「ホワイト500」の認定要件・申請ポイントに至るまで解説
健康経営に取り組んでいると認定された健康経営優良法人のうち、特に優良だと認められた大規模法人部門の上位500法人が認定される「ホワイト500」。近年、自社ブランディングや従業員エンゲージメント向上などを目的として関心を持つ企業が増えている印象です。
今回は、「ホワイト500」の概要や認定要件、申請ポイントに至るまでを、健康経営コンサルティングを実施されている永井 潤さんにお話を伺いました。
<プロフィール>
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永井 潤(ながい じゅん)/株式会社アドバンテッジリスクマネジメント アカウントセールス本部 副本部長 兼 コンサルティング・CS部 部長・シニアコンサルタント
大手素材メーカー、大手自動車部品メーカーの人事領域全般(労務、採用・育成、企画、安全衛生)を経験後、アドバンテッジリスクマネジメントに入社。コンサルタントとしての活動開始。健康経営は2018年のサービスローンチ時からリード。新規営業組織とコンサルティング組織のマネジメント職を担いながらシニアコンサルタントとしても活動を継続。個人では累計60社以上の健康経営コンサルティングを実施。自社の健康経営推進のアドバイスも実施、健康経営銘柄を4年連続取得。
目次
「ホワイト500」とは
──「ホワイト500」とはどのような制度なのでしょうか。他の関連認定制度との関係や違いと合わせて教えてください。
まず、前提となる制度に『健康経営優良法人制度』があります。これは優れた健康経営を実践している企業・団体を顕彰する制度であり、2016年に経済産業省によって創設されました。「ホワイト500」は、この健康経営優良法人として認定された中でも、大規模法人部門の上位500社に与えられる『より上位の称号』です。業種や上場・非上場に関係なく、大規模法人部門の調査票を提出した企業の中から選定されます。
類似のものに『健康経営銘柄』がありますが、これは上場企業の中から業種ごとに1社(評価結果によっては複数社の場合あり)選定されるものです。中には銘柄の選出がない業種もあり、健康経営銘柄2025では29業種53社が選定されています。ちなみに、大規模法人部門の参加企業は令和6年度健康経営度調査票においては3,869社となっており、『健康経営銘柄』制度が開始された2014年の493社から急激に拡大している状況です。一方、中小規模法人部門では20,280社となっており、大規模法人部門よりも規模が大きくなっています。
中小規模法人部門においては、大規模法人部門同様に評価の上位500社が『ブライト500』に認定されます。令和6年度健康経営度調査からは、中小規模法人部門の取組者数の規模から『ネクストブライト1000(ブライト500より下位1,000社を認定する取り組み)』も始まっています。
なお、令和7年度の健康経営度調査は、健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト「ACTION!健康経営」によると、例年同様お盆明けの8月18日から調査票が開示され、10月中旬締め切り(大規模法人部門は10月10日、中小規模法人部門は10月17日)で行われる予定です。
「ホワイト500」の認定要件
──「ホワイト500」の認定要件についてより詳しく教えてください。
冒頭でご紹介した通り、ベースは健康経営優良法人の認定要件があり、「ホワイト500」と『健康経営銘柄』にはそれぞれ別の要件が加わります。その中で、「ホワイト500」の調査票では以下4つの側面が設問で問われます。

(1)経営理念・方針
「ホワイト500」では4つの必須要件があり、健康経営を進める上での推進方針や戦略策定状況、社内外への情報開示による健康経営の浸透に向けた取り組みなどが問われます。具体的には、健康経営の推進方針・戦略を決めていくにあたり取締役会などで経営層を巻き込みながら決めているか、中期経営計画やサステナビリティのマテリアリティの中に組み込んで考えられているかなど、経営層のコミットメントを高めるようなプロセスを取っているかが問われる形です。
(2)組織体制
経営層、専門職(産業医、保健師、各種専門スタッフなど)、労働組合(従業員団体)、健康保険組合、管理職などの関係者との役割・権限分担・協力の状況が問われます。いずれのステークホルダーも関係しない企業はないと思いますが、彼らと上手く協業体制を取っているほど評価が高くなる傾向があります。
(3)制度・施策実行
