「人員削減」が必要になる前に知っておきたいこと
あらゆる変化に対応しながら組織を成長させていく中で、時に不可避となる「人員削減」。従業員や会社に与えるインパクトは大きく、実施の際には細心の注意を払う必要があります。
今回は、「人員削減」が必要となる場面や留意すべきリスク、実施方法に至るまでをSynaps Life v.o.f.代表の鈴木 秀匡さんにお話を伺いました。
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鈴木 秀匡(すずき ひでただ)/Synaps Life v.o.f.代表
製造業・EC小売業の企業人事として人事全般のマネジメントに携わった後、コンサルティングファームにてM&AのデューデリジェンスやPMI、事業再編、リストラクチャリングなどに伴う組織変革を主導。その後、海外移住と同時に起業・独立し複数企業の外部CHROや顧問として組織戦略を主導。現在は本業と並行してオランダのNGOを創立・運営し、地域のネットワーク活動を日本の登山コミュニティオーナーとしてコミュニティマネジメントを楽しんでいる。
目次
「人員削減」が必要になる場面とは
──「人員削減」の概要と、必要になる場面について教えてください。
「人員削減(ダウンサイジング)」とは、その言葉通り企業が従業員数を減らすことを指します。その目的はさまざまですが、事業存続・経営効率化・競争力確保などを目的に実施するケースが大半であり、事業廃止以外で企業が「人員削減」を決断するケースには以下の7つがあります。
(1)業績不振や経済危機
企業の売上や利益が減少し財務状況が悪化した場合、人件費を削減する必要が生じることがあります。経済危機や市場環境の急変により、企業全体がコスト削減を余儀なくされる場面です。
(2)組織再編・経営戦略の変更
企業が新しい戦略やビジネスモデルを採用する際、組織構造や業務プロセスの変更が必要になる場合があります。この際、旧来の役割やポジションが不要になると「人員削減」が行われます。
(3)技術革新・自動化
技術の進歩や自動化の進展により、従来の業務が不要になる場合があります。例えば、ロボティクスや人工知能の導入により従来は人が行っていた業務が機械で代替可能になるケースです。
(4)企業の合併・買収(M&A)
合併や買収によって企業が統合される際、重複する業務や部門が統廃合されることがあります。この結果、人員の重複が発生し、コスト削減の一環として「人員削減」が行われることがあります。
(5)市場シェアの低下や競争力の喪失
市場シェアが低下し競争力が低下した場合、企業は事業の縮小を余儀なくされることがあります。この場合、コスト削減策として「人員削減」が検討されることがあります。
(6)外部環境の変化
法規制の変更、消費者ニーズの変化、国際情勢の影響など、外部環境の変化により、特定の事業活動が困難になる場合があります。これにより特定の事業や部門の縮小・廃止が必要になり、「人員削減」が行われることがあります。
(7)過剰人員・過剰投資の是正
過去の急成長や投資拡大に伴い、現在の事業規模に対して過剰な人員が存在する場合があります。この場合、組織の健全性を保つために「人員削減」が行われることがあります。
この「人員削減」は、あらゆる雇用調整方法の中でも最も難易度の高い手法です。雇用条件を現状よりも引き下げるなどの雇用調整だけでは目的が達成できない場合に選択されます。また、「人員削減」の方法には会社都合の解雇(普通解雇)だけでなく、希望退職者の募集・早期退職制度の導入・一時解雇(レイオフ)などもあります。
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ちなみに、解雇方法には大きく以下3つのパターンがあります。それぞれの違いは、主に解雇の理由と法的な正当性にあります。
■普通解雇
就業規則違反、業務上の必要性や従業員の能力不足、余剰人員の整理の必要性などの理由に基づき、正当な理由により行われる解雇です。例えば、業績不振で雇用を維持するのが難しい場合や、従業員が職務遂行能力を欠いていると判断される場合が該当します。
■不当解雇
法的に正当な理由がない解雇を指します。これは従業員の権利を侵害するものであり、従業員が解雇に対して異議を唱えることができる場合があります。例えば、差別や報復を理由とした解雇が挙げられます。
■懲戒解雇
