noteを活用した採用広報とは?「note pro」と個人noteの実践的な使い方。
採用広報と言えば一昔前まではHPが一般的でしたが、最近ではnoteやWantedlyなどSNSを活用して発信を行う企業が増えてきました。一方で、「とりあえず始めてみたけど思った通りの効果が出ていない」「採用広報を始めてみたいけど、何を使ってどんな内容を発信すればいいのかわからない」といった声も聞こえてきます。
そこで今回は、採用CX(Candidate Experience)支援会社にて採用コンサルタントをされていた高井凌馬さんに、採用広報の基本から活用方法まで事例も交えながら詳しくお話いただきました。
<プロフィール>
高井凌馬
個人の転職活動支援と法人の採用支援の両面で経験を積んだのち、採用マーケティング支援を専門に行うスタートアップ企業HeaR株式会社にて、採用戦略立案・面接代行・採用マーケティング戦略立案・コンテンツ記事作成・SNS運用などの領域で活躍。特に、ダイレクトソーシングやWantedlyやnoteを用いた採用広報を通じて、スタートアップ成長期での採用実績を残す。現在はフリーランスとして独立し、複数社の採用支援や採用マーケティング支援に携わる。▶このパラレルワーカーへのご相談はこちら
目次
採用広報とは何か?
──そもそも採用広報はどう定義できるでしょうか?
一般的には「採用に伴う広報活動」のことを指すケースが多いようですが、これだけだと少し漠然としているので、まず広報活動について整理してみましょう。
広報活動は「社外」と「社内」の2つに大別できます。
社外広報
商品やサービス、会社について社外発信して知ってもらい、売上やファン育成に繋げるマーケティング機能の役割がある広報活動。
社内広報
会社から従業員に、経営の方向性や社員紹介などを発信して、エンゲージメントやロイヤリティ向上の役割がある広報活動。
このように広報は社外向け・社内向けに分けて考えると整理しやすくなります。これに基づいて採用広報を定義すると「求職者に自社への入社を検討してもらう、且つ社内メンバーには自社で働く意義を再認識してもらう広報活動」と言えるでしょう。
──近年、採用広報が注目されている背景にはどういったことが考えられるでしょうか?
それには大きく3つあると考えています。
<1>売り手市場で優秀人材の採用難
<2>求職者の働く価値観の変化
<3>採用メディアの増加により参入ハードル低下
こういった変化を受けて、採用広報に力を入れる企業が増えてきたのではないでしょうか。
──具体的な採用広報の手法に関してお聞かせください。
採用広報で大事なのは「誰に」「何を」「どのように」伝えるかです。これを戦略的に発信することが大切だと思っています。
そのため以下の順序で戦略設計をしていくと良いでしょう。
<1>ペルソナ設計
<2>自社の強みを整理
<3>コンセプト設計
<4>ジャーニーマップ作成
<1>ペルソナ設計
採用したい人物像を明確にして、その人物に情報を届けないと意味がありません。
そのため、自社で活躍する人材を言語化し、詳細にペルソナ設計していく必要があります。ここが不明確だと打ち出し方を間違えてしまい採用広報が崩れてきます。
<2>自社の強みを整理
自社の強み(魅力)を整理していきましょう。経営層や現場メンバーでは自社の魅力の認識が異なるので、さまざまなポジションやレイヤーからヒアリングしてください。
その際に参考になるのが、リンクアンドモチベーション社が提唱するエンゲージメントにおける「4P」のフレームワークです。これはマーケティングの4P分析ではなく、企業の魅力因子を「Profession(仕事・成長)」「People(風土)」「Philosophy(目標・方針)」「Privilege(待遇・給料)」の要素で考える手法です。これを活用すると自社の強みをわかりやすく整理できます。
この作業を行うことでペルソナに訴求できるポイントが見えてきます。
<3>コンセプト設計
ペルソナに「〇〇会社とは〇〇できる場所」と認識してもらうためにコンセプト設計が必要です。このコンセプト設計が採用広報の「軸」になり一番のポイントだと考えます。
候補者にコンセプトを体験してもらうことがファン化に繋がり、候補者に選ばれる会社になるための重要な取り組みになります。