各種健康課題の可視化、解決のための取り組みが問われます。ちなみに、令和6年度の健康経営度調査では育児・介護と仕事の両立に関する取り組みの設問が拡充され、従業員自身の心身の健康だけでない領域の取り組みも問われるようになっています。また、令和7年度の健康経営度調査からは女性特有の健康課題に加え、高齢従業員の健康や体力に応じた取り組みが任意要件となりました。このように、問われる健康課題の領域は年々幅広くなっており、企業内の分担も複数部門に渡って対応しないと太刀打ちできないほど広範になってきているため、健康推進の担当者だけで取り組むのではなく、他の人事領域の担当なども含めた社内の推進体制を見直す企業も増えています。
(4)評価・改善
生活習慣・労働時間・休職状況など各種指標の実数値と、健康経営のKGI・KPIに対する効果検証の状況が問われます。人的投資の効果を明らかにし、仮に望ましい成果が出ていなくてもその要因追求に目を向け、PDCAを回してより良くしようとしている姿勢が重視されます。これは人的資本経営の深化を進めていくことにも貢献する設問になっていると考えており、企業ごとに異なるユニークな人的資本経営の人的課題や戦略推進を考えていくための重要な要素が詰まった評価側面だと捉えています。
なお、調査票内で誓約事項として、法令遵守・リスクマネジメントに該当する各種法令遵守の状況や企業の管理体制の遵守事項が問われます。この内容が1つでも守られていないと認定は受けられないため、事業所単位の法令遵守状況や労基署からの指導状況などを把握しておく必要があります。ちなみに、評価ウェイトは(1)(4)が3、(2)(3)が2となっており、ウェイトが高い評価側面ほど総合偏差値に与える影響が大きくなります。
「ホワイト500」認定に向けて取り組むメリット
──「ホワイト500」の認定取得を目指す過程で、企業にはどのようなメリットが生まれますか。
「ホワイト500」認定に向けて取り組むことのメリットは、大きく以下の4つの観点に整理できます。

(1)労働生産性の低下防止
生産年齢人口(15歳以上64歳以下の人口)が減少していく中、企業における労働力確保の重要性は年々増しています。その中で、社内人材の労働生産性低下を招く要因の1つに『心身の健康課題』があり、放置すると休職やパフォーマンス低下を招く恐れがあります。こうした心身の健康課題の把握と対策検討のための法整備も進んでおり、リスクを可視化するための定期健康診断、特定健康診査、ストレスチェックなども企業の取り組みとして定着しています。
健康経営度調査は、こうした法律で求められている取り組みを超えた対応事項を評価する仕組みとなっており、労働生産性低下を防ぐ取り組みを幅広く多角的に展開しているほど評価が高くなる傾向があります。つまり、「ホワイト500」の認定企業では労働生産性低下の防止に向けた取り組みが積極的であると言えます。
(2)従業員のエンゲージメント向上
健康経営度調査では、心身の健康課題のリスク側面だけでなく、より生産性を高めるためのワークエンゲージメント向上や組織活性化に向けた取り組み、またそれらの成果に影響を与える要因についてもさまざまな観点で問われます。具体的には以下のような観点です。
・心の健康保持・増進に向けた職場環境づくり
・従業員自身の性差
・年齢特有の健康課題
・従業員を取り巻く環境(育児・介護と仕事の両立支援など)を意識した取り組みの状況
など
企業が従業員の個々の特性や環境に適した労働環境・機会提供を積極的に行うことにより、仕事や組織に対してポジティブな感情を抱きやすくなると考えられます。
※なお、エンゲージメントには「ワーク・エンゲージメント(仕事への活力や没頭感などを測る学術的指標)」と「従業員エンゲージメント(会社や組織への貢献意欲・愛着を測る指標)」の2種類があります。健康経営のガイドラインでも「従業員エンゲージメント」が就業関連指標の1つとして位置づけられ、健康経営の成果を測る結果指標として注目されつつありますが、両者は混同されやすいため、違いを意識して取り組むことが望ましいとされています。
(3)人的資本経営の深化
各企業の人的資本経営における開示内容を見ると、現状は数値の開示が主であり、ストーリー性・戦略性を意識した人的資本経営を進められている企業はまだ少ない印象があります。しかし、健康経営度調査では前述のとおりさまざまな領域での取り組みが問われます。
また、取り組み(人的資本への健康投資)効果などの定量情報を添えた上で定性記述を求める設問も設定されていますし、改定された健康経営ガイドラインおよび戦略マップフォーマットを読み解くと、KGI・KPIの整理や効果創出までのストーリー構築が重要であることがわかります。人的資本経営のワードが一人歩きしないようなストーリー性・戦略性を意識していく上でも、健康経営の取り組みレベルを上げていくことが有効であると言えます。
(4)企業ブランディング
