【組織開発・人材開発編】人事担当者に聞く「2020年の振り返り」と「2021年の展望」
2021年動向予測シリーズとして、全4回でお届けするこの企画。
前回までの「新卒採用編」「中途採用編」「人事制度編」に続き、最終回は「組織開発・人材開発編」。各社の人事担当者にご協力いただいたアンケート結果を整理し、その内容をまとめたものをご紹介します。
目次
2020年の振り返り(組織開発・人材開発)
【質問①】「組織開発領域」においては2020年はどのような1年でしたでしょうか?社会状況や社内状況など特出した変化について教えて下さい。
・リモートワークが進んだことにより、組織開発の必要性が浮き彫りになった年だった。それに合わせて、「対話型OKR」「組織開発ワークショップ」「サーベイを活用した組織開発ワークショップ」などを実施した。
・リモートワークに対応するべく、オンライン環境でのチームビルディング、社内コミュニケーションの再設計、マネジメントの再定義などを行った1年だった(Workplaceを活用した社内メッセージの浸透、オンラインイベント中心の社内イベントなど)
・労働生産性のみならず、イノベーションを求め新しいワークスタイルを模索する「真の働き方改革」の動きが出てきた。個人的には「働き方改革2.0が始まり、”働きがい”改革である」と感じている。またそれを下支えするMVVの再定義、DX、ジョブ型人事制度導入などを実施した。
・「組織の遠心力」がより一層加速した1年だった。その反動で「求心力を強めるマネジメント」が求められるようになり、組織開発への関心やニーズが高まってきているように感じる。特に中間管理職層のマネジメント力強化に関する相談が多くなったため、一般的な組織開発理論を企業カルチャーに合わせてカスタマイズすることで自社のマネジメントスタイルを再形成したり、既存施策と連動させた内製支援なども実施したりした。
・コロナに対応するための各種制度作りなどに追われた1年だった。
・とにもかくにもコロナへの対応に終始した1年だった。特にリモートワークが進む中でどうマネジメントするかといった工夫を社内中から集め、伝播することに力を入れた。
【質問②】「人材開発領域」では2020年はどのような1年でしたでしょうか? 社会状況や社内状況など特出した変化について教えて下さい。
・「人材開発オンライン元年」とも言えるべき1年だった。前半はこれまでの研修をオンライン化するための対応に追われていた企業が多かったが、後半に入るとオンライン独自のメリット/デメリットを理解した上での施策を検討する企業も増え、人材開発のあり方に大きな変化がもたらされた。
・研修デリバリーの件数は大きく減少し、2020年3月以降に実施した研修のほとんどはオンライン化された。また、この機にリモートワークとなったチームの人財開発・組織開発(セルフリーダーシップとエンゲージメントの強化)プログラムの提供を行った。
・リアル研修からオンライン研修へのコンバート対応に追われた1年だった。その中でオンラインの特性を活かした研修の企画や実施、また社内コーチ育成なども進めた。
組織開発・人材開発ともに、やはり「リモートワークへの対応」のインパクトが大きかったようです。これまで対面で進めていたものがオンライン化されたことにより、特に組織開発面ではこれまで以上に必要性が高まり、従来の方法を見直す動きもありました。
一方で、2020年の後半ではオンライン化への一次対応が終わり、「オンラインの強みを活かした人材開発」の施策を検討・実施する企業も。この変化を好機と捉え、前向きな取り組みを進められた企業も中にはあるようです。
2021年の組織開発・人材開発トレンド予測・各社の取り組み内容
【質問③】「組織開発領域」の観点で、2021年はどんな変化や状況を想定されていますか?またそれを踏まえ、自社ではどのような対応やチャレンジが必要だと考えていますか?
・ノウハウなどソフト系のナレッジシェアに合わせて、PCのシンクライアント化、自宅インターネット環境の整備支援、人事制度の刷新など、ハード系の制度整備が急がれる。
・オンラインとオフラインのハイブリットな組織の中で、いかに求心力を維持し組織として成果をあげるか、というテーマにより注目が集まる。これまで以上に「個人の価値観」と「組織の目指す方向性」の重なりを求める時代になってくるため、キャリア自律・採用・配属などと連動しながら組織開発を進めていくことがより求められる。
・企業での働く意味がさらに多様化し、ジョブ型雇用と帰属意識(=ロイヤリティ)のバランスをどう取るかが問われる年になる。
・個人の価値観と組織ミッションの融合。そのための一歩として、マネージャーのキャリア自律支援に取り組む予定。部下に目が行きがちだが、まずはマネージャー自身が自分のキャリアについて納得できている状態が理想。
・ますます「働きがい改革」が進展し、オフィス改革などにも及んでいく。
・バーチャル組織運営ノウハウの進化と、リアルでしかできないことの深掘りを進める。
・引き続き抜本的な「働き方改革」を推進する。
・組織開発の本質的な効果や方法論を、社内外に伝播していく。
・withコロナのビジネスモデル作りがさらに進んでいく。自社ならびにクライアントのビジネスモデルチェンジ支援が必要。
・エンゲージメントサーベイの再設計、人材育成(特に組織変更後、入社後のオンボーディングの再設計)、副業・兼業社員の活性化、マネジメントの再定義、ロイヤリティ形成のプロセス変更などを実施していく。
【質問④】「人材開発領域」の観点で、2021年はどんな変化や状況を想定されていますか?またそれを踏まえ、自社ではどのような対応やチャレンジが必要だと考えていますか?
・従来のオフライン型に戻ることはなく、オンラインに主軸を置いたハイブリット型の研修スタイルへ移行する。テレワークにより物理的な距離がある中でのマネジメントが求められるため、縦・横・ナナメのコミュニケーション課題が浮き彫りになっていく。オンラインでの信頼関係づくり、相手や組織の状況の可視化などの仕組みづくり、非言語をどう言語化していくのか、などへの取り組みが必要。
・一部では、リスクを取ってでも対面で研修を実施するケースも増えてくるのではないか。また、コーチング・メンタリングのニーズがさらに増える。
・場当たり的な対応ではなく、組織の中で何が起きているのか、課題をしっかりと見極めてソリューションを講じていくことが必要。
・オンラインへの完全なコンバートと、人材開発領域にかける予算の縮小。
・変化に対応できる人材の育成。
オンラインへのハード面の適応を継続しつつも、それに合わせて起こるソフト面の不適合を解消していく1年になると予測する企業が多いようです。またオフラインをどう位置付けるか、オンラインとどう組み合わせるかに関しても検討する必要があると考えている企業もありました。
今注目している重点領域
【質問⑤】注目されている2021年以降の重点領域などあれば教えて下さい。
・複業や兼業、社外人材活用(オペレーショナルな部分でのアウトソース文脈と、イノベーションを積極的に起こしていく出島的な役割双方において)
・ビジネスモデルやバリューチェーンなど、ビジネスのあり方にも踏み込んだMVV、人材要件の見直し。またそれによる組織構造や人事制度の改革。
・組織開発の民主化。
・採用(人材強化)
・企業での働く意味の多様化、ジョブ型雇用と帰属意識(=ロイヤリティ)のバランス。
・キャリア自律、組織開発。
まとめ
より個別化・自由化が進む個人を、企業がどのような形で活かしていくか。組織開発・人材開発に関わらず、このテーマに対して考えを巡らせている企業が多いようです。相反するようにも見える個人と企業。この2つのバランスを取り、最適な形で結びつけることが、人事担当者に求められる役割なのかもしれません。
・アンケート結果【新卒採用編】はこちら
・アンケート結果【中途採用編】はこちら
・アンケート結果【人事制度編】はこちら
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