【イベントレポート】パラれるDAY:成長ベンチャーによる「人事組織」の作り方 〜フリーランスや複業社員と共創する人事チーム〜
人事・採用の領域において、世の中に先駆けて新しい取り組みを進め、戦略的に施策を実行し続けている2社の採用担当者を招き開催された本イベント。
採用難易度が高まり続ける中でも高い採用基準を維持できている理由やポイントを、モデレーターの西村創一朗氏が以下3つのテーマに沿ってヒアリングしてくれました。
①人事・採用において大事にしていること
②採用基準
③組織・カルチャーの作り方
<プロフィール①>
株式会社ユーザベース 西野 雄介氏
大学卒業後、グローバル人材紹介会社に入社。日本・シンガポール法人にてIT・金融業界向けヘッドハンティングに従事。2010年にはシンガポールに移住し、グローバル企業のアジア太平洋州拠点向けヘッドハンティング、人事・組織コンサルティングを経験。2019年に日本へ帰国後、ユーザベースグループのHead of Culture&Talent(人事責任者)に着任。
より強固な組織を作ることをミッションとして種々の施策を企画実行。
<プロフィール②>
Sansan株式会社 金 明正氏
大学卒業後、京セラ株式会社に入社し海外マーケティングや商品企画を担当。2005年に現リクルートキャリアに転職し、キャリアコンサルタントや法人営業を経験。2010年にはリクルート海外法人(RGF)へ出向し、香港・ベトナムにて人材紹介事業を立ち上げ、ベトナム法人では現地法人代表を務める。2015年に外国籍ITエンジニアの方を中心とした人材紹介会社を起業。2017年9月より、Sansan株式会社人事部副部長として、年間200人以上の採用を牽引。
<プロフィール>
株式会社HARES 西村 創一朗
複業研究家。首都大学東京法学系を卒業後、2011年に新卒で株式会社リクルートキャリアに入社し、法人営業、新規事業企画、採用担当を歴任。本業の傍ら「二兎を追って二兎を得られる世の中をつくる」をビジョンに掲げ、2015年に株式会社HARESを創業。
2016年末にリクルートキャリアを退職し、独立。リファラル採用、採用ブランディング、複業前提の組織開発、エンプロイーサクセスなどの領域を中心に十数社のアドバイザーとして活躍中。
目次
テーマ1「人事・採用において大事にしていること」
西村氏「普通は“人事部”と言うところを、あえて“カルチャーチーム”という組織名にしているところからもポリシーが感じられますが、そのポイントはどこにあるのでしょうか?」
西野氏「なぜ“カルチャーチーム”と名付けているかというと、組織カルチャーが企業の成長ドライバーであり、それを最も司ることができるのが人事業務だと考えているためです。一般的な人事業務よりもちょっとだけ広義だと捉えてもらえれば理解しやすいと思います」
その中でも、とくに重要視している“採用の3つの原則”がある、と西野氏は続けます。
西野氏「それは、①バリュー ②ミッション ③スキルの順番で採用するということ。もっとも重要視しているのがバリュー。ユーザベースには“7つのルール”というバリューがあり、同じような価値観を持っているかどうかをまずは見ています。
次にミッション共感度。“経済情報で、世界を変える”という我々が掲げているミッションと、個人が考える人生のミッションに重なっている部分があるかどうかという点です。そして最後にスキルを見ます。ただ、スキルが150%の人材でも、バリューが80%であれば採用しません」
西村氏「スキルマッチングをもっとも重要視する企業が多い中で、あえてスキルは最後の要素であるという拘りが見えますね。その背景はどんなところにあるのでしょう?」
西野氏「いかにスキルがある方でも、そもそもバリューやミッションを体現・共感できていなければその才能もフルには発揮ができません。シンプルに仲間として一緒に楽しく働けないという側面もあるでしょう。類は友を呼ぶと言うように、同じ方向を向いてイキイキ働いているとそこに優秀な仲間が集まってきてくれる。このサイクルを生むためにもこの3つの原則はとても大事なのです」