従業員が重大な規則違反や不正行為を行った場合に、その罰として行われる解雇です。これは他の解雇形態よりも厳しい処置であり、従業員に対する法的なペナルティを伴うことがあります。
なお、一般的に「人員削減」は企業全体の経済的理由や構造的な変更に基づいて行われるものであり、従業員個々の問題(重大な規定違反は不正行為)や行動(ローパフォーマンス)とは直接関連しない点が特徴です。
「人員削減」とリストラの関係性
──「人員削減」と似た言葉に『リストラクチャリング』がありますが、それらはどのような関係性にありますか。
『リストラクチャリング(リストラ)』とは、企業がその組織構造や経営戦略を再編成し、効率性や競争力を向上させるために行う全般的なプロセスのことです。具体的には、事業の再編、資本構造の変更、経営管理の見直しなどが含まれます。このリストラクチャリングの目的がコスト削減や業務効率化である場合、「人員削減」がその具体的な手段の1つとして採用されることは多くあります。
このリストラクチャリングの一環として実施される主要な手法には、以下5つがあります。それぞれの特徴を踏まえて、適切な手法を選択することが重要です。
(1)早期退職プログラム
特定年齢以上の従業員に対して、退職を早める代わりに特別な退職金やその他のインセンティブを提供する制度です。これにより自然減を促進し、組織の人件費削減を図ります。
(2)希望退職募集
従業員に対して希望退職を募り、退職希望者には退職金の増額やその他の特典を提供するプログラムです。自発的な離職を促し、無理な解雇を避けることができます。
(3)業務再配置
組織内での業務や役割を再配置し、過剰な人員を他の必要とされる部門や役割に移動させる手法です。全体の人員数を維持しながらリソースを最適化することができます。
(4)外部委託
特定の業務や機能を外部の専門業者に委託することで、内部人員の削減を図る方法です。これにより固定費を変動費に変え、コストの柔軟性を高めることができます。
(5)クロストレーニング
従業員に複数の業務スキルを習得させることで、1人で複数の役割を担えるようにする手法です。人員削減の影響を最小限に抑えつつ、業務効率を向上させることができます。
「人員削減」を行う際に留意すべきリスク
──「人員削減」はネガティブな面をはらむため、さまざまなリスクが生じると思います。実施する際に想定しておくべきリスクについて教えてください。
「人員削減」を行う際には、法的リスクはもちろん、企業の持続可能性やブランドイメージ、従業員の士気に重大な影響を及ぼすリスクにも注意が必要です。これらのリスクを軽減するためには、従業員への適切なサポートに加えて、透明性のあるコミュニケーションとリスクを事前に予測して適切な対応策を準備することが特に重要になります。なお、具体的なリスクとしては以下7つの観点があります。
(1)連鎖退職
「人員削減」が発表されると、予定人数を大きく上回る社員が応募したり、必要なスキルを持つ有能な従業員や高いモチベーションを持つ従業員が将来の不安から自発的に退職したりしてしまうケースがあります。これにより企業にとって重要な人材が流出し、業務効率や競争力が低下するリスクが生じます。
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(2)従業員の士気低下
「人員削減」は残留する従業員にも大きな心理的影響を与えます。不安や不満が広がり、士気が低下することで、業務効率の低下や生産性の減少が生じる可能性があります。また、コミュニケーションの減少やチームワークの崩壊など、組織開発上の問題も懸念されます。
(3)ブランディング悪化
「人員削減」がステークホルダーに対して企業の安定性や経営方針に疑念を抱かせる可能性があります。これにより顧客やパートナーからの信頼を失い、ブランドイメージが著しく悪化するリスクが生じることがあります。
(4)労使紛争
「人員削減」に伴う解雇や労働条件の変更が労働者に不公平に感じられた場合、労働組合との交渉が難航することがあります。これによりストライキや抗議活動などの労使紛争が発生し、業務運営に支障をきたすリスクがあります。
(5)割増退職金の負担
希望退職者を募る場合、割増退職金を提供するケースが多いです。これにより短期的には企業の財務負担が増加し、キャッシュフローに影響を及ぼすリスクがあります。また、退職金の水準によっては後に退職する従業員にとって不公平感が生じる可能性もあります。
(6)残留者への負荷増加
