泥臭く伴走する組織人事コンサルタント
伴走型人事コンサルティングや人材育成を行っている北村さん。NECグループに約20年在籍し、SEやPMとして約10年、人事として約10年勤務した後、HR Techベンチャーや組織コンサルティングファームを経て2022年に独立されています。
SEやPMの現場経験が10年あり、ITの現場や技術が分かる強みに加え、15年の人事経験と組織コンサルティングファームで培った営業・組織コンサル経験が北村さんの強み。そんな北村さんのキャリアや仕事をする上で大事にしていることなどを伺いました。
<プロフィール>
北村 豊(きたむら ゆたか)
1998年、滋賀大学大学院教育学研究科修了。NECグループにて約20年(SE10年、人事10年)勤務し、NECソリューションイノベータ7社人事統合、NECグループOneNEC育成基盤の立ち上げなどに従事。300人を対象とした10クラス×3ヶ月間の新入社員研修立ち上げなどを行ってきた。その後45歳で早期退職し、個人事業およびHR Techベンチャーボードメンバー(CMO)を経て、2年間組織コンサルティングファームのシニアコンサルタントとして従事。2022年7月に独立起業し、現在に至る。企業向けの研修実績多数。名古屋工業大学や豊田高専での非常勤講師の実績もあり。
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目次
グループ企業7社統合により1万2000人規模になった組織の人事を立ち上げる
■SEやPMとして10年活躍した後、人事として採用や人材開発に携わることに。
滋賀大学大学院を修了した後、NECグループのNECソフトウェア中部に入社しました。東海圏にある企業のシステムインテグレーションを手掛ける会社で、SEとしてキャリアをスタート。現場で約10年勤務し、コンビニエンスストアの店舗システム開発などを行い、PMPやOracleMasterGoldなどの資格を取得するなどもできました。この経験が、ITの現場や技術が分かる強みとなりました。
その後は人事部門へ異動し、マネージャーとして新卒・中途採用や人材開発業務を担当。大学院の専攻が教育心理学だったことから人に興味があったことに加え、リーマンショックを経て新入社員研修をもう一度立ち上げるタイミングだったことも重なり、自ら人事部に手を挙げて異動しました。そのポジションで3年ほど務めたのですが、その後、グループ企業7社が統合することになって私の人生も大きく変わることになったんです。
■1万2000人規模になった人事制度を立ち上げる。
グループ企業7社の統合というのは、私が在籍していた中部エリアの企業を含め、全国各エリアで事業を展開している企業を一つにするというものでした。NECソフトウェア中部は800名ほどの組織でしたが、統合後の規模は全体で1万2000人。統合に伴い人事制度も新たに立ち上げるということで、北海道から九州まで各社の人事マネージャーが集まり、みんなで話し合いながら制度の設計・導入を進めていくことになりました。
ところが、新しい制度の立ち上げがなかなか進みませんでした。グループ企業とはいえ各社が異なる制度を導入していたことから、ある企業の要望を叶えようとすると別の企業から文句が出るという状態。私は東海エリアの人事マネージャーとしてこの話し合いに参加していましたが、状況にしびれを切らし、本社で中心メンバーとして制度立ち上げをやらせてほしいと志願しました。結果、これまでの現場経験や人事実績も見込まれ、東海エリアから本社のある東京へ異動することになりました。
■「カタチにする」ことを意識し、年間数億円の予算を動かしていった。
800人の組織の人事マネージャーだった自分が、1万2000名の組織の制度立ち上げを進めていくことになったわけです。今振り返ると、無謀なチャレンジだったと思います(笑)。とはいえ立ち止まってはいられませんので、とにかく「カタチにする」ことを意識して取り組んでいきました。例えば制度設計を進めていく際、あるエリアのマネージャーが納得していないと感じたら、説得のために現地まで足を運びました。半ば強引なところもあったかもしれませんが、持ち前の行動力を活かし全員の汗を結集した人事制度の立ち上げを完遂させることができました。
統合後は、採用や人材開発など本社で集約して行うことになったため、その後はそれらの立ち上げに奔走しました。採用は、初年度から年間300名採用を実現する仕組みを作り、300人の新入社員研修を整備、若手選抜育成の枠組みをつくったりと、全社の人材開発体系を整えました。予算は年間数億円。このときの体験が、今の「為せば成る」という原体験になったと思います。今でも組織人事コンサルタントとしてさまざまな状況の企業と向き合う中で、「多少のことでは挫けない行動力」と、「泥臭くても最終的にはカタチにする力」を獲得することができたと感じます。