コンセプト設計の手法はいくつかありますが、その中でもシンプルに作成できる「100万分の1理論」を活用した手法はお薦めです。
「100万分の1理論」とは、「キャリアにおける3つの自分の強みを掛け算すれば100万分の1の人材になれる」という理論です。堀江貴文氏が提唱している例が分かりやすく、例えば高校生で起業した椎木里佳氏は「現役女子高生」「起業」「社長」という3つの“タグ”で注目を集めたと言えます。
これを企業に転用し、ペルソナに刺さる、異なる”3つのタグ(魅力)”を掛け合わせることで、候補者にとって唯一無二の企業として選ばれることができるでしょう。
※参照記事>>ホリエモンが語る「100万分の1」の人材になる方法
<4>ジャーニーマップ作成
最後にジャーニーマップを作成しましょう。ジャーニーマップとはペルソナが自社の認知から入社までの採用のストーリーを示すマップのことです。
採用広報は「点」ではなく「線」で捉えることが重要ですので、作成をオススメしています。
<合わせて読みたい>
戦略的な採用マーケティングとは?採用CX(候補者体験)から考える実践方法
採用広報ツール(SNS、Wantedly、noteなど)について
──採用広報ツールにはどのようなものがあるのでしょうか。また、ツールの移り変わりと、今注目されているツールとその背景もお聞かせください。
企業が活用する採用広報ツールはHPなどのオウンドメディアやnote、Wantedlyなどのプラットフォーム型のメディアなどがあります。
少し前はHPに社員インタビューを掲載するようなオウンドメディアを活用するケースが主流でした。最近では、Wantedlyなどのプラットフォーム型のメディアが登場し、自社メディア以外にも簡単に社員インタビューを掲載できる時代がきました。
誰でも発信が簡単にできる反面、自社らしさやオリジナルの特徴を打ち出せなければ、十分な成果を上げることが難しくなってきました。
その後、採用ブランディングなどの成功例が発信され、採用広報の手法が徐々に明確になってきました。それに伴ってnoteやWantedlyなどに優良な情報が集まることでユーザー数が増え、企業からの注目度が増しているのではないでしょうか。
採用広報でnoteが注目されているわけ
──現在、noteを採用に活用している企業様が多いと思いますが、なぜ各社がnoteに注目し、活用しているのか教えて下さい。
沢山ありますが、自分が考える要因は大きく3つです。
<1>法人アカウント「note pro」を簡単に利用できる
<2>自社らしさ・世界観を打ち出せる
<3>個人のnote記事を、法人アカウントでマガジン化できる
<1>法人アカウント「note pro」を簡単に利用できる
note pro月額利用料は8万円です。自社でオウンドメディアを作るより手間なく安価で利用できます。自社オウンドメディアを作るとなると構成から設計、作成、運用、SEO対策までが必要になり工数や費用がそこそこかかります。
「note pro」であれば、6,300万人(2020年5月時点)のnoteユーザーに対して、そういった工数や費用をかけずに一気に情報を届けるチャンスを作ることができます。
<2>自社らしさ・世界観を打ち出せる
一般的なプラットフォーム型のサービスは、他の企業との違いを出すことが難しいのですが、「note pro」だとトップページのマガジンやメニュー、色、URL添付などさまざまなカスタマイズができます。
細かい部分がとても気配りされていて、自社らしさを出すことが可能です。
<3>個人note記事をマガジン化できる
また、社員個人のnote(無料アカウント)も、「note pro」の運用に活かせる点もnoteの強みです。これにより、役割を分けながら相乗効果を生むことができます。
noteにはマガジン機能があり、社内メンバーが個人アカウントで書いている記事を、法人アカウントでマガジンとしてまとめることができます。そのため、社外にメンバー個人の発信を知ってもらうことができます。また、メンバー個人としても、書いた記事を別の社員が読んだりSNSで拡散したりしてくれるので、発信し続けるモチベーションの向上に繋がります。
採用広報の事例