「ホワイト500」認定に向けて取り組む過程そのものが、採用や対外発信で語れる具体的なストーリーと実績を生み、企業ブランディングを強化します。健康課題の可視化、方針・KPI設定、制度整備や社内浸透といったプロセスは、採用サイトやプレスリリース、IR資料での説得力ある発信素材となり、「従業員の健康に継続投資する会社」というメッセージの信頼性を高めます。結果として応募数や応募者の質、従業員エンゲージメントの向上につながるケースもあります。
認定取得後は、健康経営優良法人のロゴマーク活用や公式掲載により第三者評価が加わります。さらに、毎年の更新による継続認定は取り組みの持続性と改善の軌跡を示せるため、単年の認定以上にブランドへの寄与が大きくなります。実際に、認定の継続と情報発信により求人のエントリー数が3年で4倍になった事例も見られます。
「ホワイト500」の認定申請を行う際のポイント
──「ホワイト500」の認定申請を行う際のポイントについて教えてください。
「ホワイト500」の認定を受ける上でまず重要になるのは『活動のスケジューリング』です。そのためにも、健康経営度調査票は設問によって回答の対象となる期間が異なることを把握しておく必要があります。
回答の対象期間は大きく分けると2種類あり、回答内容の時期(前年度~当年10月)と評価結果受領時(当年12月)の取り組み状況とは時間差が発生します。そのため、健診結果など数値指標を回答する設問は前年度の実績を回答し、施策など取り組みに関しては前年度から調査票提出時(当年10月)までの状況を回答する形になります。これらを整理すると以下です。
・調査票の回答期間:
提出期間は毎年8月下旬~10月上旬
・実績数値の回答対象期間:
健康診断の実施および結果や休職・労働時間の集計、効果検証は前年度の実績を回答(特定保健指導の実施率は、取り組みの特性から前年度の特定健康診査の結果から抽出された対象に対する実施率を回答)
・取り組みの回答対象期間:
情報開示、各種制度/施策の実施および参加率の集計、組織体制の構築については前年度4月1日より調査票提出日までの取り組みが回答可能
また、効果検証については前年度の取り組みの実績について回答をすることになるため、効果検証に使用するデータの取得状況についても確認しておく必要があります。
調査票提出の直前まで対応できることは『制度・施策実行』になりますが、この評価ウェイトが『2』となるため、1つの取り組みが増えることによる影響はあまり大きくありません。そのため「ホワイト500」の取得に向けては、『評価・改善』に取り組むことが大切です。前述のとおり、制度・施策実行で問われる領域が幅広くなっていることもあり、取り組みの拡充に追われ、評価・改善の取り組みを十分に検討・実施できていない企業も見受けられます。自社にとって必要な取り組みや注力すべきポイントを意識する必要があります。
評価・改善を充実させていくためには、後述するフィードバックシートの活用や、自社の課題分析によって顕在化した課題解決のための目標設定と、要因解決のための取り組みを計画的に行っていくことが重要になります。目先の取り組みだけ拡充してもサステナブルな健康経営を推進していくことは難しいため、戦略の見直しを行いつつ、新たな施策検討をする場合は以下の効果検証ポイントも併せて確認できると良いでしょう。
<効果検証の設計に向けた確認ポイント>
・ターゲット設定:どのような人が対象なのか
・期待する効果:どのような状態からどのような状態に変えたいのか
・指標の設定:変化を確認するためにはどのようなデータを確認すれば良いか
・指標の測定方法と時期:どのような方法で指標を測定するか、いつ測定するか
・効果検証の実施時期:いつ誰が行うのか
「ホワイト500」の継続認定を受ける際の評価ポイント
──「ホワイト500」は継続的に認定を受けることが取り組みの推進やブランディング観点からも大切かと思います。継続認定を受けるにはどのような観点から取り組みを進めれば良いでしょうか。
「ホワイト500」は例年2割(100社程度)が入れ替わります。継続認定や評価のさらなる向上を目指すためのポイントには大きく以下3点があります。
(1)制度・調査票の変更ポイントを理解する
健康経営優良法人認定制度の特徴の1つとして、毎年調査票の設問が見直しをされることが挙げられます。継続的に「ホワイト500」の認定を受けていくためには、制度および調査票の変化ポイントを押さえておく必要があります。特に、令和6年度では配点変更による評価結果の影響が大きくなり、これまで以上に『経営層の関与』『育児・介護と仕事の両立支援』といった従来の産業保健活動の延長線上では対応しきれない領域の取り組みの重要性が増しました。
毎年7月・12月・3月に健康経営推進検討会(旧:健康投資ワーキンググループ)にて制度変更の検討や新たな観点の議論がなされています。開催日程の詳細や資料については経済産業省のサイトにて開示されていますので、随時チェックしてみてください。認定要件の追加や制度の領域の考え方は日々進化しており、直近では従来の健康管理を脱却したウェルビーイングの視点が多く導入されてきています。こうしたトレンド要素を取り入れた対応をしていくことは、調査票対応のテクニカルな部分では重要となります。
