【中途採用編】26社の人事担当者に聞く「2020年の採用事情」と「2021年の展望」
前回の記事では「新卒採用」に関する2020年の動向と、2021年のトレンド予測や各社の取り組み内容についてのアンケート結果をご紹介しました。
今回の記事では、「中途採用」に関するアンケートにご協力いただき、その内容をまとめたものをご紹介します。
目次
2020年の中途採用振り返り
【質問①】「中途採用」において2020年はどのような1年でしたか。社会状況や社内状況などの変化について教えてください。
「良い変化があった」と回答した企業のコメント
母集団形成に関するコメント
・求職者の地域問題や交通費の壁がなくなり、面接設定難易度が下がった。
・いち早くリモートワークを社内で適応させたことにより、応募者は昨年対比150%となった。
・業界経験者の採用は変わらず厳しい状況だったが、一方で業界未経験者は採用しやすくなった。
・実務未経験や、仕事が減少したフリーランスの方からの応募が大幅に増加した。
採用手法・ツールに関するコメント
・テレワークとオンライン面接が拡大し、平日昼間でも面接ができるようになった。
・採用サービス各社の過去類を見ない値引きがあった。
・オンライン面談が圧倒的に増えた
その他のコメント
・コロナをきっかけに業務停止した期間があり、その期間を利用して採用像を見直すことができた。大手広告代理店が複業を解禁したことなどを受け、正社員以外の採用も幅を広げて攻めていきたいと思うようになった。
・例年ほど離職者が出なかった。
「悪い変化があった」と回答した企業のコメント
採用枠に関するコメント
・事業の先行きが見えず、中途採用の計画見直しが月毎に必要な状態だった。
・将来的な売上利益の見込み予測が困難な状況となったため、予定していた採用を一旦中止せざるを得なくなった。
・中途採用予算を大幅に削減した(イニシャルコストの高い施策を導入しづらくなった)
・この3年で採用を拡大させていたが、一旦採用の見直しを行った。結果、紹介会社経由の採用数を絞った。
・昨年の2/3程度の採用数に留まってしまった。
採用要件に関するコメント
・現場の採用要件が上がり、育成枠の採用が難しくなった。また人材紹介会社からの応募層の変化が起こり(20代後半~30代が情報収集のみに終始している)、採用要件の見直しや新チャネルの検討を行っている。
・職種ごとに採用ニーズの有り無しが極端に分かれた。エンジニア等の専門職や各職種のハイキャリア層のニーズは依然高く、ミドルキャリアに関してはニーズはあるものの採用ハードルが上昇。ローキャリアに関してはニーズが激減した。
・より即戦力採用が重要視された。コスト部門のIT化により採用すべき職種と削るべき職種が明確にわかれた。
・現場配属条件が厳しくなり、社内の採用基準が上がった。
・全体的にハイキャリア層の動きが鈍かった。求人倍率が下がり、募集をかけると応募は多く集まるが、スキルセットが合わないローキャリア層からの応募が多かった。
・ポテンシャルでの採用に対して会社として消極的になった。
・Web系エンジニア(ミドル以上)の採用難度が高騰した。特にDX・EC系はコロナを受け市場が伸びていることが要因と想定。
・応募者は増えたものの、求めるスキルや人物像に合致する方の割合が例年より少なくなり、結果的に採用成功につながらなかった。
採用手法・ツールに関するコメント
・急遽オンライン面接を余儀なくされた事により、企業側、求職者側共に戸惑いやトラブルなどが発生し、採用そのもの(選考や基準)に変化が起こった。
・オンライン選考により、雰囲気や所作などの非言語情報取得が難しくなった。それにより採用基準などをより明確化する必要に迫られた。
・選考オンライン化により面接回数や接触時間が短くなったことで、面接官のスキルが一段と問われるようになった。
その他のコメント
・在宅勤務がメインになったことで、会社理解や文化マッチの点において不足を感じる点が多くあった。またこの市況感を受け、焦って応募先を探している方が増えた印象。
・現職に不安を覚える潜在的転職希望者が増え、会社としても現職社員の離職防止に取り組む必要が生じた。
・異業界への転職も増え、飲食や観光業などからのキャリアチェンジ希望者が増えた。産業構造レベルでの変化が起こっていると感じる。
コメントが多く集まったポイントとして「未経験採用の中止」「採用ハードルの上昇」がありました。またミスマッチも多く発生していたようです。今後の見通しが立たない企業が採用ハードルを上げた募集を展開する一方で、コロナの影響をモロに受けた業種や職種からのキャリアチェンジ希望者が増えたことにより、双方がうまくマッチしない状態に陥っていたと想定されます。
一方で、未経験者採用を継続した企業にとっては好機だったと見て取れます。
また選考がオンライン化したことで、転職者側がこれまでより応募や面接設定がしやすくなった反面、企業側としては「オンライン上でどう人材を見極めるか」といった面接スキルの向上を迫られる1年となったようです
2021年の各社人事部予算はどうなる?
