「オウンドメディアリクルーティング」で採用成果を出すポイントを解説

近年、求人広告などの外部メディアだけでは十分な採用成果が得られなくなってきたことを受け、自社メディア(=オウンドメディア)を活用した採用手法が以前から注目されています。
今回は、この領域に知見を持つパラレルワーカーの方に、「オウンドメディアリクルーティング」の概要から設計の流れにいたるまでお話を伺いました。
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目次
「オウンドメディアリクルーティング」とは
──「オウンドメディアリクルーティング」の概要や特徴について教えてください。
「オウンドメディアリクルーティング」とは、企業が自社でブログやWebサイトなどにおいて運営するメディアを活用して採用活動を行う手法のことです。企業が自ら情報を発信するため求職者に対して企業の魅力・文化・働き方などを直接伝えることができるものであり、求人サイトなどの外部メディアに依存することなくターゲットに合わせた採用活動が可能になります。
この「オウンドメディアリクルーティング」の特徴は大きく以下3つです。
(1)企業のストーリーや価値観を自由に伝えられる
企業のWebサイト・ブログなどに企業文化・働き方・従業員インタビューなどを自由度高く掲載することができます。それにより、求職者に企業の内情をより深く理解してもらうことができます。
(2)ターゲット層との接点強化できる
特定の業界や職種に特化したコンテンツを発信することにより、自社が採用したいターゲット層や専門性を持つ求職者との接点を高めることができます。
(3)ブランドイメージの強化ができる
オウンドメディアで求人情報だけでなく企業の雰囲気や価値観・成長機会などを具体的かつ継続的に伝えていくことにより、企業のカルチャーやカラーなどの認識を強めてもらい、企業としてのブランディングにも寄与します。
一般的な求人サイトにおける企業ページでは、どうしても基本的な求人情報(応募資格・職務内容・給与など)がメインの情報となってしまいます。また、求人サイトに企業について紹介するページがある場合もありますが、他企業と並んで表示されるため競争が激しく企業が伝えたい情報が埋もれがちになってしまいます。
その点、「オウンドメディアリクルーティング」の場合は求人情報だけでなく、企業のカルチャーや成長機会などの広範囲な情報を自由度高く自社のペースで発信できるため、求職者に自社の魅力をより深く伝えることができ、差別化を図りやすい利点があります。
「オウンドメディアリクルーティング」が注目される背景とメリット
──「オウンドメディアリクルーティング」を強化している企業があると聞きます。その背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
株式会社TalentXが従業員数30人以上の会社で働く人事・経営者640名を対象に実施した『採用オウンドメディアに関する実態調査』によると、「オウンドメディアリクルーティング」を運用している企業が57.9%、運用する予定がある・検討中である企業が25.1%と、運用意向まで含めると83%もの企業が「オウンドメディアリクルーティング」に前向きであることがわかります。また、約97%の企業が『オウンドメディアをやって良かった』と回答するなど、ほとんどの企業がその効果を実感している様子も明らかになっています。
このように「オウンドメディアリクルーティング」が強化されている背景には、大きく以下3つがあると考えています。
(1)採用難易度の向上(求職者の母数の減少)
少子化や人口減少に伴い、労働市場における求職者の数が減少しています。こうした求人市場の中で企業が採用競争力を持つためには、他の企業との差別化が必要です。オウンドメディアを通じて企業の文化や価値観を深く伝えることで、他社にはない自社の独自性を打ち出し、その企業に共感する求職者を惹きつけやすくなります。
(2)採用コストの削減
外部の求人広告やサイトに依存する場合、掲載費用や手数料(人材紹介なども含む)がかかりますが、「オウンドメディアリクルーティング」であれば既存のメディア(ブログ・企業サイトなど)を活用するため外部媒体にかかるコストを削減できます。また、一度作成したコンテンツは繰り返し利用でき会社の資産となるため、長期的な視点で見てもコスト面でメリットがあると言えます。
(3)ブランディングの重要性の高まり
就業者の価値観が多様化することにより、求職者はより自分自身の価値観や考え方や働き方に個別に合っている企業を探すようになってきたと思います。そのような求職者に対して自社をブランディングして認知してもらい、魅力を感じてもらうことがより重要になってきていると思います。その中で「オウンドメディアリクルーティング」にて、求職者に対してビジョン・働き方・従業員の声などを積極的に発信することで、企業のブランドイメージを強化し且つ適切に伝えることができます。