「人員削減」後、残留する従業員に対する業務負担が増加することがよくあります。そのため、過労による健康問題や業務の質の低下が懸念されます。特に、必要なリソースが削減された場合、残留者にかかるプレッシャーが増大するリスクも生じることがあります。
(7)再構築の失敗
「人員削減」を含むリストラクチャリングが計画通りに進まない場合、企業運営が混乱するリスクがあります。必要な業務が滞る、効率化が進まないなどの問題が発生し、経営危機につながることも考えられます。
「人員削減」実行役へのメンタルフォロー
──「人員削減」を実行する役割の従業員には、心身共に大きな負担が掛かるはずです。どのようにフォローをすれば良いでしょうか。
<実行役の選定方法>
実行役へのフォローの前に、実行役にどのような従業員を据えればよいかについて説明します。「人員削減」を適切に行うためには、実行におけるさまざまな段階で適した対応をするのに必要なスキル・素質がある方を選定することが大前提となります。一般的に実行役に求められるスキル・素質には以下があります。
(1)高い倫理感と誠実さ
「人員削減」は従業員に直接的な影響を与えるため、実行役には高い倫理感と誠実さが求められます。公正にプロセスを進め、従業員の尊厳を尊重する姿勢をもてる人物を選定することが必要です。
(2)強力なコミュニケーションスキル
例えば対象者への退職勧奨など、難しい話題を従業員と共有し、相手の感情に配慮しながら効果的にコミュニケーションを取る能力が不可欠となります。ここでは、相手の意見を傾聴し、共感を示すことが求められます。
(3)ストレス耐性と柔軟性
「人員削減」に関わる業務は非常にストレスが高いため、ストレス耐性があり、予期せぬ事態にも柔軟に対応できる人材であることが必要です。
(4)コンフリクトマネジメントスキル
労使紛争や従業員の不満をうまく処理する能力が求められます。これにより、組織内の緊張を最小限に抑えながら「人員削減」を進めることが可能になります。
このような素質・スキルを持つ人材を選定し、実行役を引き受けてもらうことが必要です。ただし、難しい役割になるため、打診の際には以下のポイントをおさえて交渉を行い、「人員削減」の意義と必要性を理解したうえで自ら引き受けてもらう状態を作り出すことが必要です。
(1)明確な使命と意義の伝達
実行役に「なぜ自分がこの役割に選ばれたのか」や「この役割が組織全体にどのように貢献するのか」を明確に伝えます。経営トップである社長からこの役割が組織の未来を左右する重要な任務であることを伝えてもらうことで、「人員削減」の企業にとっての意義を実感してもらえるようにすることも有効です。
(2)サポート体制の確約
経営陣や法務部門からの継続的な支援、心理的なサポート、トレーニングの提供等、企業全体で実行役を支援することを丁寧に説明し、実行役が孤立しないよう、十分なサポート体制が整っていることを理解してもらい、安心して業務にあたれるようにします。
(3)自主性の尊重
強い意思を持って「人員削減」に臨んでもらうには、無理に役割を押し付けるのではなく、「人員削減」の必要性を理解し、自ら引き受けてもらえる従業員から実行役を選定することも重要です。そのため、複数の候補者から自発的に手を挙げてもらう方法や、役割の負担をチームで分担する方法などを検討します。
<実行役へのフォロー>
「人員削減」の実行役(管理職や人事担当者など)には大きな精神的・心理的負担が掛かります。実行役となる彼らの心理的健康が、組織全体の士気やパフォーマンスを左右するとも言われています。組織全体の健全性を保つためにも、実行役への適切なサポートは必須です。実行役の心理的健康を維持するために、具体的には以下のようなフォローを行うとよいでしょう。
(1)心理的サポート
■カウンセリングサービス
解雇通告を行う際や、従業員の反応に対処する際にストレスを感じることが多いです。そのため、プロフェッショナルなカウンセラーによる心理的サポートを提供するなど、実行役となる従業員の感情的な負担を軽減するサポートが有効になります。
■ストレス管理(コーピング)プログラム
自分自身でストレスを認知することが何より重要です。「人員削減」を実行する前にストレスマネジメントに関するワークショップやトレーニングを実施し、ストレスに対処するスキルを学ぶ機会を提供することも有効です。
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(2)明確なガイドラインとトレーニング
