組織変化に対応する、規模拡大に合わせた人事施策の考え方とは?
【対談】組織ステージやタイプごとに考える「強い人事制度」とは? #3/3
スタートアップの人事責任者を経験した3名を招き、「組織規模やビジネスモデルごとに考える、強い人事制度とは何か?」というテーマでトークセッションを開催しました。
全3回に分けてお届けする本セッションのレポート、 最終回となる#3/3では、組織拡大にどのように対応していくか、社員数が増えていく過程において人事が取り組むことについてご紹介します(モデレーター:株式会社コーナーCOO 小林 幸嗣)
▽参加者プロフィール
目次
人事の判断軸がコスト意識に切り替わるタイミング
小林:人事の指標として、社員一人当たりの売上、生産性への意識が大切という話が前回上がりましたが、コストを下げるか、投資をして売上最大化していくか、ステージによって異なりますよね。
組織規模の観点で人事制度を考える時にも、フェーズによってコストに注意すべきか、売上を最大化すべきかみたいな事が出てきそうな気がします。10人以下のスタートアップって、削るコストがそんなにない。どうしても人事施策としても、投資という形になりますよね。
西島:それは僕もすごく思います。アーリーフェーズはまずは売上をちゃんと立てること、となっていることもあり、現場にコスト意識って言っても難しいだろうなと思っています。だから順番とかフェーズというのは確かにあるのかなと思いましたね。
小林:西島さんはベルフェイスが10人ぐらいの時からいらっしゃって、ステージ別で判断軸が変わると思うのですが、投資の考え方からコスト意識に切り替わるような変化ってありましたか?
西島:ありましたね。明確に覚えているのが50人ぐらいの時に、売上が踊り場に出ると言うか今までの伸び率よりも少しゆるやかになるタイミングがあって、そのときに「ハイパフォーマー」「ローパフォーマー」みたいな話や、コストって言葉が初めて出たんです。
だから50人超えたタイミングで、N数も増えてきたこともありますし、チームごとの「どんな人がハイパフォーマーなのか?」ってところをコストを含めて見に行った感じですね。
組織の不確実性に向き合う人事の取り組み
小林:人事の判断軸を考える時に、フェーズごとの観点も必要ですよね。
木元:そうですよね。組織は当たり前ですが不確実性が高かったりするので、その不確実性に向き合う柔軟性をどれだけ持てるかが大事。フェーズごとに組織設計や人事制度を見直すことが必要だと思います。
例えば、既存事業が安定化してくるタイミングは一つの組織の転換ポイントになりますよね。 感覚的には、事業が安定成長のフェーズに入ると、そこからMBOを取り入れるケースが多いように感じます。
ただ、僕オライリーの本が大好きなのですけど、『両利きの経営』が大切だと思っていて、最近は既存事業が伸びて安定フェーズに入ってきても、プロダクトのライフサイクルも短くなっているので、やはり違うイノベーションを起こしていく必要があると思います。
大きい組織でもイノベーションを起こしていかないといけないから、「安定フェーズはMBO」というフレームではなくて、個社ごとに変えていかないといけないところだと思います。
小林:ちなみに多くのイメージでは、組織規模もフェーズに比例して大きくなる前提だと思いますが、例えば最近だと、上場時に社員20名ほどだったり、会社の考え方として業務委託のメンバーで伸ばすケースも増えていますよね。
木元:おっしゃる通りですね。
小林:その場合に、業務委託における人事制度をどこまで考えるべきか、というのもあると思います。雇用形態にもよっても変わってきそうですか?
