求人広告や人材紹介だけに頼らない。自社採用力を高める「採用マーケティング」の始め方

最近、「求人広告や人材紹介だけでは採用が難しくなってきた」という話をよく聞くようになりました。
今やネットを検索すればあらゆる情報を収集することができます。口コミサイトや企業Webサイトはもちろん、SNS等のツールで企業が自ら求職者に向けて情報発信することも珍しくなくなっています。
そんな多様化した採用マーケットに対応するためにも、求人広告や人材紹介だけに頼らず自社採用力を向上させることはとても重要です。そのために欠かせない「採用マーケティング」の始め方を紹介します。
目次
採用マーケティングとは?
採用マーケティングとは、その言葉通りマーケティングの概念を採用活動に適用した考え方のこと。企業が市場調査をした上でニーズに沿った商品を提供するように、自社の採用ターゲットが知りたい情報を発信することが採用マーケティングにおいても求められます。
情報発信できるチャネルは自社Webサイトだけとは限りません。近年、あらゆるサービスが利用できるようになったこともあり、適切なチャネルに適切な情報を提供する必要があります。
また、データやテクノロジーを活用して採用ターゲットのニーズを解明し、プロセス全体を検証することができるのも採用マーケティングの特徴です。継続的にPDCAを回していくことにより、より効果的な採用活動につなげていくことができます。
なぜ今、採用マーケティングが大事なのか
理由は大きく2つあります。まずは以下データをご覧ください。

※出典:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192005_00001.html
(1)求人数の急増、求人チャネルの多様化
平成21年(2009年)のリーマンショック時から比較すると、わずか10年の間で求人数が約2倍になっていることがわかります。
また、求人掲載できるチャネルが多様化しているため、それらの求人はあらゆる場所に点在しています。ハローワークをはじめ、リクナビネクスト・エン転職・マイナビ転職・dodaといった大手求人媒体、専門領域に特化したものや無料で掲載できるサイトまで様々です。
そういった背景もあり、indeed(インディード)や求人ボックスといったアグリゲートサイト(注1)が登場し、今では広く利用されるようになりました。
※注1:アグリゲートサイトとは
ネット上にある様々な求人サイトなどから求人データを収集し、1つのWebサイト内で検索したり閲覧したりできるようにしたもの
これにより、求職者の求人検索方法にも変化が見られます。これまでは大手転職サイトが用意した検索軸(勤務地・業種・職種など)から条件や希望に合うものを選択することが一般的でしたが、最近ではGoogle検索のように、「〇〇 ×× △△」といった複数ワードで検索するケースも増えてきました。結果、どんな情報を発信するかによって検索HIT数が大きく上下する傾向が強くなってきています。
(2)求職者数が減少し、選考格差が広がっている
求職者数については、平成21年(2009年)のリーマンショック時には約280万人でしたが、平成30年(2018年)には約180万人にまで減少しています。求人数が増え求職者が減った結果、有効求人倍率もぐんぐんと上昇を続け、時代が令和に入ってからも約1.6倍あたりで高止まりしています。
この結果、1人の求職者に複数社内定が出るようなマーケットになりました。さらに、優秀な人材にはより多くの企業からオファーが寄せられており、優秀な人材ほど職を複数から選べる状態であることは間違いありません。
*
採用におけるライバル数が増え、そこへの情報提供手段が多様化してきたことから、「とりあえず大手転職サイトで求人広告を掲載しておけばOK」というマーケットではなくなったことが、採用マーケティングの重要性が高まった理由です。闇雲に情報発信するのではなく、採用ターゲットの心理をきちんと理解してアクションすることが今求められています。

