「大切な採用」だからこその外部人材活用。2カ月で母集団を2倍にしたユーグレナの事例
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パラレルワーカーの活躍を通して高い成果を残した企業に話を伺う対談インタビュー企画。
今回は、持続可能かどうかを全ての判断や行動の基準とする「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を企業フィロソフィーとして掲げ、人・社会・地球がサステナブルになることを目指す株式会社ユーグレナさんにご登場いただきます。
「ミドリムシで人と地球を健康にする」を掲げて、2005年に社長の出雲充氏を含む3人で創業し、2014年に東証一部上場。食品や化粧品などのヘルスケア事業に加え、最近はバイオ燃料事業やバングラデシュにおける栄養改善プログラムなどの事業も拡大し、さらなる組織拡大フェーズにあります。その中でなぜパラレルワーカー活用に至ったのか、またどのように成果を挙げてきたのかについて、ユーグレナ 人事課 永井 慎也さん・金田 謙祐さん、パラレルワーカー 梅崎 薫さんの3名にインタビューしました。
<プロフィール>
永井 慎也(ながい しんや)/株式会社ユーグレナ 人事課 マネージャー
2005年、新卒で株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社し、人事として新卒採用と中途採用を経験。2009年にエディフィストラーニング株式会社に転職、営業から研修企画、研修講師までを経験し、2012年に株式会社エス・エム・エスに人事として入社し、採用から制度、研修まで幅広い人事業務を担う。2018年から現職。
金田 謙祐(かねだ けんすけ)/株式会社ユーグレナ 人事課
サイバーエージェントでゲーム開発および小学生向けのプログラミング教育事業のマネージャーを担った後、2017年9月からユーグレナへ。当初は経営企画。2018年10月から人事。現在は採用チームリーダーを務める。
梅崎 薫(うめざき かおる)/パラレルワーカー
新卒でリクルートへ入社。人材紹介の法人営業を経て自社の中途採用担当を経験した後、VCのHR担当として投資先企業の人事支援業務と自社新卒採用担当を兼任。現在は株式会社weareを起業し、カルチャーマネジメントを主眼としたSaaSプロダクトを企画・開発しながら採用支援事業も行っている。
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目次
「社員採用では間に合わない」への打開策
──単体で250名を超えるユーグレナ。その採用を元々は2名で担当されていたそうですね。
永井さん:はい。今回のプロジェクトが始まる前の人事課は正社員が5名、うち2名で新卒・中途採用を担当してくれていました。当時は採用をより強化していくフェーズで、正直かなりキツキツな状態。ちょうどそのタイミングで人事課内で1名の産休が重なり、いよいよリソースがひっ迫してしまったのです。
最初は正社員募集も検討しましたが、それだと入社までにかなり時間が掛かってしまいます。それにユーグレナのカルチャーにフィットした人材が採用できるとも限りません。仮にうまく採用できたとしても、これまで中途採用をやってくれていた方の穴を埋めるほどのノウハウやスキルがあるかどうかも不確かです。
リソースもノウハウも足りない。緊急度も高く時間は掛けられない。どうにかこの状況を打破できる方法はないかと模索した結果、コーナーの南部さんに相談し、パラレルワーカー活用を進めることにしました。
金田さん:それまで外部人材など、業務委託者の活用経験はほとんどなくて、人事課としては初めての取り組みでした。また、ユーグレナでは社員同士「仲間」と呼び合うほど大切にし合う文化があるので、「そんな仲間を探す採用業務は、組織を代表するような人が担うべきだ」という考えが社内にあったことも事実です。
永井さんも私もそこに理解は示しつつも、「どんな人と一緒に、どういう進め方をするか、によってそこはクリアできるのでは?」と考えていました。それを経営陣に伝え、人事課として初めてのパラレルワーカー活用を進めることにしたのです。
──梅崎さんは自身の会社・事業もお持ちですが、その上でなぜパラレルワーカーの活動をして、ユーグレナのプロジェクトへジョインしようと決めたのでしょうか?
