【対談インタビュー】上場前後の成長フェーズに外部人事とともに磨き続けたFaber Companyの人事制度
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CORNERを活用して、人事課題の解決や事業推進を行った企業にインタビューをする「対談インタビュー企画」。今回ご紹介するのは、2024年に上場した株式会社Faber Company。急成長するデジタルマーケティング市場の中で、着実な成長を遂げてきました。その裏側で、約3年にわたり外部のプロフェッショナル人事とともに取り組んできたのが人事制度の設計から運用・改善です。今回は、代表取締役の稲次さん、執行役員CRO(Chief Revenue Officer)の村尾さん、パラレルワーカーの村井さんから取り組みについてお話を伺いました。
■この事例のポイント
・既存事業に加えた成長戦略(新規事業・M&A)を見据え、人事制度を経営と現場をつなぐ“共通言語”として再設計
・外部のプロフェッショナル人事が「制度ありき」ではなく、徹底したヒアリングからスタート。経営と現場でばらついていた成長イメージや期待値を一本化し、設計・運用まで長期伴走。
・上場に伴い失われがちな野心的な挑戦文化を消さず、Faber Companyらしさを活かす制度設計により、若手抜擢や採用競争力の向上に波及。
<プロフィール>
■稲次 正樹/株式会社Faber Company 代表取締役
新卒で株式会社アミューズ入社。アーティストマネジメントに従事し、才能の発掘からプロデュースする喜びを体験し、現在の仕事の原点となる。その後マーケティング領域へ進み、株式会社大広(現・博報堂DYホールディングス)、サイバーエージェント、セプテーニを経て、2011年にFaber Companyに入社。以降、事業全般の業務遂行を統括。モットーは「時代の才能を本気にさせる」。
■村尾 佳祐/株式会社Faber Company 執行役員CRO
学生時代はサッカーに打ち込み、プロ選手を目指すも、道半ばで挫折。大学卒業後の2020年4月、Faber Companyに新卒入社。以降、一貫して当社のセールス&マーケティング活動に従事し、事業拡大に貢献。2023年4月に営業マネージャー、2024年1月に上級マネージャー、2024年11月に当社執行役員就任。大手・中堅企業への戦略的なデジタルマーケティング支援を得意とする一方、企業文化形成や組織構築にも従事している。
■村井 庸介/パラレルワーカー
大学卒業後、株式会社野村総合研究所に入社。通信業・製造業の経営コンサルティングに携わる。その後リクルート、グリー、日本IBMに転職。グリー株式会社で人事制度設計に携わった経験から、2015年に独立後、社員30名のベンチャー企業から5,000名を超える大企業まで幅広く人事制度設計や導入伴走に携わる。顧客業種は製造業、サービス、IT企業が中心。経営理念・事業戦略から逆算した人事制度構築を得意とする。
目次
上場前後で変わったのは、「人を大切にする姿勢」ではなく、その伝え方
──まず、上場前後で人事や組織に求められるものはどのように変化しましたか?
稲次さん:上場前後で大きく変わったのは、「人を大切にする」というスタンスそのものではありません。創業当初から、社員と一緒に成長していきたいという考えは変わっていないと思います。
ただ、上場を経て、より強く「成長を社員への価値還元として成立させる」という方向感を打ち出すようになりました。組織が拡大していく中で、「それをどう社員に伝え、どう納得してもらうか」は大きなテーマになってきました。
──成長を強く意識するようになった背景には、市場環境も影響しているのでしょうか。
稲次さん:そうですね。私たちの主戦場であるデジタルマーケティング市場は伸びてはいるものの、既存事業だけでは成長に上限があります。だからこそ上場を機に、新規事業やM&Aも含めて「非連続な成長」を本気で描く体制に切り替えました。
社員とも「一緒に成長しよう、いい人生を生きよう」と伝えていく必要性があがりました。ただ、人が増えれば、これまで創業時から暗黙的に共有できていた価値観や期待も、きちんと言語化しないと伝わらなくなります。その役割を担ったのが、人事制度でした。
──制度改定を通じて、特に意識した点は何だったのでしょうか。
稲次さん:「Faber Companyらしさ」を守ることと、成長フェーズに耐え得る現実的な制度にすること。そのバランスですね。成長すると、どうしても階層化や評価の透明性が求められます。でも、制度が先行しすぎて窮屈になってしまうのも違うと思います。この会社で働く意味や、成長の方向性を、制度を通じて“共通言語”として示したい。その思いが強くありました。
当社には社員の言葉を集めた「DNAマップ」がありますが、仕事の面白さや職人性、知的好奇心、探究心を大切にするというものです。上場後に「売上だけ」を追う会社になってしまうのは違います。成長を強く意識するようになっても、探究心と成長を両立させることは外せなかったですね。
