賃上げは、なぜ“期待“ではなく“限界” を感じさせてしまうのか。調査で見えた、納得と説明の分かれ目
物価上昇や人材確保の必要性を背景に、企業における賃上げ・ベースアップの動きが広がっています。賃上げは従業員の満足度やモチベーション向上を目的とした重要な施策として位置づけられる一方で、受け止め方や意識変化は必ずしも一様とは限らず、期待した効果につながっているかを評価・説明することは容易ではありません。
そこで、企業に就業中の正社員1,236名を対象に、「ベースアップ」に対する意識調査を実施しました。
本記事では、賃上げの納得度と賃上げ後の意識変化、賃上げ・評価への納得度による違いや、説明の有無が納得度に与える影響まで、調査・分析した結果をまとめています。
▶︎調査レポート詳細版のダウンロードはこちら
目次
調査結果サマリ
調査対象:企業に就業中の正社員(管理職、⼈事を含む)
調査エリア:⽇本全国
有効回答数:1236件
調査期間:2026年2月27日~ 2026年3月2日
調査方法:Webアンケート調査
調査実施者:株式会社コーナー、株式会社マクロミル
主な調査結果
賃上げは⼀様にポジティブに受け⽌められているわけではなく、受け⽌め⽅に分断が⽣じている。
受け止め方は賃上げへの納得度で分かれ、納得できない層ほど「これ以上上がらない」や転職意向が強い。
賃上げの評価は金額だけで決まりにくく、「説明」「将来見通し」「評価とのつながり」といった納得と期待の設計に影響される。
賃上げの納得度
賃上げに対する評価は⼀様ではなく、納得度にばらつきが⾒られる。

賃上げについて最も多かった回答は「ある程度納得している」(37.9%)で、「非常に納得している」(4.5%)を含めると、納得している層は一定数見られます。
一方で、「どちらとも言えない」(28.2%)も少なくなく、賃上げの受け止めは必ずしも一様ではありません。さらに「あまり納得していない」(19.5%)と「まったく納得していない」(10.0%)を合わせると約3割にのぼり、賃上げが一律にポジティブに受け止められているわけではないことが分かります。
賃上げ後の意識変化
賃上げは意欲を高める層がいる一方で「変化なし」や「もう上がらない」と感じる人も多く、受け止め方に分断が生じている

賃上げ後の意識変化として、「仕事への意欲が上がった」(16.0%)など前向きな回答は一定数見られます。一方で最も多いのは「特に変化はない」(54.4%)で、「この会社ではこれ以上上がらないと感じた」(19.1%)や「転職を考えるようになった」(5.7%)も一定数存在します。
つまり、賃上げは“期待”を高める層がいる一方で、“限界”の認識につながる層もおり、受け止め方に分断が生じている可能性が示唆されます。
賃上げ納得度による受け⽌め⽅の違い
賃上げの受け止めは「納得できたかどうか」で大きく分かれ、納得できないと“上限のサイン”として諦めや転職意向が強まりやすい可能性が示唆される

賃上げに対する納得度別の意識変化を見ると、納得している層では「会社への期待が高まった」「仕事への意欲が上がった」といった前向きな回答が相対的に多く見られます。
一方で、納得していない層では「この会社ではこれ以上上がらないと感じた」や「転職を考えるようになった」の割合が高く、賃上げが期待ではなく“上限のサイン”として受け取られている可能性がうかがえます。
つまり、賃上げは実施そのものが効果を決めるというよりも、「納得できたかどうか」によって受け止め方が大きく分かれやすく、納得を得られない場合にはむしろ“諦め”や離職意向を強めてしまうリスクが示唆されます。
説明有無と納得度の関係
賃上げは金額だけでなく“意味づけ(説明)”で受け止めが左右されやすい

賃上げ額別に「納得している割合」を見ると、同程度の賃上げ幅でも説明がある場合のほうが、納得している割合が一貫して高いことが分かります。特に「1%未満」「1〜3%未満」「3〜5%未満」といった賃上げ幅が小さいゾーンほど、説明の有無による差が大きい傾向が見られます。一方で、賃上げ幅が大きい層でも、説明があるほうが納得度は高い結果となっています。
この結果から、賃上げは金額だけで評価されているわけではなく、「なぜその水準なのか」「この先にどうつながるのか」といった意味づけ(説明の設計)が、受け止め方を左右していると言えるでしょう。
まとめ
本調査から、賃上げは「期待が高まる」層がいる一方で、「変化はない」「この会社ではこれ以上上がらない」と感じる層も一定数存在し、一律にポジティブに受け止められているわけではないことが分かりました。また、受け止め方は賃上げ額そのものだけで決まるというより、納得度によって大きく分かれる傾向が見られます。
特に、賃上げに納得できない層では「これ以上上がらない」といった諦めや、転職を意識する動きが相対的に強まる一方、納得できている層では仕事への意欲や会社への期待につながりやすい構図がうかがえました。
だからこそ企業には、賃上げを単なる処遇施策として終わらせず、「なぜこの水準なのか」「将来の処遇とどうつながるのか」をセットで設計し、説明と運用に落とし込む姿勢が求められます。こうした接続が見えることで、賃上げは「期待外れ」ではなく、「次につながるもの」として受け止められやすくなるはずです。
本レポートが、賃上げの効果を高め、従業員の納得感とエンゲージメント向上に向けた一助となれば幸いです。
「ベースアップに対する意識調査レポート」 調査詳細版ダウンロード

※資料および本ページにて記載しているデータおよび情報を引用・転載する際は出典を明記していただけますようお願いいたします。
※出典明記の際には弊社HPのURLも併記お願いいたします。