梅崎さん:パラレルワーカーとしての活動を始めたきっかけは大きく2つあります。
まず1つは「起業するタイミングで自身のスキルがどこまでマーケットに通用するか」を確認したかったから。いざ起業した後に、自分の経験でどれくらい報酬をいただけるのかを事前に知っておきたかったんです。
もう1つは「経験の幅を広げたい」と考えたから。これまでに大規模採用、スタートアップ採用支援、自社の採用担当などを経験してきましたが、人事としてはキャリアにバラつきがあって未熟だなと感じていました。そこで自身が経験したことのない領域で、かつ面白いと感じられるプロジェクトを通じて経験を広げられたらと考えていました。
その点、ユーグレナのプロジェクトはピッタリでした。また「人や組織を大事にする」社風も自身の価値観と共鳴するところが多く、興味を惹かれました。
また、最終的に参画意思を決めたのは永井さん・金田さんの「熱さ」です。面談で「ユーグレナの魅力を語るとき、いつもどんな話をされていますか?」と質問したら、お2人の熱量がぐっと上がって話が止まらない状態になったんです(笑)
それが一番の決め手だったかもしれません。
あとは面談を通してこれまで知らなかったユーグレナの事業や働き方の魅力を知り、「実はこんなにもビジネスとして利益に向き合いながら、社会課題に真正面から向き合っている会社なんだ」という発見があったのも大きなポイントでした。この情報をちゃんと発信できれば、もっとファンになってくれる方が増えるだろうなと。
すべては「パラレルワーカーに会社を好きになってもらう」ところから
──梅崎さんともう1名のパラレルワーカーを迎えるにあたり、オンボーディングを相当丁寧にされたと聞きました。
金田さん:何か特別なことをしたわけではありません。ただ初めてパラレルワーカーの方と一緒に仕事をする上で「社員として働く仲間と契約形態が違うからと変な壁は作りたくない」とは常々考えていました。実現したいことは一緒なのに、障壁があるのは嫌じゃないですか。せっかくのご縁なんだから、お互いに「やってよかったな」と思えるようにしたい。そう考えて、毎週のミーティング内で「Good&New」というコンテンツを必ずやっていました。好きなアニメとか子どもの話とか、最近の出来事をなんでも話す時間です。これが毎週あるミーティングの楽しみのひとつになっていたくらいです(笑)
仕事面以外の「人柄」も知れると、よりコミュニケーションの頻度と質は高まると思うんです。例えば、梅崎さんのことを「業務委託・ハンズオンでベンチャー採用支援をやっていた人」としか知らなければ、それ以上の協力関係は生まれません。でも「表向きはドライだけど実は熱い人で、業務委託だから最初はちょっと様子を見ている」というところまで踏み込んで理解できていたら、お任せする仕事も変わってくるはずです。
梅崎さん:仕事面だけのパートナーになった瞬間、人事の仕事ってすごく機能的で面白くなくなってしまうんですよね。だから、このプロジェクトに参加する前段階から「なるべくチームの一員としてやりたいです」という要望を永井さん・金田さんのお2人にも伝えていました。現場のハイヤリングマネージャーとの関係性も近くて採用要件のすり合わせもスムーズなので、人事と現場との関係性の良さも実感しています。
あと印象的だったのは、プロジェクトが始まってすぐ家に届いたユーグレナの本の中に、金田さんからの直筆の手紙が入っていたんですよ。そんな経験は今までになかったので「なんだこれは!?」とすごく驚きました。
金田さん:ユーグレナのことをもっと好きになって欲しかったので、手紙を送りました。あと一緒に働けるのが楽しみすぎたこともあり、つい前のめりになりまして(笑)直筆だとさすがに気持ち悪いかな、ドキュメントにした方がいいかな…なんて迷いながら送ったことを思い出します。
──まさに梅崎さんのことも「仲間」として受け入れていたんですね。そこからわずか2カ月で母集団が2倍になったそうですが、具体的にはどのように進めていったのでしょうか。
永井さん:まず、プロジェクト開始前にコーナーの南部さんと「この状況下でどういう採用体制を共に構築していくべきか」から考えていくことになりました。その中で、メイン採用ツールだった人材紹介をもっと伸ばすこと、ダイレクトソーシングを追加活用することを決め、それぞれ目標数値に落とし込んでいきました。
それに合わせてパラレルワーカーの方を2名採用。梅崎さんに人材紹介を、もう1名の方にダイレクトソーシングを担当いただく体制にしました。会議体は大きく2つで、1つは全員でレポートと共有・ディスカッションができる場、もう1つは各領域で具体的な取り組みについて話せる場を週次で運営する形です。それ以外のコミュニケーションはMicrosoft Teamsで随時行っています。