村尾さん:現場の立場から見ても、その変化は大きかったと思います。制度が整理されていくことで、「何を期待されているのか」「次に何を目指せばいいのか」が、以前より明確になりました。上場前のタイミングでこうした整理ができたことは、個人的にも大きかったですね。
専門知見と忖度のない視点を求め、外部人事と人事制度プロジェクトを始動
──人事制度改定にあたり、外部アドバイザーを活用しようと思われた背景を教えてください。
稲次さん:正直に言うと、経営陣の中に人事制度の専門家がいたわけではありません。だからといって、自己流で制度をつくると、どうしても“素人感”が出てしまい、それは社員にも伝わってしまいます。
人事制度は一度つくると、会社の文化や評価の前提になるものです。だからこそ、専門的な知見を持ちつつ、経営にも忖度せず意見を言ってくれる第三者が必要だと感じていました。
──CORNERを通じて村井さんと出会った経緯や当時の印象を教えてください。実際に複数名と面談されたと伺いました。
稲次さん:そうですね、もう10人近くの人事の方と面談し、コーナーさんの人材の豊富さにまず驚きました。いろんな方とお話しする中で、私自身の人事制度に関する知識や考え方もブラッシュアップされていく実感がありました。
その中で、村井さんが印象的だったのは、私以外の経営陣や社員へのインタビューを非常に重要視されて、「まず現場を知る」とおっしゃっていたことです。外部の方を入れるとき、事業理解やカルチャー理解って会社側は不安に思うところですが、そのスタンスで「ああ、この人は素晴らしいな」と思いました。
また、IT系企業での実務経験があり、社員の属性や特性が近い部分もあるのではと考えました。また、その時点で私にない考えも、適切な形で意見をいただけたことをよく覚えています。
村井さん:人事制度は、人事部だけでは見えない論点が必ず出ます。Faber Companyさんは最初から稲次さんが面談に出てこられて、「これは経営が本気で向き合うプロジェクトだ」と一目で分かりました。そこが、他社と一番違った点でしたね。
──経営側の本気度によってプロジェクトの進み方が随分変わってきますよね。
村井さん:戦略と組織が一気通貫でつながっていないと、変革期の人事制度って機能しないことが多いんです。例えば、営業系と管理系の役員で重視することが違う時に、人事部主導で折衷案をもってくると中途半端で切れ味の悪い制度になってしまうことがあります。そういうところで、代表が中心軸にいると、必要十分なものだけ融合して、逆に言うと飲む必要のないものは飲まない、切れ味のある制度になります。
制度設計で終わらせない。運用・改善まで続く「連続したプロジェクト」

──実際のプロジェクトは、どのように進んでいったのでしょうか。
稲次さん:最初は、とにかくヒアリングからでした。経営陣、マネージャー、現場メンバー、それぞれが何を考えているのかを丁寧に整理してもらいました。その中で浮き彫りになったのが、「経営が考えている成長イメージ」と「現場の受け止め方」のズレです。制度設計は、そのズレをどう埋めるかという作業でもありました。
村井さん:当時は経営陣へのヒアリングを通じて、少しずつ異なるベクトルを一本化する議論から始めました。経営陣が本気で人に向き合っているのに、制度や運用が現場に届いていないのか、逆に誤解を招いてしまっているのか。そのようなズレの実態がどうなのか、現場にもヒアリングして、当時は村尾さんも「若手のホープ側」としてインタビューさせていただきました。
そこから、現場が将来に期待感を持って動けることを軸に、報酬制度の見直しや評価の考え方の変更を提案して、骨子を固めていきました。
──制度を作る上で、村井さんが感じた肝の部分はどこでしたか。
村井さん:現場の方々からよく出ていたのが、「経営陣が人に本気」だということでした。事業成長以上に、人に向き合うことにブレないということです。
一方で、組織が固まるにつれて、昔ほどチャレンジングなことがしづらくなっている、いい意味で“野性味(ベンチャーならではの野心的でハードワークを厭わない挑戦)がなくなっている”という感覚もあったようです。なので、人を見る良さは活かしつつ、本気でチャレンジしたい人を応援できる設計にする。若手が抜擢されにくくなっていたブレーキを、賃金バランスを崩さずにどう外すか、というのがポイントでした。
結局やったことはシンプルで、「上場会社としての仕組み」を整えながらも、Faberの良さを消さず、むしろ活かす。そのバランスへの挑戦だったと思います。
村尾さん:メンバー時代にヒアリングを受けたときも、外部の方が来るのって嫌がる人は嫌だと思うんですね。でも、うちのメンバーからそういう声がまったく出ず、すんなり進んでいったのが印象的でした。その後、役員になってからは、全社向けのメッセージを伝えていただいたり、運用面の浸透にも関わっていただいたり、経営陣が発信すると従う構図に見えてしまう可能性もある中で、第三者の目線で入ってもらうことで、強制ではなく自発的に浸透していった感覚があります。
人事制度が経営の想いを伝える「共通基盤」として機能し始めた
──制度改定を経て、どのような変化を感じていますか?
