【対談インタビュー】「カメラのキタムラ」が本気で挑むDE&I推進プロジェクトの舞台裏
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CORNERを活用し、人事課題解決/事業推進を行った企業にインタビューをする「対談インタビュー企画」。今回ご紹介するのは、「カメラのキタムラ」ブランドを展開する株式会社キタムラの事例です。2024年4月から本社機能の株式会社キタムラと店舗運営を行う事業会社の株式会社カメラのキタムラという2社体制となりました。
そんな中、かねてより経営テーマにあった女性活躍推進に本格的に乗り出し、外部のプロフェッショナルとともにプロジェクトを発足して早半年が経過。同社人事部で本プロジェクトを率いる久保さんと、外部パラレルワーカーとして関わる大内さんに、プロジェクトの狙いや進め方、その舞台裏を伺いました。
■この事例のポイント
・女性の長期就労・活躍と事業成長に繋げるために「女性活躍推進プロジェクト」を2024年秋に発足。経営と人事部と外部のプロフェッショナルが一体となって取り組んでいる。
・外部の専門家の知見を活かし、データドリブンの課題特定と現場のニーズを反映した実行可能な解決策を導入し、各拠点からの知見を融合した実行力のある体制を整備している。
・店舗(カメラのキタムラ)と本部(キタムラ)では、ニーズの違いに応じて、店舗では制度面の改善、本部では業務改善を進め、各社・拠点に最適なアプローチを実行している。
<プロフィール>
■久保 美鈴(くぼ みすず)/株式会社キタムラ 人事部 女性活躍推進プロジェクトマネージャー
流通会社の写真専門店に入社し、店長を務めた後、営業管理部門に異動。予実管理や労務管理を担当するかたわら、専門知識を身に着けるため社会保険労務士の資格を取得する。その後、会社統合により株式会社キタムラの人事労務担当に異動。人事労務のマネージャーとして、人事制度・労務および健康管理全般のマネジメントを担当。2024年から女性活躍推進プロジェクトのマネージャーを兼任。
■大内 礼子さん/パラレルワーカー
新卒でソフトバンク株式会社に入社し、コールセンター運営を経て、人材開発・採用に従事。その後、ヤフー株式会社に出向。約11年にわたり企業人事を経験し、2020年に人材開発/組織開発コンサルタントとして独立。現在は、人事コンサル・大学教育・文化芸術の3分野で多様なプロジェクトに取り組む。
人事コンサルとしては、主に人材開発・組織開発・DE&I推進をテーマに活動。
目次
経営の軸としてのDE&I推進──キタムラが目指す女性活躍の未来
──まず、歴史の長い御社でDE&I推進(女性活躍推進)プロジェクトを始めることになった背景を教えてください。女性向け事業を手がけていることも関係しているのでしょうか。
久保さん:経営陣としては、これまでも男女ともに多様な人材が活躍できる環境づくりに積極的に取り組んできました。女性がさらに活躍できる機会を増やし、企業としての競争力を高めるために『女性活躍推進プロジェクト』を立ち上げました。
また当社は子ども写真館「スタジオマリオ」など、女性が中心となって活躍するサービスも展開しています。女性従業員が長く力を発揮できる職場環境を整えることは、サービスの質向上にも繋がると考えています。女性活躍推進は企業成長にもつながる重要なテーマです。
本気で変革を目指すからこそ、外部の専門家の力を導入
──新たにDE&I推進に取り組むことに対し、社内の反対はありましたか。また、外部人材(CORNER・パラレルワーカー)を受け入れるにあたって経営の同意は得やすかったでしょうか。
久保さん:当社ではこれまで『ダイバーシティ』や『女性活躍推進』の名がつく取り組みはありませんでした。これまで当たり前とされてきた考え方に対して「本当にこのままでいいのか?」と意識し、その気づきを共有し対話を重ねることが、女性活躍を進める土壌として経営側も重要視しています。外部の知見を取り入れることもそうした土壌づくりの中で自然に合意が取れました。
社内ではプロジェクトを立ち上げるにあたり、当事者である女性が主体的に考えることが重要であることからまず私が『女性活躍推進プロジェクトマネージャー』という役職を拝命して走り出しました。経営側も、私自身の思いとしても、会社のミッションにつながる活動にしたいという考えが最初からありました。
──プロジェクト発足時にDE&I推進のプロフェッショナルである大内さんが参画されました。当時のご状況を教えてください。
久保さん:プロジェクトのスタート時から、社内で女性活躍推進という取り組みは初めてだったため、外部の専門家に支援して頂こうと考えました。そこで、コーナーさんに相談し、外部の視点と経験を取り入れることでスピード感を持たせ、社内の納得も得やすいような進行を考えました。
