結果につながる“生きた制度づくり”。人事制度の設計・運用コンサルタント
澤上さんは、人事制度設計をはじめ、採用業務や人材育成、評価制度構築など、幅広い領域で企業支援を手掛けている人事のプロ。プライム上場の製薬会社からスタートアップ企業まで、企業規模も業界も問わず、取引先を広げています。現在は独立して人事コンサル、アドバイザーとして活躍中ですが、これまでに2つの会社で人事を経験してきました。
最初に入社した大手SIerではHRスタッフとして人材の育成プログラムを手掛け、次世代リーダーの育成に注力。2社目となったポイントサービスのジョイントベンチャー企業では、人事の責任者を務めてきました。多種多様な業務経験から学んだ知見を活かして、人事制度設計のプロとして信頼を集めている澤上さん。クライアントの期待に応え続けている秘訣や自身が考える強みなどについて詳しくお話を伺いました。
<プロフィール>
澤上 和弘(さわかみ かずひろ)
大手SIerのHRスタッフとして業務経験を積み、ポイントサービスの運営企業での人事責任者兼プレイングマネージャーを経て独立。現在は法人として、製薬業界、専門商社、テック系企業、金融機関など幅広い業界に取引先を広げ、人事制度設計を中心としたコンサルサービスを展開。クライアントの経営環境に合わせた人事制度改革、人材育成プログラムの構築、労働環境整備、各種システム・HRテックの導入・運用などを得意とする。
▶このパラレルワーカーへのご相談はこちら
目次
大手とベンチャーで学んだ異なる知見
■最初の会社で得たコンサルと企業人事の2つのスキル。
大手SIerではHRコンサルとしてプロジェクトに参画し、人事制度改革や現在で言うタレントマネジメントシステムの構想策定などをなどを担当して、徐々に会社全体のHR領域や人材育成にも携わるようになっていきました。お客様向けと自社のプロジェクトの双方の経験を積めたことが、その後のキャリアに大きく役立ちました。
育成プログラムでは、サクセッションプランの対象になる次世代リーダーの育成に力を注ぎ、事業戦略に沿った人材の育て方やキャリアデザインの構築を学べたと思います。最終的には、グループ全体の人材育成を横断的に手掛けるセンター長まで任せてもらったのですが、さらに自分の専門性を高めるため、新しい環境を求めるようになりました。
大手企業にも素晴らしい点はあるのですが、自分がやりたいこと、経験したい仕事をするまでには、ある程度の時間が必要です。よりスピード感を持って幅広い業務を経験したいと思って、次の職場として選んだのが、ポイントサービス運用会社のジョイントベンチャー企業でした。
■大手企業とベンチャー企業での経験を経て独立。
次の会社ではベンチャー企業らしい風土の中で、人事全般のマネジメントから、総務や社内ITの統括までいろんな役割を担当しました。人事の責任者でありながら、私自身も実務的な業務を行うプレイングマネージャーを務め、最終的にはリーダークラスの人材を育てる仕事まで経験しました。
大手とベンチャーの2つの異なる環境で人事の仕事ができたことは、私の強みになっています。大手SIerでは、さまざまな人事制度の構築に関わり、実務を通じて深く広い知識を得ました。一方のジョイントベンチャー企業では、ジョブ型人事制度の導入などを経験して、制度を作るだけでなく運用まですべて担当しました。そこで体験した仕事は、後に私の強みに変わっていきます。
■顧客の希望に応じた提案で関係性を構築。
ジョイントベンチャー企業を経て、2019年に独立し、2021年には法人化しました。現在は、製薬業界から金融機関、商社、サービス業まで、いろんなお客様の人事まわりのお手伝いをしています。古くからお付き合いいただいている顧客もあれば、紹介を通じて取引が始まったお客様、さらにはCORNERを通じて知り合ったクライアントまでさまざまです。
業界も規模も違う取引先ですが、常に意識しているのが、成果や結果だけに捕らわれない関係性を作ること。最初は採用活動のお手伝いだけの取引だったお客様が、人事制度や評価制度の設計にまで依頼の幅を広げてくださるケースは珍しくありません。
現場を知っているからこそ、生きた制度がつくれる
■顧客の希望に応じたアプローチから取引は始まる。
取引先との関係構築で重要なのは、定型的なやり方を当てはめるのではなく、お客様が実現したいのは何かを考えることです。等級制度や報酬制度、評価制度などの構築が最終的な目的になるのですが、いきなり形あるものを作ろうとしてもなかなか結果に結びつきません。それよりも、新しい人事制度を通じて顧客が何を目指しているのかをしっかりとすり合わせしていけば、期待に応えるやり方や道筋が見えてくるものです。