西村氏「続いて金氏にも同じ質問です。Sansanでも同様にバリューやミッションに重きを置いた採用活動を展開していると聞きましたが、大事にしていることはどんなことでしょうか?」
金氏「面接ではスキルの話と同じくらいかそれ以上の割合でその方の思考の深掘りをしています。その方の過去を遡り、その時々の判断理由を確認することで人間性の理解に費やす形です。私達もゆくゆくはユーザベースさんのように仕組みを言語化していきたいと考えていますが、今のフェーズではスキルも人間性もどっちにも重点を置きたいと考えていたりします。
というのも、我々の事業は名刺データを大量に集めビッグデータとしてどう活用していくかという他にない独自のもの。いわば市場を作っている立場でもあるため、同様の経験をしたことがある方はほとんどいないと思うのです。だからこそスキルや人間性のどちらか一方に偏ることなく、そのバランスを考えていく段階なのかなと」
あえて今、ユーザベースのように明確な優先順位をつけていないというSansan。そんな環境で大事なのは“惑わされないこと”であると金氏は続けます。
金氏「採用というのは暗黙知のようなものが多いもの。ゆくゆくは明文化していく必要はあり、実際にそのプロジェクトも動き始めていますが、それまでは自分の中で信念を持ち、1つひとつのことに対して軸を持って判断していくことが大切です。
経営や人事サイドから見ると言語化した方が楽な場面が多くありますが、手段が目的化してしまっては元も子もない。現状はデジタルにしすぎず、どんなバランスが適切かを見極めている状況です。それが結果として人の可能性を潰さずにうまく拾い上げることにつながっていると思います」
西村氏「ありがとうございます。両社とも“カルチャーマッチを最優先し、その採用基準を絶対にブラさない”という点で共通していますね。」
テーマ2「採用基準」
西村氏「次に“採用基準”について聞いていきたいと思います。両社とも非常に高い採用基準を設けていますが、それ故に採用目標を達成できない……みたいなことはないのでしょうか?」
西野氏「採用ハードルが高いと思われてしまっているのが実は課題でして(笑)。そこに向き合い続けている、というのが現状の答えなのかもしれません。
ただ特長がある点でいうと、リクルーターを多めに配置しています。採用基準が高いからこそ、リソースを増やしてボリュームを担保するという形です。また自社でUB Journalという採用オウンドメディアを運用していて、企画、取材、編集全てを自社で行う専任スタッフがいるくらい注力しています。会社として採用を成長ドライバーとして認識し、ここにリソースを割くぞという気概があるからこそできる環境なのかもしれません」
採用基準が高いことを認識し、それ相応のリソースを投入していると話す西野氏。反対にSansanでは、少数のリクルーターで質を重視した採用活動を行っているという。
金氏「業務委託で採用を手伝ってもらっている方から、『ほかの会社なら全然採用してるレベルの方ですよ』とよく言われますが、それでも採用しない時が多々あります。
確かに人材は多い方が良いです。でも、当然誰だって良いわけではありません。量か質かという判断が求められる時には必ず質を選ぶと覚悟を決めています」
西村氏「採用を最重要事項と認識した上で、一切の妥協を許さないという点が両社に共通しているところですね。」
テーマ3「組織・カルチャーの作り方」
西村氏「いよいよ最後のテーマです。組織の大きな部分ではなく採用観点にフォーカスした際に、両社それぞれ独自の採用戦略を掲げている中、採用を成功させる組織やカルチャーをどのように作っているのでしょうか?また、社員ありきではなく、フリーランスや副業の方をいかに巻き込むか、という点も詳しくお聞きしたいです。」
西野氏「ひとつは組織体制。もともとはコーポレートで採用チームがあり、それぞれの事業に合わせていた時期もありました。しかし今では事業に紐づく形で採用チームを組むようにしています。