採用マーケティングに使える具体的な手法の紹介
採用マーケティングを行う上でまず必要なのは、「採用ページの作成」です。そこをベースとして、いかに採用ターゲットを集客するかということを考えていきます。
「採用ページを作ったことがない」という企業もあるかと思いますが、今や無料で採用ページを作成・掲載できるサービスが存在します。それが以下で紹介するアグリゲートサイトです。
<小見出し>ネット上のあらゆる求人を検索でき、無料で採用ページも作成できる「アグリゲートサイト」
■indeed
※過去 7 日間で 511,695 件の新着求人(2019年9月15日時点)
代表的なものは「indeed」です。2012年にリクルートがアメリカのIndeedを買収し完全子会社としてから、国内でも広く利用されるようになりました。IndeedはアメリカでNo.1のお仕事探しツールとなっており、面接まで至った求人の約4割がIndeed経由であるとも言われています。
■求人ボックス
※24時間以内の新着求人151,922件(2019年9月15日時点)
価格.comや食べログなどを運用しているカカクコムが2015年にリリースした「求人ボックス」も、順調に利用者数を伸ばしています。国内初のサービスとして、日本人が利用しやすい仕様になっていることもその要因の一つのようです。
■スタンバイ
※求人掲載総数は900万件以上(2019年9月15日時点)
同じく2015年にリリースされたビズリーチが運営する「スタンバイ」は、トップページには勤務地の一覧が表示されているなど、地方エリアの採用に力を入れている印象です。
Google検索でニーズにマッチした求人を表示させる「Google for Job」
Google for Jobsは、Googleがその求職者に適した情報を提示する機能です。 アメリカで2017年6月に実装され、2019年1月に日本でもローンチされました。
これまで求職者が求人情報を探すためには、数多くの求人媒体の中からそれぞれ探し出すしかありませんでしたが、Google for JobsではGoogleの検索ボックスにキーワードを入力するだけで求職者のニーズに合致した求人情報が表示されるようになります。
しかし、自社の求人情報がGoogle for Jobsに表示されるようにするためには、ちょっとした対応が必要です。その方法はGoogleが公式に掲示していますが、難しそうに見えることもあり、その導入支援を行っている会社があるほどです。
※引用:Google 求人情報を作成する
https://developers.google.com/search/docs/data-types/job-posting?hl=ja
自社Webサイトのリッチ化(SEO)
アグリゲートサイトやGoogle for Jobsといったツールをご紹介してきましたが、やはりそのベースとなるのは自社Webサイトです。この根幹となるサイトを採用ターゲットに合わせて作りこむことで、SEO上でも優位性が現れ、集客力を向上させることができます。
まずはアグリゲートサイト等での無料採用ページ作成を皮切りに、自社Webサイトの求人情報を充実させていくと良いでしょう。恒久的に企業の財産となり、ゆくゆくの採用活動の助けとなってくれるはずです。
どのツールを使うにしても、マーケティング観点は重要
今や自社で情報発信をすることはあたりまえになり、利用できるツールもたくさんあります。簡単かつ無料で自社採用ページを作ることもできるため、まずやってみることが何より重要です。
その後は、「誰に」「何を」「どう伝えるか」といったマーケティングや広告の基本原理も意識しながら、より効果的な情報発信を研究するとともに、その発信チャネルもターゲットに合わせて選択していくことで、自社採用力は着実に上がっていくことでしょう。
求人広告や人材紹介といったサービスに頼り切りになることなく、自社でこういったノウハウを積み上げていくことこそが採用マーケティングであり、自社採用力を高めることでもあるのです。
■合わせて読みたい「採用手法・ノウハウ」関連記事
>>>「採用要件」を正しく設定し、事業成長を加速する人材獲得を実現するには?
>>>SNSを活用したタレントプール形成・採用力強化の方法
>>>“課題解決に直結する” あるべき採用KPIの設計・運用方法とは
>>>CXO採用にはコツがある?CXO人材への正しいアプローチ方法
>>>難しいエンジニア採用、動向と手法を解説。エンジニア採用に強い媒体12サービスも紹介。
>>>「アルムナイ制度」の導入・運用ポイント。自社理解も外部知見もある即戦力人材の採用
>>>スタートアップでの採用を限られた経営資源の中で進めるための採用戦略・手法
>>>グローバルで戦える企業へ。「高度外国人材」採用のメリットと活躍・定着へのポイントとは
>>>Z世代の採用手法は違う?Z世代人事に聞く、採用やオンボーディングに活かす方法
>>>オンライン化するだけではダメ。ニューノーマル時代の「オンラインインターンシップ」とは
>>>「エクスターンシップ」を理解し、効果を高める上で必要な考え方とは
>>>「ジョブディスクリプション」の導入・運用実態と事例について
>>>「外部登用」をうまく活用して組織力を高めるためには
>>>「通年採用」がこれからのスタンダードに?行政の動きからメリット・デメリットまで解説
>>>「面接官トレーニング」により面接の質を向上させる方法
>>>「エントリーマネジメント」で人が長く活躍する組織を作るには
>>>「採用直結型インターンシップ」が25年卒より解禁。自社の採用に組み込むためには
>>>「AI採用」の世界的なトレンドと日本の展望を解説
>>>「三省合意」の改正内容と中小企業におけるインターンシップの意義・導入方法について解説
>>>「学校訪問」から効果的に採用につなげる方法とは