脳科学や心理学の理論を用い、「変化」を生み出すコンサルタント
新卒でシステムエンジニアとしてキャリアをスタートした吉岡さんは、8年半にわたり勤務した後に人材育成業界に転じ、現在は組織開発・人材育成のコンサルタントとして活躍されています。一見少し珍しいキャリアに感じますが、吉岡さんにお話を伺う中で明確なキャリアの軸をお持ちだと分かりました。
今回のインタビューでは、そんな吉岡さんにこれまでのキャリアや仕事をする上で大切にしていること、今後のビジョンなどを語っていただきました。
<プロフィール>
吉岡 恵(よしおか めぐみ)
大学卒業後、大手メーカーグループのSIerに入社。8年半にわたり勤務し、アプリケーション開発やCRMパッケージトレーニング講師、プロジェクトマネジメント、プリセールスなど多岐にわたる業務に従事。その後、人材育成業界に転じて組織開発・人材育成のコンサルタントとして活躍。経営層との議論を軸に、経営課題から人材育成課題への落とし込み、課題を踏まえた育成プログラムの企画・運営に10年以上取り組み、多様なプロジェクトを経験する。具体的には、次世代リーダーや女性リーダー育成、理念浸透、営業力強化など機能強化の研修や提供を行い、数々の受注実績や取引拡大を達成。また、リーダーシップや思考領域の講師としても活動。現在は独立し、脳科学や心理学の理論を用いて、メンタルヘルスやハラスメント防止対策、組織のパフォーマンスとモチベーションを引き出すコミュニケーション、自分軸づくりなどの研修を実施している。
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目次
「人が元気になるお手伝いがしたい」が一貫したキャリアの軸
■メンタル不調になった同僚や後輩の様子から、人材育成業界に興味を持つ。
「人を元気にするお手伝いがしたい」私がキャリア選択の際に大切にしている軸です。小学生の頃は看護師に憧れていましたが、自分が学んだことで医療業界に貢献したいとシステムエンジニアになる道を選択。大学卒業後、医療業界向けシステムも開発しているシステム会社に入社しました。
その会社では8年半にわたり、アプリケーション開発やCRMパッケージトレーニング講師、プロジェクトマネジメント、プリセールスなど多岐にわたる業務を経験。リーダー候補としても期待してもらっていました。しかし当時のIT業界はなかなかの激務で、同僚や後輩の中にメンタル不調になる人が多かったんです。そういった状況を目の当たりにしながら、不調になる前に止められないかと考えるようになりました。
そんなときたまたま参加した研修で、2,3日ながら参加者が劇的に変わるのを目の当たりにしました。その様子を見て、人材育成や研修で物事の捉え方が変わったり、視野が広がることで、メンタル不調の予防につながるんじゃないかと考えたんです。「人を元気にするお手伝いがしたい」という軸にもつながると思い、人材育成業界への転職を決めました。
■グロービスに入社し、人材育成・組織コンサルタントのキャリアをスタート。
グロービスへの入社を決めたのは、採用セミナーで聞いた話に共感したからです。カスタマイズ研修部門の責任者が話していたのですが、「私たちは知識を身につけてもらうというより、行動を変えていくんだ」と。私自身、周りで体調を崩す人を見ている中で、知識のインプットだけでは変化がなく、行動を変えていくことが必要だと感じていました。こうした背景から、グロービスで人材育成・組織コンサルタントに挑戦することを決めました。
入社後はカスタマイズ研修部門で、企業の経営課題の解決に向かうプログラムや組織開発の企画・運営を担当しました。当初は管理職向けや企業の中でもトップ層の方を対象とする研修を担当することが多かったのですが、企業の中間層で日々苦労している方々向けの研修を担当したいと希望していたところ、該当案件が来た際に任せてもらえるようになり、気づけば「その領域は吉岡」と認識してもらえるようになりました。経験を積むうちに裁量も大きくなっていき、自分なりにプログラムをアレンジできるようにもなっていきました。
■NLP理論や心理学を専門とする先生との出会いをきっかけに独立することに。
グロービス在籍時に修士を取ることになった際、心理学について学びたいと情報収集を始めました。そこで出会ったのが、NLP理論(Neuro Linguistic-Programming/神経言語プログラミングの頭文字から名づけられたもの。心理学と言語学の観点から新しく体系化された人間心理とコミュニケーションに関する学問。現在は人材育成の領域においてビジネススキルとして定着している)や心理学をベースにストレスのないコミュニケーションのあり方を研究している先生でした。先生が提供しているコンテンツについて知るうちに、自分も一緒に広めていきたいと考えるようになり独立を決意しました。
他者とコミュニケーションを取る以上、発信する側がどれだけ気をつけても、受信する側の状況や気持ち次第でストレスを感じてしまうことがあります。例えばハラスメント防止研修など発信する側向けのコンテンツはあっても、受信する側がストレスや負担を感じないようにする研修はあまりなかったんです。そのギャップを埋めるコンテンツを先生が提供していて、これこそ誰かを元気にするお手伝いになると感じたんです。
参加者満足の追求が、組織状態の改善につながっていく
■理と情のバランスを取り、どちらにも対応できるのが自分の強み。
