「カスケードダウン」で全社員が同じ目標に向かえるようにする方法

組織開発の文脈で使われることが多い言葉「カスケードダウン」。組織全体で同じ目標を共有し、一体感を持たせる上で重要視される方法です。
今回は、組織・人事コンサルティングサービスを提供している川﨑 純弥さんに、「カスケードダウン」の概要から実行プロセス・評価方法に至るまでお話を伺いました。
<プロフィール>
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川﨑 純弥(かわさき じゅんや)/法人代表
複数の事業会社にて人事部門マネージャーや経営企画室長などを経験後、人事系コンサルティングファームを経て独立。これまでの経験と実践的専門性を活かし、評価・賃金制度の設計・導入・運用支援、人事部門立上げ支援、人事マネージャー代行、採用コンサルティング、採用代行など、『採れない・辞める・育たない』を解決する組織・人事コンサルティングサービスを提供。中小企業を中心に多数の支援実績があり、ハンズオンをメインとした100社100様の最適な課題解決支援に定評がある。国家資格キャリアコンサルタントのライセンス保有。著書『人事制度の死亡フラグ回避方法』。2024年8月より月刊人事マネジメントにて連載開始。
目次
「カスケードダウン」とは
──「カスケードダウン」の概要について教えてください。
「カスケードダウン」とは、企業・組織の経営層が設定した目標や戦略を、下位の部・課・社員へと細分化し伝達・浸透させるプロセスを指します。英語のcascade(滝)down(落ちる)に由来しており、まるで滝のように上層から下層へと情報や目標が流れ落ちる様子を表現しています。
ビジネスの現場では、経営層が明確な目標や戦略を設定することが企業成長において不可欠です。
しかし、これらも現場の社員にまで適切に伝わらなければ実効性に欠けます。そこで重要な役割を果たすのが「カスケードダウン」です。「カスケードダウン」が正常に行われている企業では、組織全体が同じ目標や戦略を共有し、それぞれの役割を理解した上で活動を行います。
「カスケードダウン」では、経営層が設定した目標や戦略の背景・ストーリー(なぜこの目標なのか)を社員全員と共有します。その上で目標や戦略が細分化されて自分の果たすべき役割・業務に落とし込まれるため、会社への理解と当事者意識が高まった状態で仕事に臨むことができるようになります。
さらに、組織のコミュニケーションが円滑になり、全体としての一体感が高まる効果もあります。この効果は組織が拡大しても同様のため、企業は一貫した方向性を持って成長し続けることができるようになります。
「カスケードダウン」の実行プロセス
──「カスケードダウン」を自社で実行する際、どのようなプロセスで実施すると良いでしょうか。
「カスケードダウン」を導入する際に重要なのは、『目的/戦略/戦術』の3段階に分けて明確にした上で、それぞれの階層に適切に落とし込むことです。その具体的なプロセスを、『持続可能な社会を実現する』を目的として設定した製造業企業を例に挙げて説明します。

目的
組織全体の方向性や意図を明確にするための基本的な要素です。目的は組織の存在理由や長期的なビジョンに基づいて設定され、戦略・戦術の指針、また組織全体のあらゆる活動の基盤となります。
(例)
<目的>
『持続可能な社会を実現する』
<実際の活動>
・研究開発部門が新しい環境技術の開発を目指す
・製造部門が環境に優しい製造プロセスを採用する
・新しいプロジェクトや製品を導入する際の判断基準となる
さらに、目的を明確化すると従業員のモチベーション・エンゲージメントを高める効果も見込めます。社員は『自分たちの仕事が大きな目的に貢献している』と感じることで、仕事に対する意義や意欲を見出すことができるからです。このように、目的の設定は組織全体の統一感を高め、効果的な戦略と戦術の実行を支える重要な役割を果たします。
戦略
目的達成への具体的なアプローチ・中長期計画(リソース配分や主要な行動計画の定義など)を策定します。一連の論理的なステップが必要となり、それが戦略として構築されます。
(例)
<目的>
『持続可能な社会を実現する』
<戦略>
・再生可能エネルギー技術の開発と普及
