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リファレンスチェックは違法?合法?人事が知っておくべきリファレンスチェック実施のポイントとは

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外資系企業では当たり前のように実施されてきたリファレンスチェック。日本でも早期離職やミスマッチを防ぐ方法として徐々に注目されるようになってきました。エントリーシートや面接だけでは応募者の本質を見抜くことが難しいのに加え、個人の働き方や考え方が多様化してきたこと、採用難易度が高まりつづけていることもその背景にはあると感じます。

しかし、まだまだ日本には馴染みの薄い手法のため、「前職の上司や同僚に連絡するなんて違法なのでは?」という誤解も少なくありません。また企業側としてもリファレンスチェックの本質的な効果を十分に理解せずに実施しているケースもあるようです。

そこで今回は、実際にリファレンスチェックを複数社で実践されてきたパラレルワーカーの方に、ポイントや効果についてお話を聞きました。

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リファレンスチェックとは?

──リファレンスチェックについて教えてください。

リファレンスチェックとはつまり「身元照会」「身辺調査」です。具体的には、以下3点を採用決定前に確認することを指します。

①過去の学歴・職歴に虚偽が無いか
②応募書類に書かれた職務遂行能力(過去在籍企業の評価や勤怠等を含む)に虚偽が無いか
③犯罪歴や借金の有無

リファレンスチェックは外資系企業を中心に古くからある手法として知られていますが、日本で注目され始めたのはここ数年のことです。

リファレンスチェックが注目されている背景

──リファレンスチェックについて、なぜ最近注目されるようになったのか背景を教えてください。

その背景には、「ハイクラス人材」や「専門性の高い人材」の採用が以前と比べて活発になっていることがあります。シード/アーリーステージのベンチャー企業群を中心とした役員クラスなどのハイレンジ採用や、IT領域における技術者採用などがそれにあたります。

採用難易度の高まり続けていることもあり、ミスマッチによる早期離職や期待したパフォーマンスを出せないことへのリスクヘッジとして、リファレンスチェックという手法が求められるようになったと考えています。

リファレンスチェックは違法?正しいリファレンスチェックの理解

──「リファレンスチェックって違法じゃないの?」といった声も耳にします。どう理解しておくのが正しいのでしょうか。

リファレンスチェックは違法ではありません。ただし、“正しく実施しなければ”違法となります

2005年に施行された個人情報保護法により、第三者に個人情報を提供する際は、下記の条件を満たすことが必要になりました。

①本人から「事前の同意」を得ること
②あらかじめ本人に個人データを第三者に提供することを通知、または認識できる状態にしておき、本人が反対しない限り同意したものとみなすこと

そもそも、個人情報保護法により本人の同意なしで個人情報を提供することは禁止されています。そのため、リファレンスチェックも同様に本人の同意がなければ個人情報保護法に抵触して違法となります。

また採用全般に言えることなのですが、本人の能力に関係のないところで採用可否を判断するのは、就職差別に繋がる可能性があります。ここも合わせて注意しておきましょう。

就職差別につながる一例>

・本籍や出生地
・家族構成や住居の間取りなどの生活水準
・選挙政党や宗教など
・愛読書や尊敬する人物などの思想面

※参考:厚生労働省HPより >> 公正な採用選考の基本

リファレンスチェックを実施する上で気をつけるべきポイント

──リファレンスチェックを実施する上で、人事が抑えておくべきポイントはありますか。

大前提として「リファレンスチェックを過信しすぎないこと」が重要です。その上で、以下2つのポイントは念頭に置いておく必要があります。

①回収出来る情報には「事実」と「評価者の主観」が混ざる

特に「主観が入る情報」に関しては、面接で感じた印象やヒアリング内容の補足と考え、出てくる情報に振り回されない事が大切です。それぞれ具体的な例を挙げて説明します。

事実の可能性が高い事項>

・勤怠状況
・犯罪歴や借金の履歴
・過去の在籍企業や出身校
など

主観の可能性が高い事項>

・在籍していた企業での職務実績
→本人の能力に関わらず、職場環境や状況によって大きく変わる可能性があります。
・在籍していた企業での評判
→評価者の主観が多分に混ざります。本人の能力に関わらず、その方との相性良し悪し、ネガティブな印象に引きずられている可能性があります。
・住居周辺での風評(ここまで回収するかは賛否あります)
→聞き取りの仕方や、評価者によって回収結果が大きく変わります。

