います。
編集後記
「事業視点で考えられる人事」になる重要性は、今や多くの方が感じていることだと思います。しかし、どうすればそうなれるのかをイメージしきれていない方も少なくないのではないでしょうか。「まずは今の会社にフルコミットを」という一見パラレルワークとも逆行するようなこの内藤さんのお話が、より本質的な人事になるための大きなヒントになるように感じました。
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