とはいえ、アプローチ方法は一つとは限りません。定量的な部分に着目して理詰めで顧客の理解を得る場合もあれば、よりソフトな部分で企業カルチャーに合わせてアプローチしていくケースもあります。いずれの場合であっても、いきなり「どうやっていくか」を先に決めるのではなく、相手が何に関心を持っていて、どんな説明なら納得が得られるのかを優先して考えるのが重要です。
■過去の経験はすべて今につながっている。
今、自分で顧客を持ちながら仕事をしていて、過去の経験で役に立たなかったものは一つもないと感じています。人事制度の設計だけでなく、実際の現場での運用まで担ってこれたことが大いに生きています。上流工程から下流工程まで知っているからこそ、生きた制度をつくれるのだと思います。
例えば、どんなによく考えられた制度でも、いざ運用となると機能しないパターンがあります。原因は、制度運用という下流工程を知らない人が設計するからです。そうではなくて、本当に運用できる制度設計になっているのかをしっかりと検討すれば、つくって終わりにならない本物の仕組みをつくれるはずです。ときには、運用面から制度を考えることもでき、そういった点が自分の強みになっていますね。
■困難な状況でも、丁寧な仕事を怠らない。
いろいろなお客様を担当していると、中には困った状況から始まるケースもあります。あるクライアントでは、最初の打ち合わせ段階から経営者の方が不満を爆発させていらっしゃって、会議の雰囲気も決して良くありませんでした。結果的にうまくできたかどうかは分かりませんが、そういった場面でも経営者の方の気持ちを理解して、丁寧な仕事を心掛けていけば、何とか前に進んでいくものです。
私たちは、お客様に評価されてこそやりがいを感じる仕事をしています。一度つながりを持てたお客様とは、その後も継続して取引ができるよう、努力を怠らないようにしています。
「献身」「誠実」「尊重」が、自分なりの仕事のポリシー
■自分を成長に導く3つの心掛け。
独立してから常に心掛けているのが、「献身」「誠実」「尊重」の3つです。「献身」は、しっかりとお客様をサポートしていく姿勢のこと。チームでプロジェクトを進める場合には、困っているメンバーがいれば進んでサポートするようにしています。そして、ハードワークをいとわないこと。今どきではないかもしれませんが、汗をかく仕事も手を抜かないのがポリシーです。
「誠実」の部分では、相手に対してはもちろんのこと、自分の仕事に対しても当てはまります。自分が持っている知識や経験だけでうまくやろうとするのではなく、常に世の中で何が起こっているのか、どのように変化しているのかに目を配り、情報をキャッチアップしていくのがプロの仕事。インプット量を増やして、良質なアウトプットを生み出していくよう気をつけています。最後の「尊重」は、どんな相手もリスペクトすることを忘れないための心掛けです。
■「何とかしてくれる」と思われるコンサルタントを目指して。
これまでにいろんなお客様や案件に関わってきて、それなりに提案の引き出しを持っているつもりですが、最初から決めつけてしまわないよう気をつけています。相手に応じて使い方を切り替えるのがうまくやっていくコツ。企業のフェーズやカルチャーなどを考慮し、柔軟性に富んだ提案や対応ができるよう意識しています。
相手から「何とかしてくれるだろう」と期待感を持っていただけると嬉しいですね。進め方を最初から形あるものを作ろうとするのではなく、本当の目的は何かを考え、本質から課題を解決していくのが私のスタイル。案件がスタートする際には、この部分を見落とさないよう、お客様と時間をかけてコミュニケーションを取るようにしています。
■磨きあえる人と一緒に仕事をしていきたい。
現在は自分一人で仕事をしていますが、今後は人も増やして、一緒に成長していければと考えています。決して大きな組織を作りたいわけではなくて、お互いに切磋琢磨できるビジネスパートナーがいれば嬉しいです。今のところは、いろんなお客様と仕事ができて、それが自分の成長にもつながっているので満足しています。
将来的には、企業再生やリブランディングを望んでいるお客様を担当してみたいと思っています。比較的大きな企業との取引が多かったので、規模は小さくてもお客様と一緒に、地域の課題を解決していくような仕事も経験してみたいですね。そういった案件があれば、ぜひ任せてください。