木元:そうですね。 最近考えているのは、OKRとホラクラシー組織は、業務委託メンバーが多い組織に相性が良いと思っています。
初期フェーズの会社で「業務委託だからあなたはここからここまで」ときっちり分けている会社ってあまり無いと思います。一定の規模にならないと、そういうルールは出来てこない。であれば、基本的に社員と同じ人格で考えられると良い思っていて、OKRにするとコミットメントのKeyResultが分かりやすいので、業務委託との相性が良いと思います。
マネジメント機能は必要か
小林:よく“あるある”で、大体20名規模や30名規模で制度を考えだす姿ってあるじゃないですか。人事制度やマネジメントをいつどのように設計するか、何をもって適切と見るのかって結構、難しいと思います。
西島:難しいですね。ベルフェイスの時、フェーズの変化はあまり意識していませんでしたが、人数ベースはものすごく意識していました。
「1人あたり、メンバーは何人ぐらいまで見られるか」は、ものすごく気を使っていて、 最大でも一人のマネージャーがメンバーとして見るのは6,7人と上限をつけるなど、 そのあたりはすごく気にしていました。
木元:そうですね。結局、コミュニケーションをどれだけスムーズに行えるかが組織開発のひとつだと思います。組織が大きくなり、複雑になるにつれて希薄になり、組織の行動力が失われてしまう。
コミュニケーションという観点でいくと、やはり人数が多くなるとしづらくなる。「人数」は組織開発を行っていく上で一つの定義になるのかなと思います。
小林:組織開発としてやる意義、仕組みやルールなどの制度でどのように解決するかですね。確かにコミュニケーションパス的な考え方で、6人が限界だってところから考えていくのはありますよね。
西島:ベンチャー企業のコンサルに入る場合、人数が増えている時に次何が起きるのかを知りたい経営者って結構いる。(一同、共感)
大体30~50人とか、人数が増えていくと必然的に社長の声が届きづらくなっていくから、初めてそこで人事制度が必要になったりしますよね。
「社長の声が届かない」にならないために
木元: 組織が大きくなるにつれて階層ができると、 経営陣はミドルで会話するようになりますが、ヒエラルキーや組織体制があったとしても、コミュニケーションや情報量ってところをメンバーまで統一するために、組織開発やコミュニケーション設計をするというのがありますよね。「経営者が何考えているか分からない」という声が出始める前に。
レック:人数によって、常にCEOからの声が届くようにする工夫が必要ですよね。
西島:そうですね。「社長が何を言っているのか、分からないです」や「会社がどういう方向に向かっているのか分からないです」ということに対して、通訳者が絶対必要になってくることは実感値としてあります。
木元:そこで組織コンディションあまり良くないから、福利厚生を良くするなどの方向に行くと、組織はより混乱しますよね。(一同笑い)
だからこそ、最初に話していた「人事が何を指標にするか」 が大事だと思っていて 、「だって僕らの指標は従業員の満足度だ」 に対して、 「いや、それ違うでしょ」というズレに気付かないといけない。
レック:ミドルメンバーが通訳者になるということですよね?社長とミドルの接点を増やすと、ミドル層が育ちます。ミドル層が育つと(社長の)分身が出てきて、ミドル層からメンバーに落ちるような意味です。これはフェーズ毎によって使い分けていかないといけないですが、100人ぐらいまでだと、それでうまく行く気がしますね。
「社長ランチ」「経営方針を社長から聞く場」なども制度として入れたり。
西島:今であってもベルフェイスは月に1回、月次定例は全社員集めて、社長や各事業部長から状況話してもらいます。そういう無理やりにでも、場を設けていったら良いってことはあるかもしれませんね。
木元:僕はSNSを使っていました。フェイスブックで1ヶ月に2本は必ず、経営メッセージを今会社にいるメンバーに対して発信しています。これから入るメンバーへの採用広報も含めてですね。
西島:いいですね。
木元: 組織のOKRの一つに採用広報があってメンバーに担ってもらっていたのですが、一つのKRに採用広報があり、その担当者として社長をアサインしていました。構図的には社長がメンバーにマネジメントされてました。 (一同、笑い)それで月2本必ず、バリューについて、とか、今後の戦略について、等を発信します。経営陣が発信するのは大事ですよね。
次回開催もお楽しみに!
全3回にわたり、組織ステージやタイプごとに考える「強い人事制度」とは?というテーマでお話しいただきました。今後もこのような形で、人事座談会を開催していく予定ですので、ぜひご期待ください。
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