──これまでご自身で実践されたことがある、もしくは、高井様から見てnoteを活用して上手く実践していると思う採用広報事例(内容と効果の両面)について具体的に教えてください
前職のHeaR株式会社を例にお話しさせていただきます。
一般的な採用広報といえば、社員インタビュー記事をイメージすることが多いですが、HeaRの場合、まさに先程述べたように法人アカウントと個人アカウント両軸で発信しており、それらのアウトプットが採用広報となっています。
例えば、セールスやマーケティングに関するアウトプットをすることで「こんな人と一緒に働きたい!」と思ってもらえることに繋がります。
そして、noteを読んでもらっていればメンバーや業務内容に対する前提知識のインプットも面接前に済んでいます。そのため面接においても、単純な説明ではなく面接官の想いや具体的な課題点など、より深い話ができるのは大きなメリットです。
また、メンバーの特性や雰囲気が読み取ることができるのでスクリーニングにも役立ちます。面接を受けに来る方(特にTwitterとnoteを見た方)に関しては自社への理解も深く、マッチしている部分が多かった印象です。
参考にしていた企業様は多くありますが、その中でも2社紹介させていただきます。
株式会社ベーシック
アイキャッチやタイトル、企画案など色々と参考にしていますが、特に会社全体で広報活動に取り組んでいるところは勉強になります。ポジション、レイヤー関係なくさまざまなメンバーがnote記事を発信しているので社内全体で運用していることが伝わってきます。
また、仕事のノウハウやリファラル採用時のポイント、Twitter運用方法など、採用広報を行う立場として興味深い内容も惜しみなく発信をしてくれるので学びも多いです。
これらに加えて、Twitter運用にも力を入れているので拡散力には、より効果が発揮できているのではないでしょうか。
note株式会社
noteを運営するnote社はやはり参考になります。
マガジンのまとめ方や記事の打ち出し方がとても綺麗にまとめてあり、読者にストレスなく読んでもらえるのではないでしょうか。
noteを活用した採用広報のメリットとデメリット
──noteを採用広報に活用するに当たり、メリットと気をつけるべきポイントを教えてください。
noteを採用広報で活用するメリットとして、応募者になるかもしれない方とのやりとりが可能になる点が挙げられます。フォローボタンやシェア時にTwitterのID連携がされるので、
個人とのタッチポイントを簡単に増やすことができます。個人のロイヤリティやCX向上に貢献する、採用活動に欠かせないツールと言えるでしょう。
それ以外では、社員をビジネスパーソンとして強くするメリットが挙げられます。これからは個人ブランディングも行いながら、一人ひとりの市場価値を高めていくことが重要です。
そのためにもnoteを活用して会社として個人発信を促していくことが必要だと考えています。インプットとアウトプットの繰り返しを行うことで、強いビジネスパーソンの育成が実現できるはずです。
それが結果的に自社のアピールや採用力向上に繋がるのではないでしょうか。
また、個人発信を促す上で気をつけるべきことがあります。
それは炎上リスクです。
発信者が会社の名前を記載している場合は発信内容には十分気をつけていきましょう。
気をつける上でオススメな方法をご紹介します。
<1>社内記事の発信におけるNGを共有
<2>一緒に記事テーマや構成を企画
<3>公開前に最終チェック
この3つを意識すれば、炎上リスクを軽減することができるはずです。
■合わせて読みたい「採用広報」関連記事
>>>とりあえずでは続かない「採用オウンドメディア」の立ち上げ方
編集後記
最後に“社内体制”という観点で高井さんにご質問したところ、「採用担当者が兼任するのではなく、これからは採用広報の専任担当が必要だと思います」というお答えをいただきました。
ペルソナに的確な情報を届けるには専門知識やノウハウが必要であり、社内のメンバーだけでは十分な体制を構築できないケースも多いようです。そして、徐々に運用が苦しくなり、発信が途絶えがちになる…。こういった悪循環に陥らないために、社外の力を積極的に活用することも重要です。
無理をして発信しているとそれは読者にも伝わるものですので、自分たちが楽しく取り組むことをまずは心がけていきましょう。