──メリットの多い取り組みであることはわかるのですが、一方でデメリットもあるのでしょうか。
確かにメリットの多い「オウンドメディアリクルーティング」ですが、デメリットもいくつかあります。良い面だけを見てスタートしても、デメリット面に後々気づいて継続できなかった──なんて失敗例はよくありますので、メリット・デメリットの双方を踏まえた上で導入是非を検討していきたいものです。以下にメリット・デメリットを整理しましたので、ぜひ参考にしてみてください。
■メリット
(1)ターゲット層の絞り込みと効果的なアプローチ
オウンドメディアを活用することで、特定のターゲット層に向けた情報発信ができます。例えば、特定の技術や職種に特化したコンテンツの発信により、特定のスキルを持った求職者にアプローチしやすくなります。
(2)長期的な効果創出
求人広告は一般的に掲載期間が限定されているため、そこからの反響も一時的なものが大半です。一方、オウンドメディアではコンテンツを積み重ねていくことができるため、時間が経過するほど情報が蓄積され、積みあがった情報が継続的に採用活動をサポートしてくれます。結果、求職者が企業を知るきっかけも増えるため、時間をかけて長期的に採用活動を強化できます。
(3)応募者の質の向上
企業の文化や働き方に共感した応募者が集まるため、入社後のミスマッチを減少させることができます。オウンドメディアを通じて求職者と企業の相性を事前に確認できるため、採用後の定着率や満足度を高められる可能性もあります。
■デメリット
「オウンドメディアリクルーティング」の難易度が高い理由は、シンプルに媒体としての認知がなされていない状態からのスタートとなるためです。一方で人材会社などが運営している求人媒体に自社ページを掲載している場合は、求人媒体自体がプラットフォームメディアとして認知されているため、自社の認知がなかったとしてもユーザーに発見してもらうことが可能です。
(1)運用難易度が高い
オウンドメディアを運用するには、コンテンツの企画・制作・更新など日々の管理が必要不可欠です。定期的に情報を更新・提供し続けるためには、それらを担当する人員はもちろん、それ相応の時間的なコストも発生します。また、コンテンツの質を保つためには専門的なスキルを持つ人材が必要になることもあるため、そうした人材をどう確保するかも難しい点の1つです。
(2)制作コストの増加
高品質なコンテンツを制作するには、デザイン・ライティング・撮影など外部の専門家を雇う必要がある場合があります。特に、動画コンテンツやインタビュー記事などは制作に時間とコストがかかるものなので、制作体制とコストについては事前に検討しておかなければなりません。
(3)即効性が低い
「オウンドメディアリクルーティング」の効果は、集客の難易度が高いこともあり、すぐに結果として表れるわけではありません。コンテンツの効果を測定するためにはそのメディアへのアクセス数(どのくらいの人がメディアを見たか)・エンゲージメント率(訪問者がそのメディアに対してどれくらい積極的に関わっているか)・応募者数(メディアを通してどのくらい応募に至ったか)などの指標を継続的に追い続ける必要がありますので、効果を実感するまでには少なくとも数カ月単位の期間がかかります。そのため即効性を求める企業には向いていません。応募数など成果が遠い数値のみを追ってしまうと目的とずれてしまう可能性があるため注意が必要です。

「オウンドメディアリクルーティング」導入前に検討すべきポイント

──「オウンドメディアリクルーティング」を効果的に運用継続するためには、どのようなポイントを事前に検討しておけると良いでしょうか。
「オウンドメディアリクルーティング」の導入前に検討すべきポイントには、大きく以下6つがあります。
(1)費用対効果の計算方法
「オウンドメディアリクルーティング」を導入する際にまず重要になるのは、費用対効果(ROI)をどう計算するかを明確にしておくことです。ここで言う費用には、以下のようなものが含まれます
・コンテンツ制作費
・運用人員コスト
・ツールやシステムの導入費用
・広告費
など
これらの費用に対してどれくらいの効果(応募者数、採用率、入社後定着率、採用後の業績向上など)が得られるかを予測し、「オウンドメディアリクルーティング」にどれくらいの費用を投資すべきかを判断します。一般的には採用単価を軸に効果検証をするケースが多いですが、あくまでオウンドメディアはブランディングに軸を置いた施策であるため、即効性の出にくいことを加味して応募単価からROIを計算することも多いです。
なお、ROIを計算する際は求人媒体と比較して初年度~3年目くらいまでは高騰することを見込んでおくと良いでしょう。予算検討の際に経営陣とのコミュニケーションなどが発生すると思いますが、その時に最も大切なことは採用活動において大切なプロセスや求職者の考え方・動向を踏まえて、オウンドメディアという施策そのものの有効性を説明することが重要です。