■プロセスとポリシーの明確化
「人員削減」のプロセスやポリシーを明確にし、実行役に対して具体的な手順や対応方法を伝えることが重要です。これにより、実行役が自信を持って対応できるようにします。
■対話スキルのトレーニング
難しい会話やネガティブな反応に対処するためのコミュニケーションスキルを向上させるトレーニングや、従業員にネガティブな情報を伝える際のスクリプトや具体的な事例を提供します。これにより、実行役が従業員との対話において効果的に対応できるようになります。
(3)リーダーからの支援
■上層部からの支援
上層部や経営陣からの継続的なサポートとフィードバックも重要なサポートです。経営陣の支援を明確に示すことで、実行役が自らの判断に自信を持ち責任を全うできるようになります。また、実行役に至っては「人員削減」業務への比重が一時的に大きくなるため、業務量を再配分する必要があります。
■共有と相談の機会
実行役が互いに経験を共有し、相談できるフォーラムや会議を定期的に開催、もしくは情報プラットフォームでコミュニケーションを促進します。これにより孤立感を減らし、問題解決に向けた支援を得るだけでなく、事務局や上層部も問題が起きたことをリアルタイムで把握することができます。
(4)実施後のフォローアップ
■フィードバックセッション
「人員削減」実施後に実行役とのフィードバックセッションを行い、プロセス全体に対する感想や改善点を共有します。これにより実行役のストレスを軽減し、次回以降のプロセス改善に役立てることができます。
■業務負担の再評価
「人員削減」後に残留する業務負担が増加する可能性があるため、実行役の業務量や役割を再評価し、必要に応じて負担軽減の措置を講じます。
(5)キャリアとスキルの開発
実行役が新たな役割や責任を担う場合、そのキャリア開発やスキル向上を支援するプログラムを提供します。これにより彼らのモチベーションを維持し、組織内での成長を促進します。
(6)感謝と承認
「人員削減」のプロセスを適切に進めた実行役に対して、感謝の意を正式に表明することも大切です。
見方を変えれば「人員削減」は企業をあげた一大プロジェクトでもあります。実行役には、能力を見込んで実行役を任せるというポジティブな期待を伝えるとともに、実行後にはどのように組織に貢献したかをフィードバックし、評価することで、今後のモチベーションを高めることができます。その他、ねぎらいの意味もこめて「人員削減」実行後に取得できる特別休暇を付与し、心身ともリフレッシュして業務を行ってもらえるようにするのも一つの方法です。
「人員削減」をスムーズに行う方法
──やむを得ず「人員削減」を行わなくてはならなくなった際、どのように進めればハレーションなどを最小化することができるでしょうか?
「人員削減」をスムーズに進めるためには、計画的かつ慎重なアプローチ、そして確実な実行を管理する必要があります。特に、従業員の不安を軽減しつつ企業の評判や法的リスクを管理するためには、コミュニケーションとサポート体制の充実が不可欠です。
(1)初期準備と計画立案
■ビジネス評価と必要性の確認
「人員削減」の必要性を明確にするため、業績や財務状況、人件費及び人員数の正確な把握と予測、市場環境の評価を行います。特に、債権の合理化を図る施策は「人員削減」だけではないはずであり、雇用調整を回避するための最大限の努力が先です。その上で、雇用調整実施後(特に「人員削減」後)の会社の状況を予測しておく必要があります。また、「人員削減」の成功基準・具体的な削減目標・その理由を定めることで全体の計画の方向性が決まり、具体的な実行計画の策定へと移ります。
■経営ビジョンや経営計画の明確化
一般的に「人員削減」は企業が危機的な状況に直面した時、会社を存続させてこれからも発展・成長を続けるための非常手段として実施します。これまで進めてきた経営計画が失敗したことを意味する施策でもあるため、「人員削減」によって会社がどう変わろうとしているのか、何をめざしているのかを明確にし、それを具現化した計画を従業員に明示する必要があります。その上で「人員削減」に対する社内のコンセンサスを得て、実施後のモチベーションを維持する、あるいは新しい経営目標に向けて社内の士気を向上させていくことが重要です。
■人事制度の整備と魅力ある退職条件の設定