【質問②】2021年の人事部予算の見立てを教えてください。
現時点で約7割の企業が来年度の人事部予算の見通しをすでに立てており、うち半数は増加予定と回答しています。この変化を好機と捉えて人事予算を強化する企業と、様子見をする企業が約半々という結果になっています。
2021年の中途採用トレンド予測・各社の取り組み内容
【質問③】2021年の「中途採用」は、どのように変化すると想定していますか。
転職者の動きに関するコメント
・働き方の多様化がますます進む。これまでのような採用要件だけでなく、雇用形態に関わらない「一緒に働くことで会社が個人に提供できるメリット」をより明確に提示していく必要がある。
・会社へのエンゲージメントが下がり、転職市場が活発化する。
・「倒産しにくい企業」の求職者人気が高まる。またリモートワークで都心から離れても自分のキャリアを保てるような会社選びが増加する。
・転職希望者がさらに増加する。
・テック領域間での人材移動がさらに活発化する。
・パラレルキャリアへの理解がある企業への転職がさらに増える。
・よりコロナ影響を受けやすい業界(toC、サービス業など)、あるいはその関連企業からの人材流出がさらに加速する。
採用枠・採用要件に関するコメント
・業界ごとに影響の大小はあるものの、どの企業も事業の状況を見ながらの厳選採用が続き、時に募集の中止などの柔軟な対応が求められる。
・リモートワークなどで社内環境が大きく変化することにより、社内の体制強化につながる人材確保は優先的に行われていく。
・DXを前提に事業を作り替える企業が増える。それに伴い、IT業界以外であってもITに知見のある人材ニーズの高まりがより加速する。
・採用難の職種では、売り手市場と同様の採用活動が進む。
・2020年以上に採用難易度が高まる。
・経験者層の囲い込みや採用競争が激化する。
・DX、IT、情報通信系の企業に関しては、採用数がさらに増加する。
・経験者採用を継続しつつ、より事業にコミットできる素直な未経験者を採用する方向にシフトする。
・優秀人材の奪い合いが加速する。またその層は転職市場に出てこず、潜在化する。
・業務委託や短期雇用など、正社員雇用にこだわらない採用が進む。
ツール・手法に関するコメント
・企業、求職者ともに「ITを駆使できるかどうか」が採用の成否を分ける。
・選考のオンライン化がますます進み、結果としてI・Uターンが加速する。
・リモートワークやWeb面接への慣れが生じてくる。
・採用予算削減が進み、安価な採用手段のニーズが増える(ダイレクトリクルーティングやSNS採用など)。またそれに合わせて採用ブランディング(採用広報)のニーズが今まで以上に高まる。
・採用サービス各社の値下げが進む(すでに2020年も破格のキャンペーンが展開されていた)
・客観的な人物判断、適性テスト、AIの活用が進む。
その他のコメント
・ジョブ型採用加速の流れは止められないため、中途採用に何を期待するのか、業務委託等との役割や棲み分けを考えた上で明確にする必要に迫られる。
・複業ワーカーグループの強化が必要になる。
(事業拡大時、正社員の数を増やす前にある程度仕事の増加量を吸収できる社外協力メンバーの確保)
・安定、安心を求める求職者に対して、いかに納得感をもって入社を決めてもらえるか、継続的な情報発信が必要となる。
【質問④】2021年の想定を踏まえ、どのような対応やチャレンジが必要と考えているか。
ツール・手法に関するコメント
・求人媒体に頼らない採用手法の導入(ダイレクトソーシング、SNS等)
・スカウトによる採用活動の積極的な推進。
・採用の仕組みを自動化し、入社後のデータ解析を進める。
・求人広告掲載以外の採用手法の策定。
・オンライン選考に各社が慣れていく中での、新しい選考方法の企画と実行。
・待ち型からスカウト型への採用活動の展開。
・採用コスト削減に伴い、採用職種やレイヤーに応じた新しい採用手段の設計。またそれを成功させるためのパラレルワーカーの積極活用。
・AI、適性テストの活用。
・個別最適な施策、候補者応対。
情報発信・訴求に関するコメント
・Webマーケティングに加え、ウェビナーやオンラインサロンのようなツールを活用した活動。
・オンライン上での情報伝達方法の工夫(ブランド作り、広報など)
・Wantedly、LinkedIn、Facebookなどを利用した継続的な情報発信。
・情報発信力の強化。
・全社を巻き込んだ採用広報、リファラル採用の促進。
・より採用難易度が高くなる経験者領域への訴求ポイント検討。
・業界未経験者、経験者双方の取り込みに向けた自社求人の魅力化。
採用枠・採用要件に関するコメント
・業務委託人材の登用。
・複業人材のプール・コミュニティ化。
・転職を焦っていない、現職でも評価をされている優秀層へのアプローチと引き抜き。
・固定費になる正社員採用にこだわらずに、アウトソースやフリーランスのプロ人材の活用を積極的に行い、利益やコストをコントロールしていく必要がある。
・フリーランスの直接雇用への流動化。
・地域に関係ない採用活動の展開。
その他のコメント
・オンライン選考に対応するために、面接官の面接力を向上させる取り組みを行う予定。
・転職者から選ばれるための企業優位性の確立(リモートワーク、副業OKの会社が当たり前になることを想定し、それ以外で他社に負けない魅力を作っていく必要がある。また在宅勤務が前提となるとオフィスの利便性や快適さが優位性にはなりづらくなるため、それ以外の福利厚生などを新設する必要がある)
・多様化する雇用形態や働き方への柔軟な対応。
・Web面接における非言語情報取得への対応(素直さやグリッド力などの見極め)
・魅力ある企業づくり(特に職種と年収)
・インフラ環境やIT環境の整備、リモートワークの推進、各種制度の刷新。
・リモートワーク普及後の課題解決(コミュニケーション不足、生産性の低下など)、副業(複業)の解禁、外部人材活用、社内の体制強化
まとめ
ハイキャリア層の採用難易度の上昇に備えて、各社ともに自社の優位性を高める動きが活発化しているようです。自由度の高い働く環境を用意したり、よりリッチな情報提供を進めたりなど、特定の人材からすると至れり尽くせりなマーケットになっていくかもしれません。
また、中途採用や正社員だけで人員を確保するのではなく、業務委託などの外部人材活用を検討したいという声も多く聞かれました。「よりコストを抑えながらも、経験やスキルのある人材が欲しい」という一見矛盾した要件に応えられる方法として、外部人材の活用がより注目されている年になりそうです。
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