私自身の強みは、理と情のバランスが良く、どちらにも対応できることだと考えています。もともと人の感情の動きに興味があり、心理学やコーチングについて学んできたことに加え、グロービスには理論に強い方が多かったことから、理論についても鍛えられてきたイメージです。そうやって理と情の両軸について専門性を持ち、どちらからもアプローチできるというのは大きな強みではないかと思っています。
例えばキャリアを考えるプログラムを企画するとしたら、個々人のキャリアプランやこだわりといった「情」の部分にも、組織のリーダーとしてどうすべきかという「理」の部分にも働きかける。両方に働きかけるプログラムをゼロからつくった経験は印象に残っていますし、参加者の変化もすごく見えている実感があります。この強みを活かして、女性リーダーの育成研修でも良い変化を出せています。
■クライアント企業が実現したいゴールに辿り着くためのプログラム設計を。
私は長期のプログラムに携わることが多く、クライアント企業と長期的に関わっていくことが多いです。その際は参加者のマインドなどもしっかり観察しながら、企業が実現したいゴールに辿り着けるよう、微調整をしながら進めています。参加者が前向きな気持ちで取り組めていないと感じたらそこから改善するようにするなど、スキルのみならず心理状態も見ながらアプローチしていくイメージです。あるべき姿に近づいていけるよう、スケジュールを逆算したうえで全体設計と1日ごとの設計を行っています。
ただ、このやり方にこだわっているわけではありません。何より大事にしているのはプログラムに参加している方にとって良い時間にするということ。参加者の満足を追求することが変化にもつながり、それがクライアント企業の組織状態を改善していくことにもつながっていくと考えています。
■本業と並行して、友人とNPO法人を立ち上げ、アフリカと日本をつなぐ活動も。
「人が元気になるお手伝いがしたい」という軸では、友人と「TOFA(Talk Our Future from Africa)」というNPO法人を立ち上げ、アフリカ諸国と日本を中心にさまざまな活動を行っています。
もともと私は、海外支援はおろか海外に全く接点がなかったのですが、あるとき知人に誘われ、日本の小学生を連れてタンザニアへ行く機会があったんですね。期間は10日間ほどでしたが、例えば日本では不登校気味だった子どもが期間中にみるみる元気になっていく姿を目の当たりにしたんです。こうした活動も人を元気にすることにつながるんだと感じ、そこから毎年のようにタンザニアを訪問するようになり、NPO法人の立ち上げへとつながっていきました。
活動の一つである教育支援では、教科書もない、先生もほとんどいないという農村部の小学校のサポートなどを行っていますが、数年にわたる支援の結果、タンザニア国内の小学校の中でもトップクラスの成績を収めるまでになりました。他にもタンザニアと日本の子どもの国際交流の場をつくる活動も行うなど、双方の子どもたちの視野や価値観を広げるような取り組みを行っています。
このように本業とNPOでの活動にパラレルで取り組んでいることも私のキャリアの特徴だと思いますし、いずれの活動も私自身が実現していきたいことにつながっていると感じています。
一人ひとりが自分らしさを発揮しつつ、コミュニティ全体に好影響を与えられるように
■仕事をする上で大切にしていること。
「人が元気になるお手伝いがしたい」という気持ちは変わりませんが、これまで働いてきた中で、「元気になるってどういうことだろう」と考えるようになりました。現時点での自分の答えとしては、「一人ひとりが自分らしさを発揮しつつ、コミュニティ全体に好影響を与えられる状態をつくりたい」というものです。
今の世の中では、自分の意見を主張した人だけがちょっと良い思いをして、真面目でおとなしい人が割を食ってしまっていることもあると思うんですね。そんな状況にならず、全員が自分らしさを発揮しながら、お互いに好影響を与えつつ、コミュニティ全体が良い状態になっていくサイクルをつくっていきたいですし、そのために取り組んでいきたいです。
■自分自身もチャレンジを続け、成長していきたい。
研修などで「自分らしくあること」を発信している以上、私自身も自分らしくあるとか、自分がやりたいことをちゃんと発信することは大事にしています。
加えて、人前に立つ講師という立場である以上、自分自身も常にチャレンジを続け、変化し続ける、成長し続けることも大事にしているポイントです。自分がチャレンジしなくなったり、成長を実感できなくなったら講師を辞めるべきだと考えていますので、毎年一つでも二つでも何か新しいことに挑戦しようと取り組んでいます。
■今後取り組んでいきたいこと。
今後取り組んでいきたいのは、独立・起業のきっかけにもなった先生が提供しているコンテンツをもっと広めていくことです。NLP理論や心理学をベースにつくられた研修ですが、このコンテンツを通じて脳の思考の癖などを知れば、もっとみんなが生きやすくなると思っているんです。日々コミュニケーションに苦労している方はもちろん、より多くの方に広めていければと考えています。
一緒に働きたいと思う企業は、自分たちのこだわりを持っている企業です。「何でもいいからやってくれ」ではなく、自分たちならではの想いがあり、さまざまなオーダーをしてくれると私も嬉しいです。一緒に議論しながら、良いプログラムをつくっていきましょう。