(2)コンテンツ内容と年間スケジュール作成
オウンドメディアリクルーティングで成果を出すためには、まず『求職者にとって価値のある情報』を発信することが大前提です。企業の魅力を強く打ち出したいからといって、一方的に企業側の情報のみを押しつけるのではなく、求職者が知りたい情報や役立つノウハウを分かりやすく提供することが重要になります。
また、質の高いコンテンツを継続的に発信することも欠かせません。読み応えのある記事や、社員インタビュー、職場の雰囲気が分かるビジュアルコンテンツなど、多角的な切り口で情報提供を行い、求職者が『この会社で働いてみたい』と思えるような魅力づくりを意識しましょう。コンテンツの質と更新頻度の両面を適切に管理することで、自然と検索エンジンの評価も高まり、SEO対策にも好影響を与えます。
さらに、コンテンツを定期的に発信するためにも年間を通じた計画的なスケジュールを立てることが大切です。例えば、季節ごとの行事やイベント、採用スケジュールに合わせて、何をいつ発信するのかをあらかじめ決めておくと、運用がスムーズになります。
具体的には、以下のような手順を検討するとよいでしょう。
■テーマの洗い出し
求職者が関心を持ちそうなテーマやキーワードをリサーチし、社内の状況や季節イベントなどと照らし合わせてテーマの候補をピックアップします。
■編集カレンダー(年間スケジュール)作成
各テーマを、どのタイミングで、どの形式(記事、動画、SNS投稿など)で公開するかを月ごと・週ごとに整理します。
■コンテンツ制作体制の確認
記事執筆やデザイン作成など、誰がどのように進めるのかを決めておきます。外部のライターやデザイナーを活用する場合も、スケジュールに沿って依頼ができるように準備しておきましょう。
■運用後の振り返りと改善
公開したコンテンツのアクセスや反響を定期的にチェックし、より効果的な企画やコンテンツに磨き上げられるように、振り返りの場を設けて実施していきましょう。
このように、コンテンツの質と更新頻度、そしてそれを支える年間を通じたスケジュール管理を徹底することで、オウンドメディアリクルーティングの成果は着実に高まっていきます。継続的な情報発信によるSEO効果の向上も期待できるため、採用候補者に見つけてもらいやすいメディアへと育てることが可能です。
(3)人員確保やチーム組成
「オウンドメディアリクルーティング」の運用に必要な人員を事前に確保してチームを組成します。少なくとも以下4つの役割を担う人員が必要です。
①コンテンツ制作担当者:
文章作成、動画制作、インタビュー実施などを担当。ライター、エディター(編集)、ビデオグラファーなどさらに細分化するケースもあります。インターンや内定者などの協力を得てコストを抑えつつ実施するケースも多いです。
②デザイン担当者:
ビジュアルコンテンツのデザインやユーザーインターフェースの改善を担当します。
③マーケティング担当者:
SEOやSNS戦略を含む集客活動を担当します。
④分析担当者:
コンテンツのパフォーマンスの測定・データ分析・改善案提示などを担当します。一般的にはマーケティング担当者が兼務するケースが多いです。
(4)ターゲティングやペルソナ設定
採用したい人材像を踏まえて、オウンドメディアを見てもらいたいターゲット層やペルソナを設定します。
・ターゲット層:求めるスキル、経験、価値観を持つ求職者を明確に定義します。
(例)文系・理系、学校群、地域など
・ペルソナ設定:ターゲット層を代表する人物(=ペルソナ)を設定し、その人物が興味を持ちやすいコンテンツや情報を提供できるようにします。この際、SEO観点でキーワード選定も行えると良いでしょう。
(例)新卒で営業職を目指す女性、ITエンジニアとしてキャリアアップを目指す男性、など
(5)他社との差別点の洗い出し
オウンドメディアで他社と同じような内容を発信していても、『この企業の選考に進んでみたい!』とはなかなか思ってもらえないものです。事前に他社と差別化できる自社ならではの魅力を洗い出し、そこをメインに訴求できるように準備します。例えば、以下のような点で差別化できるとターゲットの印象にも残りやすくなるはずです。
・企業文化の特徴:フラットな組織、働きやすさ、柔軟な勤務体系など
・キャリアパス:明確なキャリアアップの道筋や成長機会の提供
・福利厚生や待遇:他社と差別化される特別な福利厚生や報酬制度
ちなみに企業文化など、客観的な意見に基づいて判断されるものは、人事担当者の意見だけではなく、社員アンケートやインタビューなどを用いてリアルな情報を収集し、その内容を盛り込むことがポイントになると考えています。
(6)チャネル・集客経路の選定