大内さんにはアンケートの設計段階から参画いただき、課題の仮説から逆算した設問設計など、実践的なアドバイスをいただきました。大内さんの知識と経験は、プロジェクト方針設定に欠かせないもので、最初から支援を受けられたことは非常に心強かったです。さらに、事業会社の人事としてDE&I推進をゼロから立ち上げた経験を活かし、プロジェクトの初期段階という最も重いフェーズをスピード感を持って的確に進行していただきました。
大内さん:私はパラレルワーカーという立場で昨年10月からプロジェクトに関わり始めました。まず感じたのは、キタムラさんの経営陣や久保さんの本気の姿勢です。特に久保さんが、社内で小さな取り組みを進めるのではなく、全体的なアプローチを取ることで、中長期での成果を狙っているのが明確でした。
私自身、元々事業会社の人事として同様のプロジェクトを立ち上げる際に苦労した経験があり、その教訓を活かし、経営層との定期的なコンタクトを確保できるよう、社長レビューの設定やアジェンダ作りなどをリードさせていただきました。
また、久保さんにはセンシティブなデータも含めて全て見せてほしいとお願いしました。表面的なデータだけではなく、リアルな課題を特定したいと考えたためです。課題を深く理解するために、オープンな対話や姿勢を徹底しました。
現場から本部まで、全社を巻き込む実践アプローチ
──プロジェクト体制や目標はどのように設定されていきましたか。
大内さん:久保さんの話の通り、社員アンケートの設問策定を手伝い、集まったデータを性別や部門ごとに細かく分析し、現状の課題を見える化しました。年内にはその結果を社長にレビューいただき、まず女性社員がより長く働けるようにするための施策を考えました。
その後、年明けに課題把握からアクションのフェーズに移行したタイミングでプロジェクト体制を見直し、経営層とすり合わせて目指すゴールを確定しました。
2月には本部と店舗側から熱意あるメンバー数名に加わってもらい、新体制でキックオフしています。店舗(カメラのキタムラ)と本部(キタムラ)に分科会を設け、それぞれの課題に応じた施策を進める体制も整いました。経営トップの強いコミットメントと社内の協力があり、プロジェクトは順調に進行しています。
──DE&I推進を進めるにあたって、店舗(カメラのキタムラ)と本部(株式会社キタムラ)それぞれの課題と進め方に違いがあるとのことですが、それぞれアプローチ内容を教えてください。
久保さん:店舗と本部、どちらも女性がより長く働き、活躍できる環境づくりという目標は同じですが、店舗では働き方や制度面の改善に特に注力しています。昨年行った社員へのアンケートでは全国転勤の負担についての声が多く寄せられました。
当社では、かねてより全国転勤を基本としています。転勤するエリアを限定した働き方も選択できましたが、エリアの範囲が広く、あまり利用しやすいと言える制度ではありませんでした。そこで、エリアの範囲を狭める見直しを行い、2025年秋から変更を実施する予定です。

元々、人事部でも転勤制度の見直しの検討を進めていましたが、女性活躍推進プロジェクトで行ったアンケートで集まった生の声が改善を具体化する後押しにつながったと感じています。事業を成長させていく上で人事異動は一定数必要になるものの、社員にとっては異動範囲が狭い方が良いため、両方のバランスが取れる案を時間をかけて慎重に設計しました。
また、より良い職場環境の実現と、充実したワークライフバランスの推進のために、有休取得の促進にも取り組んでいます。店舗ではまとまった休日の取得が難しいため、年に1度の連続休暇を取得できる仕組みを検討中です。
大内さん:店舗社員を対象に行ったアンケートでは、「全国転勤がずっと続くのは負担」といった切実な声や、「連休が取りづらい」といった声が数多く寄せられていました。それに対してエリア限定制度の見直しや連続休暇の推進に動き出したのは、本当に凄いことです。店舗の社員にも「会社が着実に変わり始めている」という実感が生まれているのではないでしょうか。
久保さんは他にも、例えば今年4月から旧姓使用を認める制度を導入するなど、地道な制度改善を積み上げています。こうした取り組みの成果が蓄積されているので、次回の社員アンケートでは何らかのポジティブな変化が数字にも表れるのではと期待しています。
── 一方、本社機能側(キタムラ)での具体的な取り組み内容を教えてください。
久保さん:本部の社員は、仕事にやりがいを持って働けていると感じている一方で、家庭やプライベートとの両立が難しいという声が多くありました。業務量の多さをひも解き、改善につながる活動を行っております。店舗ほどの制度改革はありませんが、ソフト面の働きかけによって女性が力を発揮し続けられる環境を整えていきたいですね。

── 久保さんご自身は、人事部で他の業務を兼務しながらこのプロジェクトを推進されています。その中で工夫している点や苦労している点はありますか?