この戦略を掲げた場合、研究開発部門は最新技術を取り入れたプロジェクトを立ち上げ、パートナー企業との連携を通じて技術の共有や共同開発を行うことでしょう。また、マーケティング部門は市場分析を基にしたプロモーション計画を策定し、新技術の普及を図るはずです。このように、戦略は組織の各レベルで共有され、一貫した行動を促します。各部門やチームは、全体の戦略に基づいて自部門の目標を設定し、具体的な行動計画を策定します。これにより、組織全体が統一されたアプローチで目的達成に向けて動けるようになります。
戦術
戦略を実行するための具体的なアクションや手段を指します。戦術は短期的な視点で策定され、具体的な活動や作業レベルの詳細な計画を含みます。戦略が『何をするか』を定義するのに対し、戦術は『どのようにするか』を定義するものです。
(例)
<目的>
『持続可能な社会を実現する』
<戦略>
・再生可能エネルギー技術の開発と普及
<戦術>
・新エネルギー技術の実証実験の実施
・市場投入計画の詳細なスケジュール作成
『新エネルギー技術の実証実験の実施』においては、まず実験用のプロトタイプを作成し、特定の条件下で性能をテストします。この実験には、必要な設備の準備や試験計画の立案、データの収集と分析、実験結果に基づく技術の改良、実用化に向けたフィードバックを得るプロセスも含まれます。
一方、『市場投入計画の詳細なスケジュール作成』に関しては、製品のローンチまでのステップを具体的に策定します。例えば、製品開発の各フェーズにおけるマイルストーンの設定、販売チャネルの選定、マーケティングキャンペーンの準備、販売スタッフのトレーニングなどが挙げられます。また、消費者へのアプローチ方法や市場での反応を評価するためのフィードバックループの確立も重要な要素です。
このように、戦術は現場レベルでの具体的な取り組みを含むため、実行可能性の高さが求められます。各部門が連携して戦術を実行することで、戦略の達成が現実のものとなり、最終的に組織の目的である『持続可能な社会を実現する』に向けた一貫した取り組みが実現されます。

人事施策を「カスケードダウン」させるポイント
──人事施策は特に「カスケードダウン」を必要とするものが多いと思います。その際の注意すべきポイントにはどのようなものがあるのでしょうか。
「カスケードダウン」は基本的に部門横断的な目標の理解や協力を前提としています。ただ、人事は自部門の取り組みとして事業部に依頼や説明を行うことが多く、上記前提があったとしてもスムーズに事を進めるためにはいくつかのコツが必要です。
事業部社員は『他人事』から始まる
人事施策を推進する際に注意しなければならないのは、目的意識と当事者意識です。現場のメンバーは目の前の業務や目標に集中することで精一杯ですから、新しく会社や人事が打ち出す施策を疎ましく思うことは珍しくありません。スタート時点は『自分たちには関係ないことを無理やりやらされる』と感じる人も多く、当事者意識がない状態であることが大半です。こうした状態ではどれだけ良い施策であっても前に進めることは難しくなります。
このように思われてしまう傾向があるものとしては、目標管理制度や人事評価制度はもちろん、思い立ったように実施される(と現場が感じてしまう)アンケートやサーベイなどが該当します。また、大きな施策でなく小さいものでも人事からの依頼事項は基本的に現場からすると面倒に感じられてしまうことが多いものなので、如何に人事と現場の間で良好な関係を築いておけるかが重要になってきます。
『何のためにやるのか』の目的意識を持ち、理解を得る
人事施策を成功させるためには、事業部側のメンバーに『これは自分たちにメリットのある・必要な取り組みだ』と感じてもらう必要があります。一方、「カスケードダウン」は上層部で実施すること(目的・戦略)が決まっている状態からスタートするため、現場社員がメリットや必要性を理解せぬまま物事がスタートしてしまうことが多々あります。それを避けるためには、その施策が社員自身にもたらす価値・効果と、それによって何が今よりもどう良くなるのか?という目的を明確かつ丁寧に説明する必要があります。まずは現場責任者へ説明し、その後現場責任者からメンバーへ伝達してもらうこともあれば、全社員を対象とした説明会を実施することもあります。どの程度の細かさで実施するかは部署や人ごとに置かれた状況・事情・理解度などによっても異なりますので、『1度説明したから現場は当然理解しているはず』『前に伝えてあるのでそれ以上の説明は不要』というスタンスではNGです。現場への浸透具合や理解状況によって、必要に応じてその時々で最適と思われる方法で何度も伝えることが重要となります。とはいえ、社内の仲間はお客様ではなく、共に共通の目的を達成させるための同志です。変にへりくだったりせず、相手への敬意を持ちながら対等な立場で説明を行ってください。