②「ネガティブな情報が出たからNG」というものではない

回収された情報が「担当業務や役割、役職、期待している課題解決に影響する内容かどうか」については必ず検討しましょう。ネガティブな情報は出てこないに越したことはありませんが、それらが全て自社の採用に影響するものとは限りません。

<検討を要するネガティブ情報例>

・過去サラ金から借金をしていた(現在は完済)
→この情報だけ見ると「ルーズな性格」と捉えがちですが、果たして本当にそうなのでしょうか。また、応募者に任せる業務や役割に影響するものでしょうか。
・過去の所属企業に反社会的な側面および勢力との関わりがあった
→応募者の立場や業務内容をよく確認しましょう。直接関与していない、または、その事実を知らずに真面目に業務をしていることも多いです。

ここで大事な考え方は、「収集した情報が、お任せする業務・立場・ミッションに悪影響を及ぼす可能性があるかどうか」です。

その観点で検討した上で、どうしても懸念が払拭出来ない場合は、その情報を元に採用見送りの判断をしましょう。または、本人と事実情報に基づいてやり取りをし、様子見のため雇用形態の変更等を行う事も考えても良いでしょう。

リファレンスチェックの効果・意図は「ネガティブチェック」ではない

──リファレンスチェックは「ネガティブチェック」的な意味合いが大きいと思いますが、それ以外に期待できる効果やメリットはあるのでしょうか。

まず、リファレンスチェックは「ネガティブチェック」ではありません。

最大の目的は、「リファレンスチェックで得た情報と面接情報を比較することで、面接の印象や過去の経験に対する信頼性を高める」ことです。

これまで職務能力や成果・定性的なスキルなどは「求職者の主観」で判断をするしかありませんでした。しかし、リファレンスチェックを実施することで「客観的な評価」を受けることが可能になります。

第三者から提供された情報が応募者のものと一致した場合、その情報は「事実に近い情報」として判断されます。すると、正しい理解が面接者と応募者の双方に促され、応募者にとっても不要に自身の経験や能力を誇張して伝える必要はなくなります

経歴詐称、成果の偽り、能力不足──これらが入社後に発覚すると、経営に大きな打撃を与えかねません。ハイレンジ採用や専門性が期待されるポジションではなおさらです。リファレンスチェックを「疑う」ものとして否定し過ぎず、企業と応募者の双方にメリットがあるようにうまく活用することが肝要です。

リファレンスチェックサービスをうまく活用するポイント

──リファレンスチェックをサポートするサービスやツールはいくつもありますが、どのように活用するのが良いでしょうか。

上手く活用するポイントは以下2点です。

①可能な限り事実を回収できるサービスを活用する

前述した通り、「評価者の主観」を中心に収集するリファレンスチェックサービスは信頼性に欠けます。そのため、過去在籍企業の上長・部下・同僚への聞き取りが中心だったとしても、複数名からヒアリングを行うことができたり、「事実」と「主観」の双方から情報回収ができるようなサービスを選択しましょう。

②スピードを意識する

応募者全員にリファレンスチェックを依頼できるほど予算が潤沢な企業なら問題はありませんが、多くの企業はそうではないはずです。そのため、リファレンスチェックはどうしても選考の後半(クロージングに近いタイミング)で行わざるを得ません。それにより選考スピードが遅くなり他社へ逃げられてしまう……といったことが起こっては本末転倒。スピードを意識した上で、時間が掛かりすぎないサービスを選択しましょう。

またこれはリファレンスチェックに限りませんが、「情報を鵜呑みにした判断をする」ことは大変危険です。回収された情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、それを元に精査・検討し、必要に応じて相談を行い、事実に基づいた判断をする。それこそがリファレンスチェックの効果を最大限発揮できる重要な行動だと思います。

編集後記

今回お話を聞くまでは、リファレンスチェックはあくまでミスマッチ防止を目的とした「ネガティブチェック」だというイメージを持っていました。しかし実態はそうではなく、応募者の経験やスキルを客観的に評価できる「ポジティブチェック」でもあるという点は、イメージを180°回転させる発見だったように思います。

リファレンスチェックはまだまだ日本では一般的ではありません。だからこそ、実施においては本人の同意を得るだけでなく、そのメリットについても合わせてお伝えすることが重要だと感じます。リファレンスチェックについて企業・個人の双方が正しく理解すること。それがミスマッチを防ぐ大きなポイントになりそうです。

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