稲次さん:競争意識が高まったとか、ポテンシャル開発に影響していると思います。もっと本質的なところだと、会社組織としての基盤を構築できたこと。今後成長していくための土台を作ったというか、以前は“点”で伝えていたものが、制度という“面”で伝わるようになったと思います。
村井さん:制度のルールに則って、若手の抜擢・登用が起きたのは大きかったと思います。村尾さんの早期抜擢と役員就任は、若い方からすると「自分も頑張ればチャンスがあるかもしれない」というメッセージになったと思います。
また、合宿などに参加させていただく中で聞いた話では、大手企業からの転職者など、採用競合に負けてしまう場面が以前はあったものの、制度の変化も一因となって入社につながったケースもあったようです。もちろん、制度だけが理由ではないとしても、後押しになったのは確かだと感じます。
村尾さん:採用場面では、制度がかなり生きたと思います。上場するとエントリーしてくれる方のタイプが変わってきて、「ベンチャーで挑戦したい」だけでなく「キャリアを積み上げたい」志向の方も増えます。そうした方に制度を具体的に説明できるようになったことで、選考途中の辞退が減った実感があります。
また、私自身、制度構築段階から関わり、その後執行役員という立場になりました。制度があることで「次に何を求められているのか」「どんな役割を果たすべきか」が明確になったと感じています。個人のキャリアと会社の成長が、制度を通じてつながった感覚です。
──3年ほど同じパラレルワーカーが支援に入っているのも特徴です。長期伴走の価値はどこにありますか?
稲次さん: ひとえに村井さんと(コーナー側の)ご担当の方のお人柄、というのは大きいですね。村井さんに聞けば一定の指針が返ってくる、顧問的な立場に近いでしょうか。そんな安心感が常にありました。
村井さん: 私にとっても歴代最長のご支援です。制度ってリリースして終わりになりがちで、その後の目標設定や評価の結果、それを踏まえた社員の受け止め方などは、伴走できないことも多いものですが、社員の発言の質が変わっていくなど、運用後の変化も見守ることができています。制度自体も組織ごとにカスタマイズが必要になってくるので、そこでどうメッセージを出すかも含めて、最後まで浸透をご支援できたのは良かったです。
次の成長フェーズへ。人事制度を仕組みとして磨き続ける
──今後人事として注力していきたいテーマを教えてください。
稲次さん:採用は引き続き重要ですし、M&Aや新規事業を見据えると、人事制度はさらに重要になります。今回整えてきた制度を持続的にブラッシュアップし、次のフェーズでも使える“土台”として活かしていきたいですね。
村尾さん:組織が大きくなるほど、経営陣とメンバーの距離は必ず生まれます。だからこそ、マネージャー層が何をもって評価し、どう育てるのかが重要です。現場が迷わず動ける仕組みとして、制度を磨き続けたいです。
村井さん:上場前後という貴重なフェーズに、長期で伴走できたこと自体が大きな価値だと感じています。今後、事業が広がるほど見えない課題も出てくると思います。そうした局面があれば、また一緒に考えていければと思います。
編集後記
Faber Companyの取り組みを通じて見えてきたのは、人事制度を「つくる」こと以上に、「問い続け、磨き続ける」姿勢です。人を大切にし、一人ひとりの人生に向き合う。上場前後という大きな節目において、制度とカルチャー、成長と納得感のバランスをどうとるか。その難しさに対して、経営・現場・外部の人事が対話を重ねてきた成果が今の組織運営に繋がっているのだと思います。上場をまたぐ中で、失ったものもあったかもしれないですが、Faber Companyらしさを消さずに、外部人事とともにバランスを取り続けた歩みは、成長フェーズにある企業にとって、大きなヒントになると思います。

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