「カスケードダウン」が人事施策の拠り所となる
「カスケードダウン」がしっかりと機能すると、人事施策の目的説明も容易になります。なぜなら、上層部の目的・戦略・戦術を辿っていけば、必ずどこかに人に関する施策があるはずだからです。実際に、人事施策は大別すると『採用/定着/育成』の3つに集約できます。どれも事業部の目標達成に密接に関わってくるものばかりです。例えば、それぞれこんな課題があります。
・新規事業に関する専門的な知識、経験を持っている人が社内にいないから外部から人を採用しないと、プロジェクトが始まらない(採用)
・突然同僚が退職して、その仕事をカバーすることになったため目標どころではない(採用/定着)
・評価制度が曖昧で、評価フィードバックを行なう際にいつも『好き嫌いで評価されている』と言われてしまう(定着)
・新卒社員の教育が事業部に丸投げになっていて、OJT担当者の質にもバラつきがある。相性が悪ければすぐに離職してしまう(定着・育成)
上記のような現場の悩みが解消されなければ、各事業部の目的・戦略・戦術を計画通り遂行することが難しくなります。あらかじめ既存社員の離職や離脱を踏まえて目的・戦略・戦術を立てることは非常に困難ですし、1人辞めるインパクトは相当大きなものだからです。だからこそ、今いる社員が働きやすい環境を整え、働きがいを感じやすい環境をつくり、ここで働き続けたいと思ってもらえる魅力ある企業になる必要があります。これこそが人事施策を行う上での最大の目的です。『人事施策は働く社員全員のためのものである』ということが伝われば、多くの方が人事施策に協力してくれるようになるでしょう。
いつ・何を・どのように取り組むか
最終的に目指すべき大層な目標があっても、現場で働く社員は今目の前の人に関する問題を解決してほしいと考えています。人に関する問題の緊急性・重大性を把握していなければ、打つべき施策のタイミングを逸してしまいかねません。そうならないためにも、日頃から現場の状況を把握しておく必要があります。方法は自社に合うやり方であればどのようなものでも構いません。『現場社員の人的課題を解決するために』のスタンスを忘れずに話を聞かせてもらえば、きっと協力してもらえるはずです。
<情報収集のための方法例>
部門ミーティング、ハラスメント窓口、ストレスチェック、1on1ミーティング、社員アンケート・サーベイ、雑談、レクリエーション、研修など
こうして把握した現場の情報は、人事部門長などから経営層に届けることで上層部内での人事施策への理解や納得度が高まります。すると、それぞれが管掌する部門にも協力を促してもらえるようになります。また、特定の発言力が強い方の思いつきで人事施策を決められてしまうことの予防にもなりますので、日頃から社員の状況・情報にはアンテナを張り経営層に適宜共有するようにしましょう。
戦略について
人事部門における戦略は比較的普遍性が高いため、年度によって大きく形を変える性質のものではありません。『採用/定着/育成』の人事課題を解決する上では、現場の声を元に優先順位・予算・スケジュールを決めていく形になりますが、『法令順守』については少し毛色が異なります。労務に関する法律は頻繁に変更されるため、これに対応する必要があるからです。基本的には公布から一定期間猶予が設けられており、その間で対応を進める形となります。規程の改訂、必要に応じて社員へ説明実施、実務のオペレーション変更など、法令遵守の観点から適切に最新情報をピックアップしそれぞれ対応しなければなりません。
戦術について
採用は定量目標(応募数、スカウトメール送付数、1次面接通過数・率、内定受託数・率など)が立てやすいため、これらの数字を改善するための手段が戦術になります。定着率を上げるにはそのボトルネックとなる原因分析が必要です。入社後どのタイミングで人が辞めやすいかを把握し、そこに対して手を打ちます。また、教育については管理職や指導職に対する研修実施によりマネジメント能力が上がれば、離職率や定着率の改善が期待できます。現在の課題を整理した上で、優先度の高いものからピンポイントで施策を打つことも可能です。ただ、研修の目的はあくまで受講者の行動変容にあるため、単発ではなく一定期間・数回にわたって実施することも検討ください。