またもうひとつはノウハウ共有。オールリクルーターズミーティングというものがあって、すべてのリクルーターが集まって現状自分たちがどんなことをやっているのかをシェアしたり、みんなで取り組めることはないのかなどを話し合ったりする場を設けました。
現場が協力的であるということは、採用を成功させる上でとても重要です。だからこそ“採用第一”ということをことあるごとにいろんな場所で浸透させていくことも欠かせないと考えています」
もともとSansanに業務委託として関わっていた金氏。その経験を踏まえた組織・カルチャーづくりの方法について話をしてくれました。
金氏「私自身が業務委託経験者ということもあり、そういった立場の方も巻き込んで組織を作っていくこと自体にはそこまで抵抗はありませんでした。しかし、うちには暗黙知のようなものも多いので、業務委託で入っている方からするとそのあたりをキャッチアップすることは容易なことではないかもしれません。まさにオンボーディングが重要だということです。
また採用業務自体は、やろうと思えば1人で完結することも可能です。そこをどうやってチームとして分業・協業していくのかという点はかなり神経を使って考えています。中でも一番大事にしたのは、チームみんなで採用しているという空気感をどれだけ醸成できるかという点です。
具体的には、できるかぎり業務を平準化しました。放っておくと職種の違いや現場要望などからやり方がどんどん独自化されていくところを、なるべくみんなが同じ作業やフローで完結できるように整えたのです。そうすると互いの業務に対する理解度も深まり、一体感が出るという効果があると考えています」
西村氏「現場などの社内はもちろん、業務委託などの社外人材まで視野に入れた組織作りが重要ということですね。ありがとうございました。」
質問コーナー
採用後のPDCをどうやっていますか?
西野氏「ナインティーデイズプログラムというものをベースにしてPDCを回しています。通常、どれだけモチベーション高く入社してきても、60日くらい経過すると徐々に低下していきます。それを防ぎつつ、入社から3か月後には活躍してもらえるような事業ごとのプログラムを用意しています」
金氏「弊社も毎月簡単なアンケートを取ることで、入社後の心境の変化をできるだけ捉え、チームとして手を打てるようにしています。ただ直近2年くらいでは採用人数が100名以上になり、このやり方だけでは手が回り切らないことも。
そこで直近やり始めたのは、採用の時に関わったリクルーターが、入社数ヶ月の他部門のスタッフを誘ってランチに行くというもの。これは組織として決めたものではなく、自然とスタートした取り組みです。入社当時とのGAPなどを把握することで、ちょっとしたボタンの掛け違いなどにも気づくことができると考えています」
会社設立から間もなくバリューも未設定。優秀な社員が入っても力を発揮しきれていない状況に対してどうすればよいか?
西野氏「弊社の過去事例を紹介すると、創業期にはバリューも今ほど定まっておらず、優秀だけれどもタイプの違うメンバーが集まって事業を立ち上げました。するとどうなるか。様々な違う考えが衝突し合い、お互いに対しての不満が爆発したのです。それを解決するべく、社員30名くらいになったころに全員で集まって、それぞれが大切にしていることや価値観を話し合い、バリューという形に落としていきました」
金氏「採用する上でのスローガンを作る、というのも面白いと思います。そこを考えることにより、それぞれがどういう人を採用するべきかとうことを考え始めますし、入社した人もそれを目掛けて頑張ることができるので、迷うことが減るのではと思いますね:
次回、第二弾も開催予定!
セッション、質疑応答あわせて約1時間のイベントはあっという間に終了。内容が濃く、1時間では足りないほど白熱した時間でした。
当日参加いただいた方にアンケートへ回答いただいたところ、 特に要望が多かったテーマは「組織開発」と「中途採用」について。その領域で最先端の取り組みをしている企業にご登壇いただけるよう準備して参りますので、ぜひご期待ください。