久保さん:このプロジェクトマネージャーの役職を担いながら、人事部での通常業務も並行して行っています。そのおかげで「これは人事施策として進めているのか、それともプロジェクトの活動なのか?」と自分でも線引きが曖昧になることがあります(笑)。
ただ、それくらい日常業務と一体となって推進できているのは良い面もあって、日々の人事業務での取り組みもプロジェクトと関連づけて発信できますし、逆にプロジェクトで検討したことを人事施策として実装するといった形で、両輪で進められていると感じます。
専任部署を新設するのではなく、既存の人事部メンバーが兼務でDE&I推進を進める形は、最初こそ大変でしたが、その分事業への理解を持ちながら推進できるのが大きなメリットです。周囲の理解とサポートも得ながら、手探りではありますが皆で協力して取り組んでいます。
プロジェクトキックオフから半年で確かな手応え。社内の意識と行動が変化。
── プロジェクトを通じて、社内にどのような変化や兆しが見られましたか?具体的な成果や手応えを教えてください。手応えについて、大内さんはどのように感じていますか?
久保さん:プロジェクトが始まってから、社員の意識に変化が現れました。特に、DE&I推進活動が始まる前に比べ、女性社員の意識が高まったと実感しております。社内報でプロジェクト始動の紹介を行ったことで活動の認知度が上がり、店舗で活躍している女性社員同士のネットワーキングイベントにお声がかかり、プロジェクトメンバーが参加させてもらいました。今後このような変化がますます加速していくと感じています。プロジェクトにおいても、さらに社員と直接的な対話機会を作り、次のアクションにつなげていく動きをとっていきたいと考えています。
大内さん:キタムラさんのDE&I推進プロジェクトは、経営トップから現場スタッフまで多くの人を巻き込みながら、非常に順調に進んでいる印象です。その要因は、経営層の強力なコミットメントと、それを現場に橋渡しする久保さんの存在にあると思います。久保さんが経営の意向や温度感を汲み取りつつ外部と社内をつないで情報共有を密にしてくださったおかげで、全社で一貫性をもってプロジェクトが進められている点が素晴らしいと思います。
女性活躍推進が生むキタムラの次なるステップ
── 今後のDE&I推進における展望や、次なるステップについて教えてください。
久保さん:今後は、現在進行中の取り組みも継続しつつ、より多くの活躍する女性が生まれる環境を作る取組みも進めて参ります。女性活躍を支援するためには、単に制度を整備するだけではなく、より多くの女性管理職が誕生する土壌を整える必要があります。
さらに、社内全体で「ダイバーシティ&インクルージョン」の重要性をさらに広め、すべての社員が自分の価値を最大限に発揮できる環境を整えることが目標です。これからも、外部の専門家と協力しながら、社員一人ひとりが働きやすい環境づくりを進めていきたいと考えています。
大内さん:制度や働き方の整備に加えて、実際に活躍している女性社員や成功事例に光を当てて全社に広げていくといったポジティブな取り組みにも力を入れていく必要があります。ネガティブな課題を潰すだけでなく、「こんなふうに活躍できる」という働き方やキャリアの選択肢を複数示していくことで、より多くの社員が自分の可能性に気づき、活躍の場を広げていけると思います。
久保さん:多様な価値観が活かされる環境が整えば、社員一人ひとりが持つポテンシャルを最大限に発揮できるようになります。それによって、サービスの質向上や業務の効率化が実現し、最終的には企業全体の成長に寄与することになると考えています。
今後は、社員全員が活躍できる文化を根付かせ、より多くの女性管理職が誕生し、企業全体でダイバーシティの価値を高めていくことを目指しています。これを実現するために、今後さらに多くの施策を展開していく予定です。
編集後記
株式会社キタムラの女性活躍推進の取り組みは、人事と経営が一体となって進められている点が印象的でした。人事部・久保さんが現場のリアルな課題を集め社内をうまく巻き込んで進める一方で、外部の専門家(大内さん)の力を借りて、客観的な視点で課題の洗い出しから実行可能な解決策を提案してもらうことで、実効性のある施策が着実に進行しています。
また、店舗と本部それぞれの課題やニーズに応じた柔軟なアプローチも特徴的です。多拠点にまたがる企業構造において、プロジェクトの進め方も参考になります。次のステップにおける進展が楽しみです。







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