(2)フィードバックシートを活用して戦略を見直す
調査票提出後、12月に速報版、3月に確定版の調査票の評価結果が記載されたフィードバックが送付されます。前述した4つの側面の偏差値、4つの側面をさらに詳細に分解した詳細な13項目の偏差値、11項目に分類された健康課題の偏差値を確認することができるものです。13の詳細項目と11の健康課題から自社の弱点を読み解き、課題領域に関するアクションを検討・実施していくことによって、自社の健康課題の解決と評価のスコア向上を目指すことができます。
※参考:令和6年度 健康経営度調査フィードバックシート(サンプル)
また、データを活用した課題の深掘りをすることも有効な打ち手を検討する上では良い取り組みです。例えば、精密検査の対象者の生活習慣傾向やストレスチェックの高ストレス者の要因・傾向を分析することにより、打ち手の観点を絞ることができます。また、データの取り扱いは権限のある専門職によって行うことや、システムのベンダーから個人が特定できない形式に加工した集計データを提供してもらうなど、各種配慮が必要になる点には注意しましょう。
(3)体制基盤の強化
前述のとおり調査領域は毎年拡大しており、さまざまな取り組みが問われるため、活動の全体像を示して社内の連携・協力体制をつくることも重要になります。具体的には、経営層や産業保健スタッフの巻き込み、社内の理解促進に向けた勉強会、推進方針・戦略策定に向けた議論の場の設定など、こうした基盤を強化することも「ホワイト500」を継続的に取得するためには欠かせません。なお、自社だけでは対応しきれない場合は社外の健康経営コンサルタントに相談することも1つの策です。

「ホワイト500」認定企業の取り組み事例
──実際に「ホワイト500認定」を受けた企業様が具体的にどのような取り組みをされているかについて、永井さんがご支援された事例を教えてください。
近年、「ホワイト500」の認定を新たに受けた企業の取り組み例を紹介します。この企業では大きく以下2つの取り組みを実施しました。
(1)社内の関係部門との連携強化
調査票の領域が日々拡大している一方、健康経営専門の部署を設置する企業は少ないです。特に、健康推進の部門と人事労務部門とは部署が分かれていることも多い印象があります。そのような状態では社内連携はもちろん、活動やデータの連携もしづらくなるため、連携機会を意図的に設けて推進しなければなりません。
私が関与して新たに「ホワイト500」の認定を受けた企業においても、まさにこうした体制となっていました。そこで、健康経営に携わる部門の関係者を定期的に集めて、以下のような内容を毎月または隔月で議論するようにしています。
・調査票で求められる取り組みの役割分担の確認と進捗共有、相談
・健康経営推進検討会での制度動向の共有
・フィードバックシートから見える課題点の共有と改善に向けた取り組みの議論
・経営層とのコミュニケーション機会設定と内容の議論
(2)経営層のコミットメント向上に向けた仕掛け
経営層が施策や推進状況など健康経営に触れる機会を増やし、コミットメントを高めていくことが重要なのは前述した通りです。例えば、経営トップ自らがウォーキングイベントで歩数ランキングの向上に燃えていたり、同じ場所で楽しそうに施策に参加していたりする姿を見せることで、施策の盛り上がりが期待できます。また、日頃からの経営層が健康経営に関連する発信を意識的に行うことで、経営層の施策参加がパフォーマンスではなく健康経営を重要視していると感じられる状態をつくることも重要です。
私が関与した企業においても、年度初めや年始の挨拶、新入社員の入社式、社内報、研修冒頭の挨拶など、さまざまな機会を活用して発信を行ってもらいました。こうした経営層のコミットメントを引き出すためには、経営層に健康経営の位置づけを理解してもらうことが必要不可欠です。人的資本経営を意識したストーリーづくりと、共通認識を持つための経営層へのインプット機会を設けていくことで、健康経営に対する理解を深めていくことができると考えています。
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編集後記
企業のブランディングや従業員エンゲージメント向上などにも寄与する「ホワイト500」認定。認定を受けることはもちろん重要ですが、それに向けて自社内の環境や課題と向き合い、改善し続けていく姿勢こそが最も重要なのだと永井さんの話から理解することができました。時代と共に変化する認定基準を参考にしながら、自社の改善に継続的に取り組んでいきたいものです。