オウンドメディアの目的やターゲットによって、最適なチャネル・集客経路は異なりますので、自社の目的に適したものを検討しましょう。
■コンテンツの種類:
求職者に役立つ情報(就職活動のいろはやヒント)、従業員インタビュー、職種の紹介、企業文化の紹介、業界動向の記事など、ターゲット層が特に求めている情報を選定します。
■チャネル選定:
自社Webサイト、ブログ、SNS(X、Instagram、tiktokなど)、YouTubeなど、ターゲット層が最も利用しているチャネルを選択してください。求職者に情報を届けるという主たる目的を忘れずに各媒体の特性を捉えて選定することが重要です。例えば、自社がターゲットとするペルソナが動画コンテンツを好む傾向があるのであれば、youtubeやtiltokなどの動画コンテンツチャネルが適しているかもしれません。
■集客経路:
SEO対策(検索エンジン最適化)、SNS広告、リスティング広告、インフルエンサーとのコラボレーションなど、集客経路も多様にあります。ここもターゲット層にアプローチしやすいものを選定する必要があります。この集客経路は例えば以下の様に、オウンドメディアがどのステージにいるかによっても変わることにも留意しましょう。
・初期:集客コストを抑えつつ人件費に重点が置かれ、広く集客が可能な経路が重要視される。
・中期:応募件数が増加しはじめ、集客コストの割合を増やしはじめる
・熟練期:既存の集客チャネルやコンテンツチャネルだけではなく、その他のチャネルを追加・増やしていく。人件費よりも集客コストに重点が置かれる。
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~とりあえずでは続かない「採用オウンドメディア」の立ち上げ方~
内製・外部活用のメリット・デメリット
──「オウンドメディアリクルーティング」を自社の社員のみで進める方法と、外部コンサルタントなどを活用する方法があると思います。どちらの進め方が良いのでしょうか。
個人的には、外部コンサルタントやアドバイザーに協力いただく形を推奨します。なぜなら、「オウンドメディアリクルーティング」の設計・運用には専門的な知識やスキルが求められるからです。特に、SEOやコンテンツマーケティング、分析に関する知識を持っている専門家が自社内にいる企業は稀だと思いますので、適切に外部の支援を受けて効率よく成果を上げることを検討した方が良いでしょう。
また、外部のコンサルタントやアドバイザーは多くの企業の事例を経験しており、最新の手法やトレンドにも精通しています。そのため、社内で見落としていた新たなアイデアやアプローチを取り入れることもできるようになります。ただし、ずっと外部の支援を受け続けることはコスト観点から考えても難しいものです。施策の初期段階では外部の力を借りて方向性を定め、段階的に自社内での運用にシフトしていく形にできると理想的だと考えています。
もちろん社内で対応できる方がいる場合などは上記の限りではありません。
以下のメリット・デメリットも踏まえた上で、どのような形で進めていけると良いかを検討してみてください。
■自社の人員のみで進める方法
<メリット>
・コスト削減:外部活用による費用を削減できます。
・社内の知識やノウハウ活用:自社の企業文化やビジョンは、社内メンバーが最も理解しています。そのため、オウンドメディアに発信する内容も自社の理念に合致しやすく、情報発信に一貫性が出ます。
・コミュニケーションの円滑さ:外部人材を介さずに進めることで、社内での情報共有・意思決定がスムーズに行えます。
<デメリット>
・人員やリソースの不足:オウンドメディアの運用には多大な労力とスキルが必要です。特に、コンテンツ制作やSEO対策、マーケティング戦略の立案などは専門的な知識を要するため、既存の人員ですべてを賄うのは至難の業です。
・視野の狭さ:自社メンバーだけではどうしても社内の視点に偏りがちです。特に、業界外の事例や最新のトレンドを取り入れることが難しくなります。また、採用活動に関する知見が不足している場合、限られた視野で戦略を進めてしまうリスクもあります。
■外部コンサルタントやアドバイザーを活用する方法
<メリット>
・専門的な知見と経験:外部人材は複数企業に対するコンサルティング経験を持っていることが多く、業界の最新トレンドや効果的な手法に関する知識を豊富に持っています。これにより、自社では気づけない視点を提供してもらえる可能性があります。
・第三者的な視点:外部人材は社内の文化や常識にとらわれることなく、客観的に評価やアドバイスを提供してくれます。これにより、社内で見逃していた課題や新たなアプローチを提案してもらえることも多いです。
・リソースの効率化:外部人材を活用することで時間やリソースを効率的に配分できます。特に、短期間で効果を出したい場合に有効です。また、彼らが指導やサポートを行い、自社の担当者がそれを実行する形で進められるため負担を分散させることもできます。