会社に残った場合の処遇や評価基準を示すことで、削減対象とされた従業員の判断材料になるだけでなく、残ろうと判断した方のキャリア形成に対する判断材料にもなります。そして、「人員削減」に応じた従業員に対して魅力ある退職条件に設定することも重要です。その際、金銭的な条件だけでなく、再就職支援なども退職条件に含めて検討すると良いでしょう。
■「人員削減」を推進する体制の構築
全社的な「人員削減」の実務を取り仕切る『キーマン』の存在は必要不可欠です。人事担当役員がその役割を果たすことが一般的ですが、その場合であっても経営者本人が積極的に「人員削減」に関わる覚悟がなくてはなりません。また、「人員削減」は検討する事柄が多く事務作業も膨大なボリュームとなるため、担当者1人で行うのは非現実的です。プロジェクトチームを作り、チームで計画・運営管理をすることを前提に考えましょう。特に「人員削減」は従業員と雇用契約を終了させるものであり、様々な法的リスクをはらんでいます。そのため、初期段階から必ず弁護士などの法律の専門家にチームに入ってもらい、プロジェクトの各段階において各種手続きの法的チェックや対象者へのコミュニケーション方法などについて相談しながら進められる体制を構築しておくとよいでしょう。
■法的フレームワークの理解
各国・地域の労働法規や契約条件を理解し、企業にこれ以上のダメージを与えないように法的リスクを評価する必要があります。この段階で法務部門や外部の労務問題に詳しい弁護士や人事コンサルタントと連携し、専門的見地からの助言や指導を仰ぎながら違法性のないプロセスを設計します。
(2)コミュニケーション戦略の策定
■透明性のあるコミュニケーション
透明性を重視し、すべての従業員に対して公正かつ一貫した情報を提供します。早期段階で従業員に説明し、なぜこの決定がなされたかを明確に伝えることが重要です。労働組合がある場合には、上記『初期準備と計画立案』の決定プロセスを経た後、従業員に説明する前に労働組合へ説明する必要があります。
■管理職への教育・トレーニング
管理職が「人員削減」について正確かつ適切に説明できるようにトレーニングを行います。彼らが従業員からの質問に対応し、不安を軽減できるように準備します。
(3)従業員への影響の評価と対応策
■影響を受ける従業員の特定とサポート
「人員削減」の影響を受ける従業員を特定し、対象者へのサポートプランを策定します。これには再就職支援プログラム、キャリアカウンセリング、割増退職金の提供などが含まれます。
■退職手続きの整備
退職手続きの流れを整え、従業員がスムーズに退職できるようサポートします。これには退職金の支払い、社会保険の手続き、退職証明書の発行などを含みます。
(4)実行とフォローアップ
■実行計画の実施
計画に基づいて「人員削減」を実行します。個別面談や書面での通知を行い、当事者への説明を丁寧に行います。実行時には、法務専門家が同席し、適法性の確認を行います。
■専門家との連携
「人員削減」の各段階でも法務部門や外部の労務問題に詳しい弁護士、人事コンサルタントと継続的に連携します。これにより法的リスクを回避し、従業員からの異議や訴訟リスクを最小限に抑えます。
(5)残留従業員へのフォローと組織再構築
■モチベーション維持とサポート
残留する従業員に対して今後のビジョンを共有し、企業の安定性と将来の成長可能性を強調します。彼らの不安を軽減し、士気を高めるためのコミュニケーションを継続的に行います。
■組織再構築と業務の再評価
残留する従業員の業務負担を評価し、必要に応じて業務再配分や役割の再定義を行います。新たな組織構造に対するトレーニングやスキル開発プログラムを提供し、業務効率を向上させます。
(6)長期的な学習と改善
■プロセスの振り返りと改善策の検討
「人員削減」プロセスの終了後、計画時に作成した成功基準と照らし合わせて全体の振り返りを行い、成功点や改善点を特定します。これにより、今後の同様のプロセスにおける教訓とします。
■コミュニティやパートナーへの情報提供
外部ステークホルダー(顧客・パートナー・投資家など)にも適切な情報提供を行い、企業の信頼性を維持します。
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編集後記
『あらゆる雇用調整方法の中でも最も難易度の高い手法』とコメントがあったように、できることなら「人員削減」は避けて通りたいテーマかもしれません。しかし、雇用流動化が日本でもより進んでいくことを考えると、いざという時のために事前準備を行っておくことは人事担当者としても必要なことなのではないでしょうか。