クライアント企業の価値向上に集中していれば、結果はついてくる
■NECグループで20年間勤務した後、意気揚々と独立。全く稼げず挫折。
NECグループにて20年間勤務した後、すぐに個人事業主として独立しました。しかし、営業をしたことがなかったため、全く稼げませんでした。しばらくして知人のHR Techベンチャーに救われ、役員として迎え入れてもらいましたが、ビジネスとして成果を上げる力が無かったこともあり、独立2年間で逃げるように中小企業のコンサルファームに就職をしました。
その後、逃げた思いに縛られたまま2年過ごしましたが、早期退職金で潤沢にあったはずの貯えも少なくなったことをきっかけに、生きていくための再独立を決断しました。
とはいえ、看板も実績もお金もなくなり、四面楚歌。来月の生活もままならない。
やむなく、実践自転車操業家と名乗り、すべての生活費用はすべて新規受注で稼ぐということを決め、月100件の飛び込みで3件の仕事をとるという活動を開始、2年間はそれで仕事をとってきました。今では「追い詰められたことが功を奏し、覚醒した」とポジティブに思っています。
■企業の価値向上に全集中してさえいれば、自然と結果はついてくる。
実践自転車操業家を始めた当初、「とあるお客様から我田引水」と言われたことがとても記憶に残っています。クライアントも少なく、その当時は自分の売り上げも足りなかった状況もあり、その仕事を失ったら来月の生活が厳しいという考えがあり、ビジネスの中心に自分がいたのだと思います。
その経験を教訓として「with」というコンセプトを柱にシフトをしました。
「どうすればクライアント企業の組織が良くなっていくだろう。」「どうすればクライアント企業の業績が伸びていくだろう。」「どうすれば価値向上に貢献できるだろう。」そういった思考に全集中するようにしたところ、お客様からの信頼や好感を感じられるようになりましたので、この考えをずっと大事にしています。
人事は正解のない仕事だからこそ、成果を出すことにコミットし続けたい
■「どうやるのか?」よりも「なぜやるのか?」「何のためにやるのか?」を重視。
人事コンサルティングをする上で、私は「なぜやるのか?」「何のためにやるのか?」をとても大事にしています。支援を開始してから1〜2カ月間も、それをつかまえるまで毎週のように経営陣や人事と議論することもあります。
なぜなら、ビジネスでお金を稼ぐのは厳しいからです。
つまり、私が頂くのはお客様がビジネスで稼いだ大切なお金なので、それ以上の成果を出したいからです。
私自身、以前に個人事業に失敗して貯蓄が少なくなってしまった経験をしていますし、そういう体験から、私が頂くお金は、お客様のその後の経営や事業の成功につながってこそと信じています。
■行動変容にもつながりやすい「経験学習」が大事。
事業の第1の柱である人材育成では、「経験学習」を軸にしています。「初めの一歩は上手くいかないもの、それを経験する場はとても大切で、そこでの意味づけ・意義づけでその後の人生が大きく変わる」。そんな可能性を感じています。
そのため、私が企業向けの人材育成を構想・開発する際は、「経験で参加者が変わる」機会をお客様と一緒に創り出すことにこだわっています。
長く人材育成事業をしているので、最近は相談してくれるお客様が少し増えてきました。私に相談が来る皆様の共通項は「在りモノではなく、こだわりがある」と感じています。そんな方々と日々コラボレーションしているとユニークで手触り感のある「やってよかった人材育成」のしっぽが見えてくる気がします。それが人材育成事業の楽しさだと感じています。ゴールの無いライフワークだと思います。
■同じ方向を向いて、ともに悩み、ともにトライする。お客様とともに泥臭く働く。
今ではおかげさまで、出身業界のIT業界だけでなく多業種にわたり年間数十社の人材育成や人事コンサルティングをさせて頂けるようになりました。
私を選んでくださる方の多くは、「こんな夢や目標を実現したい、そのために一緒に行動してほしい」という経営陣や人事の方々だと感じてます。ですので、これからも、クライアント企業とコンサルタントといった関係というより、どうすれば組織の課題を解決できるだろうと一緒に悩むところから始め、旗を立て、目指すゴールに向かっていく同志のような関係、悩むときも喜ぶ時も横にいる、そんな存在でありたいと思っています。やはり、そんな皆さんと一緒にうまい酒を飲むのは格別だと思っていますし、仕事の醍醐味だと感じています。