梅崎さん:私が担当した人材紹介側では、大きく以下3つの取り組みを進めてきました。
(1)採用ポジションの優先順位決定
ユーグレナでは常に30ポジション以上が動いていて、どれも1~2名の募集です。このすべてを漏れなく人選するのは難しいので、案件に優先順位をつけて緊急度の高いものから着手していくようにしました。
(2)ポジション別に最適なパートナーとの関係強化
人材紹介会社との取引も30社ほどありました。そこから、優先順位の高いポジション群と得意領域がフィットするパートナーを検討し、1社ずつ定例などを密にさせていただくところからスタートしました。ユーグレナの場合は小ロット・多求人の採用活動となるため、どんなポジションが動いても信頼できるパートナーを作っておけることが継続性・再現性の面でも重要なことと思い重点的に取り組んできました。
(3)現場のリアルな情報を提供することでの会社理解促進
ユーグレナは「ミドリムシ」というキーワードや会社フィロソフィーについては広く知られています。しかし、仕事内容の面白さ、リアルな働き方や組織文化などは、より人材紹介会社や候補者へ訴求できる点があると考えました。そこで各ポジションのハイアリングマネージャーへインタビューを実施。ミッションや具体的な業務、組織について生の声を拾うようにしていきました。
業務委託という立場ですが、パートナーや候補者に代わりに魅力を伝えきれるか、を意識していました。地道に情報をお伝えしていくことで、パートナーのみなさんがユーグレナのことを伝えられる、伝えたいと思ってもらえるように取り組んでいます。
どれも基本的な活動ではありますが、リソースがないとなかなかやりきるのは難しいです。ユーグレナでは250名以上の組織採用をたった2名でやっていたため、オペレーションだけでも相当負荷が掛かっていたはず。それゆえ手付かずになっていたところを私が関与して土台を再構築していった形です。
「大切な採用」だからこそ、外部人材の力も活用する
──この2カ月の結果を振り返って、今はどのように感じていますか?
永井さん:やっぱり採用は「会社の未来を創る大事な仕事」だなと。1人が入社するだけで会社の未来が変わることは普通に起こりますからね。リソース的に採用を担ってくれることも当然ありがたいけれど、それ以上に継続的な採用力向上に繋がるユーグレナの魅力発信の土台を固めてくれたことが何よりの成果だと思います。
もしリソース的な関与だけだったら、一緒に働いてくれる期間こそ成果は出るものの、その方が離れてしまえば元に戻ってしまいます。けれども梅崎さんたちが自社採用力を高めてくれたことで、今後の継続的な成果につながっていく手応えを持っています。実際に当社のことを深く理解してくれるエージェントは増えましたし、ダイレクトソーシングでどんな情報を提供すれば求職者が興味を持ってくれるかというノウハウも溜まりました。
──「採用は社員がやるべきだ」と思い込んでいる企業は、まだまだ多いかもしれませんね。
金田さん:採用は企業にとってすごく大事なことなので、そういう考え方はもちろん理解できます。でも、それは必ずしも社員じゃなくていいと思っています。仮に外部の人材だったとしても、ユーグレナのことを好きになって本気で採用にも臨んでくれる方、しかも採用に関して専門知識やノウハウを持っている方であれば、十分にその役割を果たすことができるはずなんですよね。実際に梅崎さんたちと一緒に進めて成果も出ましたし、結局は「やり方次第」です。
その体制を作るためには、「スポット的にリソースとしてパラレルワーカーの方を迎え入れる」のではなく、「仲間として分け隔てなく連携する」ことが大事なのかなと。もしパラレルワーカー活用に今一歩踏み切れない会社があるなら、まずはパラレルワーカーの方に自社を好きになってもらえるようコミュニケーションするところから始めるのがいいんじゃないかなと思います。
梅崎さん:パラレルワーカーも「仲間」として迎え入れてもらった方が、リソースだけを期待される時よりも楽しく働けるはずです。また、長期的に活きる土台づくりやノウハウ提供などはパラレルワーカーと一緒に働くからこそ得られるもの。せっかくご一緒するのであれば、ぜひそこまで期待して活用してもらえればと思いますね。
編集後記
今回のインタビューでは「仲間」というキーワードが何回も飛び出しました。契約形態が正社員だろうが業務委託だろうが、同じ想いで進む人はみな仲間である──そんなユーグレナのスタンスが、パラレルワーカー活用とも相性が良かったのだと感じました。これからの変化が激しい時代では、あらゆる組織の「壁」を取り払うことが組織のレジリエンスを高める上でも重要なのではないでしょうか。