「カスケードダウン」の評価方法
──「カスケードダウン」が成功しているかどうかを判断するには、どのようなポイントで判断すれば良いでしょうか。
「カスケードダウン」の成否を判断するためには、大きく以下6つの観点を総合的に評価する必要があります。
(1)目標達成の確認
「カスケードダウン」によって設定された目標やKPIが各階層で達成されているかを確認します。具体的な指標として業績データやパフォーマンス評価を使用し、目標が全体として達成されていればプロセスは成功していると言えるでしょう。また、各階層の目標が上層部の戦略と一致しているかも合わせて確認します。これにより、全体の方向性が統一されているかどうかを評価できます。
(2)コミュニケーションの質
情報が全階層にわたり適時かつ正確に共有されているかを確認します。確認する方法としては、定期的にアンケートを実施する、またはグループウェアでの情報共有や社内報などの掲示内容に対する既読数(紙の場合押印などで把握)などの手法があります。ただし、それらはあくまで表面上の数字に過ぎませんので、人対人のコミュニケーションで情報把握することは非常に重要です。
他にも、定例会議・報告書・グループウェアなどを通じて情報の透明性を確保しつつ、社員からのフィードバックが積極的に行われて適切に処理されているかも見ていきます。人事評価面談・1on1ミーティング・アンケートなどを通じて、現場の声が経営層に届いていることが重要です。
(3)従業員のエンゲージメント
社員が組織の目標にどれだけ積極的に関与しているかを確認します。従業員満足度調査やエンゲージメント調査を通じて、組織全体の士気を把握する形です。目的を設定した背景・ストーリーが社員に共有されていれば一体感が生まれ、目標達成に向けた動機付けが強化されます。反対に、共有されていなければやらされ感や当事者意識の欠如に繋がります。
(4)業績評価
「カスケードダウン」の導入後、各階層のパフォーマンスが向上しているかを確認します。目の前の担当業務に終始していないか、自身の目標達成への意欲が維持できているかなど、結果や成果に至るまでの道程も把握することが重要です。
(5)適応力と柔軟性
目標や戦略の変更に対して、各階層が柔軟に適応できているかを評価します。具体的には、役員会議などで各部門の取り組みや進捗が当初の想定とは違う状況になった際、どのような対策を取れているかを確認し合うなどの方法が良いでしょう。迅速かつ効果的に対応できる組織は、「カスケードダウン」の成功を示す指標となります。一方で、目標や戦略の変更を各部門・社員が勝手に自分たちの都合の良いように解釈し、ゴールがブレることがありますので注意が必要です。
また、そもそも当初設定したゴールが間違っていたというケースも考えられます。その場合は再設定する必要がありますが、こればかりは一定期間目標に向かって動いてみないとわからないことも多いものです。ちなみに、『目的』は企業の存在意義に関する内容になると思われますので、間違うことはほとんどないはずです。一方、『戦略』は外部環境の変動により変更を余儀なくされることもあり得えます。『戦術』もより良い打ち手が見つかれば機動的に変更した方が良いでしょう。
(6)上層部からの意識の伝達
上層部が現場からのフィードバックを真剣に受け止め、改善に取り組んでいるかを確認します。具体的には、無記名のアンケート実施、上司とメンバー間での意見収集などの手法があります。ここで収集した情報はある程度内容を公開し、それに対してどのような対策を取るかを会社上層部から明示・フィードバックします。そのような発信がなければ、現場の方に『アンケートは意見は回収するだけで実際には何も変わらない』という誤解をさせてしまったり、それにより形骸化させてしまう可能性があるためです。フィードバックから上層部の本気度が社員に伝われば、プロセス全体の信頼性が高まります。
「カスケードダウン」がうまくいかない時の対処法

──残念ながら「カスケードダウン」がうまくいかなかった時は、どのような対処をして解消すれば良いでしょうか。
「カスケードダウン」のプロセスがうまくいかず詰まっている箇所を見つけた場合は、以下のような対処が有効です。