<デメリット>
・コストがかかる:外部人材の活用には費用(主に月額)が発生します。予算が限られている場合やコストを抑えたい場合には、負担が大きくなる可能性があります。
・社内での知識蓄積が難しい:外部人材に頼りすぎると、社内に必要なノウハウが蓄積されません。外部の支援なしでは施策が進められない状態になることもあり得るため注意が必要です。
「オウンドメディアリクルーティング」の参考事例

──「オウンドメディアリクルーティング」導入・検討時の参考になる企業事例やアワードなどについて教えてください。
日本の国内企業においても多くの企業が「オウンドメディアリクルーティング」に取り組んでいます。オウンドメディアの特性上、継続するための組織力・資金力が必要なことからどうしても大手企業の事例が多くなりますが、その中でも参考にしやすい事例について3社ほど紹介します。
■サイバーエージェント
サイバーエージェントは、自社の採用活動において「オウンドメディアリクルーティング」を積極的に活用しています。特に、『CA Tech Blog』や『サイバーエージェント採用サイト』を通じてエンジニアのリアルな声や仕事の内容を発信しています。また、インタビュー記事や社内の仕事風景が動画で紹介されており、どのような環境で働くのかを求職者が具体的にイメージしやすいように構成されています。企業文化の透明性と候補者へのリアルな情報提供を重視した事例と言えるでしょう。
■楽天
楽天は、動画コンテンツや従業員インタビューを通じて企業文化を発信しています。例えば、『楽天社員の一日』や『Rakuten Culture』といったテーマで従業員の日常や企業の価値観を紹介するコンテンツを作成し、求職者に直接アプローチしています。企業の価値観と働く環境が強調されており、働くイメージがつかみやすい内容になっています。
■DeNA
DeNAが運営する採用ページやオウンドメディアの『フルスイング』では、従業員の実体験をストーリー形式で紹介することに力を入れています。特に、社内の日常や活動、会社の文化を伝えるコンテンツに重点を置き、動画やインタビュー記事を多く掲載しています。また、インタラクティブコンテンツを通じて求職者との双方向のコミュニケーションを促進しています。
また、人事の各種取り組みを評価するアワードがあります。これらの受賞を目的にする必要はありませんが、受賞事例などは参考にしてもらえる部分も多いため、一度目を通してもらえると良いと思います。
採用活動における革新的な取り組みを評価するアワードです。「オウンドメディアリクルーティング」を活用している企業が受賞することも多く、特にコンテンツの質やエンゲージメントの高さが評価されます。企業の採用ページのデザインやコンテンツの伝え方が基準として重視される点も特徴です。
──「オウンドメディアリクルーティング」にもトレンドがあるように思います。近年にはどのような流れがあるでしょうか。
近年、特に増えているのは『動画コンテンツ』です。従業員インタビュー・企業紹介動画・オフィスツアーなど、求職者が企業の雰囲気を視覚的に理解できるコンテンツが主流となっています。特に、短い動画で企業の魅力を効果的に伝える方法が人気です。また、アニメーションやインフォグラフィックを多用する企業も増えています。なお、モバイルユーザーをターゲットにしたモバイルファーストのデザインが主流となっていることも動画コンテンツを後押ししていると考えます。特に、若年層の求職者をターゲットにする場合はスマートフォンでの閲覧に配慮したUI/UX設計が重要です。
コンテンツ面では、従業員ストーリーを伝えるコンテンツが増加しています。特に、従業員の1日密着は求職者にとっても企業のカルチャーや実際の働き方を知る上で非常に有益であり人気のコンテンツです。中には『従業員のタレント化』が進んでいる企業もあり、企業の人間味や信頼性を高める重要な要素になっています。
また、求職者とのエンゲージメントを高めるためにインタラクティブなコンテンツ(クイズ、アンケート、自己診断ツールなど)も多くの企業に導入されています。これにより、求職者は自分に適した仕事や企業を見つけやすくなるだけでなく、企業側も候補者の適性をよりよく理解することができます。
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編集後記
従来の採用活動と言えば、外部の求人サイトなどに情報を掲載して求職者からの応募を待つのが一般的でした。しかし、近年では自社の魅力を自由に発信することで積極的に求職者とコミュニケーションを図ろうとする企業も増えてきています。「オウンドメディアリクルーティング」の導入には組織力・資金力が必要になりますが、着実に取り組めれば自社採用力を大きく向上できるはずです。外部人材の活用も視野に入れながら、導入検討を進めてみてはいかがでしょうか。