(1)問題の特定と原因分析
まず、詰まりや滞りが発生している具体的な場所や階層を特定します。顕在化している問題が氷山の一角である場合もありますので、できるだけ事実関係の把握や情報収集をして、真の問題がどこにあるのかを探った上で問題の原因を分析します。例えば、営業・生産部門の連携が取れずに納期や価格設定に問題が発生した場合、これがメンバー・上司・取引先のいずれの問題なのか状況を整理するところからスタートします。特定の誰かだけの話では真実が見えなくなりますので、各員の感情を排し、事実関係の把握や情報収集に努めてどのような対策を取るべきか検討する必要があります。コミュニケーション不足、リソース不足、役割や責任の不明確さなど、さまざまな原因が考えられますが、そこを特定できれば適切な対策を取りやすくなります。
(2)コミュニケーションの改善
各階層間での情報共有をしっかり行い、透明性を高めます。具体的には、定例会議や報告会を通じて最新の状況や目標の進捗を共有することが大切です。最初は理解できていた上層部の目的や戦略も、日々仕事に忙殺されたり他部門とのハレーションを経験したりすると見失ってしまうこともあるはずです。そうしたことも想定しながら、現場からの意見や提案が経営層に届く仕組み作りを行っておきましょう。
(3)トレーニングと教育
管理職やリーダーに対してリーダーシップ研修やコーチングを提供し、目標の伝達やチームのマネジメント能力を高めます。効果的なリーダーシップが「カスケードダウン」の成功に繋がるからです。また、各階層や部門での役割や責任を再確認・明確にすることにより、目標達成に向けた具体的な行動が取りやすくなります。
(4)プロセスの再評価と改善
現行の「カスケードダウン」プロセスを見直し、必要に応じて改善点を洗い出します。その際、戦術の推進に意思決定プロセスやミスコミュニケーションによる停滞が起こっている可能性がある場合には、業務フローの簡素化も検討しましょう。合わせて目標が現実的で達成可能か、各階層に適したKPIが設定されているかの再評価も必要です。
(5)リソースの最適化
人材・時間・予算などが不足している場合、リソースの再配分を行う必要があります。例えば、「カスケードダウン」がスタートした時点ではチームメンバーが5名いたけれど、一気に3名退職してしまったという状況下では、目の前の日常業務遂行に手いっぱいになってしまう、目標達成に係る戦術に着手できない、といった状況になってしまうこともあるためです。特に、退職など人が離れてしまうことのインパクトはとても大きいため、定期的にリソースの最適化を行いましょう。この際、優先度の高い場所への配置を行い会社全体としての全体最適になるよう、部門間での情報共有・意見交換・合意形成が重要となります。
(6)継続的なモニタリング
定期的にプロセス進捗をモニタリングし、問題が再発しないようにします。各階層からの定期的な進捗報告を受け取り、リアルタイムでの問題発見と対応を行います。具体的には、以下のような進捗報告をもらうようにします。
・退職などのためにマンパワーが不足しており「カスケードダウン」を正しく行うことができない
・必要な施策を行うことにより予算がオーバーしてしまいそう
・関連する○○部門が協力的でない
など
問題の再発防止のための進捗報告なので、基本的にはマイナスな状況に関するものが多くなるはずです。しかし長期的に取り組むことにより改善されることもあると思いますが、うまくいっている時ほど見逃されてしまうこともあるので、年度終わりや3年後などのまとまった総括の際には改善された点や進捗した要因についても分析し、次に活かすことが重要になってきます。
(7)目的を設定した背景、ストーリーを何度も伝える
「カスケードダウン」のプロセスにおいてどこかで問題が発生している場合、もう一度原点に立ち返って『最上位の目的・戦略・戦術がなぜ設定されたか』の背景とストーリーを改めて説明することが重要です。
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編集後記
目的が明確であればあるほど、人は主体的・能動的に動けるようになります。経営層が設定した目的・戦略・戦術を組織中に行きわたらせることができたら、どれだけ大きなパワーが出せるでしょうか。継続する根気強さが必要な「カスケードダウン」ですが、ぜひ地道に取り組んでいきたいものです。